ペルー、ナスカの地上絵保護区縮小案を撤回 農業・採掘との両立は課題 video poster
ペルーの文化省が、世界的に知られる「ナスカの地上絵」の周辺保護区を縮小する計画を撤回しました。農業や採掘の拡大と文化遺産保護のせめぎ合いが、改めて浮き彫りになっています。
保護区縮小案に批判、ペルー文化省が方針転換
ペルー文化省は、ナスカの地上絵が広がる地域の保護区の範囲を見直し、一部を縮小する案を示していました。この案は、周辺での農業、牧畜、鉱業などの経済活動を拡大しやすくすることを目的としていたとされています。
しかし、考古学者や専門家、批評家からは、「保護区の縮小は、ナスカの地上絵が残る地域への実質的な『侵食』につながる」として強い懸念の声が上がりました。こうした反発を受け、文化省は最終的に計画を撤回し、保護区の縮小は行わない方針に転じました。
ナスカの地上絵とはどんな遺産か
ナスカの地上絵は、ペルー南部の乾燥した台地に描かれた巨大な地上絵で、幾何学模様や動物の姿など、上空から見て初めて全体像がわかるスケールの大きさで知られています。ペルーを代表する考古学遺産のひとつであり、世界から観光客や研究者が訪れています。
一度傷ついた地上絵を元に戻すことはほぼ不可能とされており、車両の走行や土地の開墾など、人間の活動による影響をどう抑えるかが、長年の課題になっています。
経済活動と文化財保護、そのバランス
今回の計画には、地域の農業や牧畜、採掘の機会を広げたいという思いも背景にあったとみられます。生活や雇用を支える経済活動の拡大は重要ですが、文化財の周辺で行う場合、その影響を慎重に見極める必要があります。
考古学者や批評家が懸念したのは、いったん保護区が縮小されれば、短期的な利益を優先する動きが加速し、ナスカの地上絵を含む広い地域の景観や地層が不可逆的に変化してしまうリスクでした。今回の撤回は、文化遺産を巡る「取り返しのつかない損失」を避ける判断だったとも言えます。
問われるのは「どのように守り、活かすか」
保護区縮小案が撤回されたことで、ナスカの地上絵そのものはひとまず守られた形になりました。しかし、地域の暮らしや国全体の経済と、文化遺産の保護をどのように両立させるのかという根本的な問いは残されたままです。
ナスカの地上絵のような世界的な遺産は、その国だけでなく、世界全体の共有財産でもあります。一方で、周辺地域で暮らす人々にとっては、土地は日々の生計と直結する現実の場です。この二つを対立させるのではなく、「守るからこそ、長期的な観光や研究などの形で地域にも利益が返ってくる」仕組みづくりが求められています。
今回のペルー文化省の方針転換は、市民社会や専門家の声が政策を動かしうることを示す事例でもあります。日本を含む各地で進む開発計画や観光振興を考えるうえでも、「何を壊し、何を残すのか」をじっくり考えるきっかけになりそうです。
Reference(s):
Peru nixes plans that would have encroached on region with Nazca Lines
cgtn.com








