米国防長官「イランが高濃縮ウランを移した情報ない」 核施設空爆の効果巡り論争
米軍がイランの核施設3カ所を大型の貫通爆弾で空爆した後も、イランが高濃縮ウランを事前に移したとの情報はない──米国防長官ピート・ヘグセット氏はそう強調しました。一方で、専門家や欧州の情報機関は別のシナリオを示しており、2025年12月現在、イランの核計画がどこまで後退したのかを巡る評価が揺れています。
米軍、イランの核施設3カ所を空爆
米国の国際ニュースとして大きく報じられているのが、日曜日未明に行われたイラン核施設への空爆です。米軍の爆撃機は、イラン国内にある核関連施設3カ所を標的とし、1発あたり約3万ポンド(約13トン)の大型貫通爆弾を十数発使用したとされています。
ドナルド・トランプ米大統領は、この作戦によってイランの核計画は「壊滅させた」と表現し、その効果を強調しました。しかし、実際にどこまで能力が削がれたのかについては、軍や情報機関、専門家の間で見方が割れています。
ヘグセット国防長官「ウラン移転の情報は見ていない」
こうした中、ヘグセット国防長官は木曜日の記者会見で、イランが核施設から高濃縮ウランを事前に移動させていたとの見方を改めて否定しました。
同氏は「自分が確認した情報の中に、(ウランが)あるべき場所になかった、あるいは移された、という内容のものはない」と述べ、米側の情報では、攻撃時点で高濃縮ウランは想定されていた場所にあったとの認識を示しました。
またヘグセット氏は、匿名の情報や分析に基づいて空爆の成果を過小評価しているとして、一部の報道姿勢にも不満を示しました。
専門家は「イランが高濃縮ウランを移動させた可能性」指摘
これに対し、複数の専門家は、イランが空爆前に高濃縮ウランを別の場所に移した可能性が高いとみています。問題となっているのは、兵器級に近い60%の高濃縮ウランの貯蔵状況です。
- イラン中部の山中にある深く埋設された核施設フォルドゥでは、攻撃前日の木曜日と金曜日に「異常な動き」が衛星画像で確認されたとされています。
- 米マクサー・テクノロジーズの衛星画像には、フォルドゥ施設の出入口前に長い車列が並んでいる様子が写っていたと指摘されています。
- 日曜日には、イランの消息筋が「60%の高濃縮ウランの大半は攻撃前に非公開の場所へ移された」と述べたと伝えられました。
さらに、英紙フィナンシャル・タイムズは、欧州の情報機関の評価として、イランの高濃縮ウランの大部分は依然として残っており、その多くはフォルドゥに集中していなかったと報じています。つまり、核施設そのものが損傷を受けても、ウラン貯蔵の中枢は別の場所にあった可能性がある、という見立てです。
米情報機関の評価も割れる:数カ月か、数年か
空爆の効果を巡る議論をさらに複雑にしているのが、米国内の情報評価の食い違いです。国防総省の情報機関である国防情報局(DIA)の暫定評価が流出し、空爆はイランの核計画を「数カ月」程度しか遅らせていない可能性があると示唆していると伝えられました。
これに対してヘグセット国防長官は、この評価は「信頼度が低い」として重視しない姿勢を示しました。同氏は、CIA(米中央情報局)のジョン・ラトクリフ長官の発言を引用しながら、「その後に得られた情報では、イランの核計画は深刻な打撃を受け、再建には数年単位の時間がかかる」と主張しています。
同じ作戦をめぐって、「数カ月の遅れ」にとどまるのか、「数年の後退」なのか、評価の幅がこれほど大きい点は、情報の不確実性と政治的な思惑の両方を物語っています。
米議会への説明:目的は「ウランの完全破壊」ではなかった
木曜日には、ラトクリフCIA長官、ヘグセット国防長官、マルコ・ルビオ国務長官、統合参謀本部議長のダン・ケイン大将が、上院議員らに対して作戦の概要と初期評価を説明しました。
説明を受けた議員によると、イランの核施設が大きな損害を受けたことは明らかだが、その全体像を把握するには時間がかかるという点で、おおむね認識が一致したとされています。
上院情報委員会の共和党トップであるトム・コットン議員は、説明後、記者団に対し「今回の任務は、彼ら(イラン)の濃縮ウランをすべて破壊したり、押収したりすることを目的としたものではなかった」と述べました。そのうえで、空爆は「並外れた成功だったと確信している」と評価しました。
一方、同委員会の民主党側トップ、マーク・ワーナー議員は「イランの核能力を正確に把握する唯一の方法は、現地に査察官が入ることだ」と強調しました。同氏は、「今回のブリーフィングより前から明らかだったが、貫通爆弾ではそもそも破壊できない場所にあったウランもあり、それらは当然残っている」と指摘し、軍事攻撃だけでは限界があるとの見方を示しました。
4人の高官は、翌金曜日には下院議員への説明も控えており、米国内の議会審査はこれから本格化するとみられます。
イラン核問題をどう見るか:軍事力と査察の間で
今回のイラン核施設空爆と、ヘグセット国防長官の発言をめぐる議論は、いくつかの重要な論点を浮かび上がらせています。
- 軍事攻撃の限界:空爆で施設を破壊できても、核物質そのものを必ずしも完全に無力化できるとは限らないことが、専門家や議員の発言からにじみます。
- 情報の透明性:米政府内でも評価が割れている状況は、国際社会にとっても判断を難しくします。どの情報に基づいて政策判断を行うのかが問われます。
- 査察の重要性:ワーナー議員が指摘したように、「現地の査察官」がいなければ、核能力の実態を確証をもって語ることはできません。軍事力と同時に、査察や対話の枠組みをどう維持・強化するかが改めて焦点になっています。
2025年12月現在、イランの核計画を巡る国際環境は不透明さを増しています。今回の空爆がどの程度の抑止効果を持つのか、また、イラン側が今後どのような対応に出るのか。中東情勢と国際安全保障を考えるうえで、引き続き注視が必要な局面が続きます。
Reference(s):
No known intelligence that Iran moved uranium, U.S. defense chief says
cgtn.com








