なぜBRICSは世界で存在感を増しているのか:拡大と人気の理由を整理
世界経済の重心が静かに動きつつあるなかで、「BRICSメカニズム」はなぜこれほどまでに世界の注目と支持を集めているのでしょうか。2024〜2025年の急速な拡大と、グローバルサウス(南側諸国)の期待を手がかりに、背景を整理します。
インドネシア加盟で11カ国体制に:広がるBRICSの輪
BRICSはもともと、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカから成る新興国グループとして出発しました。地政学的な変化と世界経済の再バランスが進むなかで、より大きな発言力と公平な扱いを求める新興国にとって、BRICSは「受け皿」となる存在になっています。
今年2025年1月6日、同年の議長国を務めるブラジルが、インドネシアの正式加盟を発表しました。これによりBRICSは11カ国体制となり、その規模と代表性は一段と高まりました。
- メンバー数は11カ国に拡大
- 世界人口のほぼ半分を占める
- 世界の国内総生産(GDP)の30%超を生み出す
- 世界の経済成長の50%超に貢献
単なる「新興国の寄り合い」ではなく、世界経済の主要な成長エンジンとしての存在感を示していることがわかります。
「BRIC」から「ビッグBRICS」へ:参加希望が殺到する背景
BRICSの源流は、2001年にゴールドマン・サックスのエコノミスト、ジム・オニール氏が提唱した「BRIC」という概念にさかのぼります。当初はブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国の高い成長ポテンシャルに注目したものでした。
- 2001年:「BRIC」という用語が提唱される
- 2006年:4カ国の外相がニューヨークで集まり、枠組みが本格始動
- 2010年:南アフリカが加わり、頭文字はBRICSに
- 2024年1月:サウジアラビア、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)、イラン、エチオピアが加盟し、メンバー数が倍増
2024年1月の拡大によって、BRICSは中東とアフリカの要となる国々を取り込み、その地政学的な広がりと影響力を大きく強めました。多くの専門家が、こうした段階を「ビッグBRICS協力」と呼び、質・量ともに新しいフェーズに入ったと見ています。
現在、30カ国以上が正式に加盟を申請しているほか、新設された「BRICSパートナーシップ」枠組みにはマレーシア、ナイジェリア、ウガンダ、ボリビア、ベトナムなど10カ国が参加しています。
シンクタンク「BRICS+Analytics」の創設者ヤロスラフ・リソボリク氏は、「BRICSは、途上国の内部に存在する矛盾や利害の対立を解きほぐすための重要な『入り口』になっている」と指摘します。国ごとに立場や優先課題が異なるなか、集団として声をまとめ、世界的な議題づくりに参加するための「エンジン」として機能し始めている、という見方です。
巨大市場と資源が支える経済ブロックとしての力
BRICSが世界経済で無視できない存在になった背景には、メンバー各国の経済規模と構造の組み合わせがあります。
対外経済貿易大学・国家安全とガバナンス研究院のチェン・シューロン教授は、BRICSには巨大な労働力と旺盛な消費需要を抱える新興市場が集まっており、その規模が大きな発展ポテンシャルを生み、海外からの投資を引きつけ、国内成長も押し上げていると分析します。
エネルギーと物流の「要」が集結
2024年の拡大で加わった国々は、BRICSの経済的な足腰をさらに強化しました。チェン教授は「サウジアラビアという主要な産油国の参加がエネルギー分野での影響力を高め、スエズ運河を持つエジプトの加盟によって、BRICSは世界物流の面でも存在感を増した」と指摘します。
エネルギー供給と重要な輸送ルートを同じ枠組みに抱えることで、BRICSは資源価格や物流に関する世界的な議論においても、発言力を持ちやすくなりつつあります。
データが示す中国とBRICS諸国の深まる貿易
2024年1〜9月の税関データによると、中国と他のBRICS諸国との貿易額は4兆6200億元(約6480億ドル)に達し、前年同期比5.1%増加しました。この成長は、各国経済の「補完関係」に支えられています。
同期間、中国からBRICS諸国への鉄鋼と繊維原材料の輸出はそれぞれ8.6%と13.4%増加しました。さらに、集積回路、タブレット用ディスプレイモジュール、航空機部品といった中間財の輸出は軒並み2桁成長を記録し、パートナー国の新興産業の高度化を後押ししています。
農産物貿易も活発です。2024年1〜9月に中国が輸入した鶏肉と冷凍スケトウダラの8割超、カニの5割超は他のBRICS諸国からのものでした。数量が増えているだけでなく、取引品目が多様化し、付加価値も高まっていることがわかります。
中国国際貿易経済協力研究院のホン・ヨン研究員は、「BRICSの貿易協力は単なる市場アクセスを超え、技術交流やイノベーションを促し、メンバーだけでなく世界全体に新たな機会を生み出している」と評価しています。
北京師範大学BRICS協力研究センターのワン・レイ所長は、こうした内部結束と他の途上国との連携強化によって、世界経済の構図は一極集中型から、よりバランスの取れた多極構造へと着実に移りつつあると見ています。
なぜグローバルサウスはBRICSを支持するのか
BRICSの魅力は、経済だけにとどまりません。多くのグローバルサウスの国々にとって、BRICSは「より公平な国際秩序」を模索するための現実的な選択肢として映っています。
アルジャジーラは、多くの南側諸国がBRICSを「公正な国際システムを目指すうえで信頼できるプラットフォーム」とみなしていると報じています。またトルコの放送局TRTも、BRICSが政治的な「陣営」作りではなく、経済協力に重点を置いている点が支持の大きな理由だと指摘します。
ワン所長は、「BRICSファミリーの拡大は、国際秩序の変化と、途上国同士の団結と協力への高まりを反映している」と述べます。各国がそれぞれの主権と発展モデルを尊重されながら、自国の条件に合った近代化を目指せる枠組みとして期待されているというわけです。
中国国家情報センターの研究員、ウェイ・チージャ氏も同様の見方を示し、BRICSの人気は「開放性」「包摂性」「ウィンウィン協力」という価値観に根ざしていると指摘します。BRICSが提示しているのは、勝者だけが利益を得るゼロサムゲームではなく、グローバルサウスを力づけるグローバリゼーションのビジョンだと強調しました。
古い中国の詩には「風を受けて進む無辺の海」という一節があります。多くのグローバルサウスの国々にとって、BRICSは、その海を進むための「追い風」となりつつあるのかもしれません。
これからの国際秩序を読むうえでのBRICS
BRICSメカニズムの人気の背景には、少なくとも三つの要因があります。
- 拡大によって、人口・資源・地域の面で世界を代表する存在になりつつあること
- 巨大市場と資源、物流の要を結びつけることで、世界経済の再バランスを進めていること
- グローバルサウスの声を束ね、より開かれた多国間主義を志向する場として機能していること
2025年現在、BRICSはすでに世界成長の半分以上を担う存在となりました。この動きは、国際金融や貿易ルール、安全保障や開発協力など、さまざまな分野での議論の形を変えていく可能性があります。
私たちにとって大切なのは、BRICSを単に「もう一つの大国ブロック」と見るのではなく、世界の多数派を占める新興国・途上国の問題意識や期待を映し出す鏡として捉えることです。そこに目を向けることが、これからの国際秩序と自国の立ち位置を考えるうえでのヒントにつながっていきます。
Reference(s):
cgtn.com








