ポーランドのウクライナ避難民、残るか帰るか揺れる選択 video poster
ポーランドに暮らすウクライナ避難民の多くが、帰国か定住かの分かれ道に立たされています。約100万人とされるこの人びとは、ポーランド経済を押し上げながらも、自らの将来をどこに描くのか決めきれずに揺れています。
約100万人、欧州でも最大級の避難民受け入れ
ポーランドには現在、EUの保護制度のもとで暮らすウクライナ避難民が約100万人いるとされています。これはヨーロッパでも最大級の規模の避難民人口であり、日常生活から労働市場まで、社会のさまざまな場面に影響を与えています。
ポーランド経済を2.7%押し上げた存在
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)とコンサルティング会社デロイトがまとめた新しい報告書によると、ウクライナ避難民は昨年、ポーランドの国内総生産(GDP)をおよそ2.7%押し上げたと推計されています。消費の増加や労働力としての参加が、目に見える経済効果を生み出している形です。
雇用の面でも変化が起きています。ポーランドで働くウクライナ避難民の就業率は、昨年61%から69%へと上昇しました。多くの人が仕事を得て、単なる「保護される側」から、税金を納め、地域経済を支える一員になりつつあります。
それでも「いつ帰れるか分からない」半数の人びと
一方で、将来の見通しは決して明るいとは言えません。調査では、ウクライナに「いつ戻るのか」、あるいは「そもそも戻るのか」について、約52%が「分からない」と答えています。今では、およそ半数が帰国の時期をまったくイメージできない状況にあります。
ウクライナでの和平合意への期待が語られる一方で、避難民にとっては、ポーランドにとどまるか、ふるさとに戻るかという難しい選択が、むしろ一層重くのしかかっています。昨年からの経済的な前進があるからこそ、戻るべきか、ここで新たな生活を築くべきか、判断は複雑になっています。
ワルシャワのNGO「ウクライナの家」で聞く迷い
ポーランドの首都ワルシャワには、ウクライナ避難民を支えるNGO「ウクライナの家」があります。ここでは、避難民がポーランドで暮らすための法的な相談や、日々の生活に関する支援が行われています。仕事の探し方、保険や教育の制度、書類手続きなど、慣れない国での暮らしに必要な情報をまとめて受け取れる場所です。
この「ウクライナの家」には、将来について思いを巡らせる家族が次々と訪れます。戦闘が長期化するなかで、ポーランドに根を張るべきか、平和が訪れたときにすぐ戻れるよう準備しておくべきか、迷いは深まるばかりです。
年金では暮らせなかった故郷と、働けば暮らせる今
ワルシャワで出会ったのは、65歳のウクライナ人避難民、Michalさんです。ウクライナでは年金生活者だったというMichalさんは、故郷での生活をこう振り返ります。
ウクライナにいたとき、彼が受け取っていた年金は月におよそ60ドルほどでした。生活するにはあまりにも少なく、「本当に厳しかった」と言います。一方、ポーランドでは妻が仕事を見つけ、現在は月に1100ドル以上を稼いでいるといいます。
Michalさんは、ウクライナに戻るかどうかについて、「もしウクライナで何かが変われば戻るかもしれないが、そうでなければ難しい」と語ります。経済的な安定と、ふるさとへの思いのあいだで揺れる、その葛藤は、多くの避難民にも共通するものかもしれません。
和平への期待がもたらす「新しい不安」
ウクライナで和平合意が実現するかもしれないという期待は、人びとに希望を与える一方で、「では、そのとき自分はどうするのか」という新しい問いも突きつけます。ポーランドで仕事を見つけ、子どもが学校に通い始め、生活がようやく落ち着き始めた人ほど、帰国の決断は簡単ではありません。
多くの避難民は、次のような点を天秤にかけながら悩んでいます。
- ポーランドで得られる仕事と収入の安定
- ウクライナでの再建に関わりたいという思い
- 故郷の家族や友人とのつながり
- 子どもたちの教育や言語環境
昨年からの経済的な前進があるからこそ、「一度戻っても、また経済的に苦しくなるのではないか」という現実的な不安も浮かび上がります。
「とどまる生活」と「帰る未来」をどう両立させるか
ポーランド社会にとって、ウクライナ避難民は、すでに経済と地域コミュニティの一部になりつつあります。就業率の上昇やGDPへの貢献は、そのことを数字で示しています。
しかし、当事者の目線から見ると、これは単なる経済の話ではありません。故郷への愛着、戦争による喪失、これから先の人生をどこで生きるのかという根源的な問いが重なり合っています。
ワルシャワの「ウクライナの家」のような場所は、法的なサポートだけでなく、こうした迷いや不安を言葉にできる場でもあります。避難民が「とどまる生活」と「いつか帰るかもしれない未来」の両方を視野に入れながら、自分なりの答えを探せるようなサポートが、これからますます重要になっていきそうです。
私たちがこのニュースから考えられること
ウクライナ避難民の問題は、遠い国の出来事のように見えて、実は働き方、移動、家族、コミュニティといった、誰にとっても身近なテーマを含んでいます。
もし自分が同じ立場だったら、経済的な安定と故郷への思いのどちらを優先するのか。今いる場所で根を張るのか、それともいつか戻ることを前提に生きるのか。ポーランドで揺れる人びとの選択は、私たち自身の「どこで、どのように生きるか」を見つめ直すきっかけにもなりそうです。
Reference(s):
Ukrainians in Poland weigh should they stay or should they go
cgtn.com








