メキシコ、環境政策を「保全」から「再生」へ 生態系危機とどう向き合うか video poster
地球温暖化が深刻化するなか、国際ニュースの現場では「生態系をどう守るか」から「どう再生するか」へと発想の転換が進んでいます。最近メキシコで開かれたハイレベルのサミットは、その流れを象徴する場となりました。
この会合では、環境悪化と向き合うメキシコの新たなアプローチとして、「自然保護(保全)」中心の政策から、傷ついた森や川、海などを積極的に修復する「生態系の再生」へと軸足を移す方向性が示されました。CGTNのアルスデア・ベイバーストック記者が伝えています。
メキシコのハイレベルサミットで見えた転換
メキシコで開かれた今回のサミットには、
- 政府の担当閣僚や高官
- 環境保護を掲げる団体や専門家
- 地域コミュニティや市民社会の代表
など、さまざまな立場の参加者が集まりました。
議論の焦点となったのは、「環境悪化をただ食い止めるだけでは、もはや追いつかない」という認識です。すでに劣化してしまった生態系を修復し、元の機能に近い状態まで取り戻す「再生」を前面に打ち出すことが、今後の中心的な戦略として位置づけられました。
「保全」と「再生」はどう違うのか
環境ニュースでは「保全」と「再生」という言葉がよく出てきますが、実際に何が違うのでしょうか。
保全(コンザベーション)
- まだ残っている森林や湿地、サンゴ礁などを守ることが中心
- 保護区の指定や開発規制など、「これ以上壊さない」ための仕組みづくり
- 短期的にはコストを抑えやすい一方、すでに失われた自然は戻ってきません
再生(レストレーション)
- すでに傷んだ、あるいは失われた生態系を回復させる取り組み
- 植林やマングローブの再生、土壌の回復、川の流れの復元など、能動的なプロジェクトが中心
- 時間もお金もかかりますが、将来的には防災や観光、地域経済にもプラスの効果が期待されます
メキシコのサミットで示された「保全から再生へ」という流れは、こうした発想の違いを前提にしたものといえます。
なぜいま、生態系の再生なのか
環境悪化と気候危機が同時に進む今、「再生」が重視される背景にはいくつかの理由があります。
- 気候変動のスピードが速い:ただ守るだけでは、既に劣化したエリアから温室効果ガスが出続けてしまいます。
- 自然のインフラとしての機能:健康な森や湿地は、洪水を和らげたり、水をきれいにしたりする「自然のインフラ」として働きます。
- 地域コミュニティの暮らし:漁業や農業、観光など、生態系に依存する生計を守るには、自然の質そのものを上げる必要があります。
こうした考え方から、メキシコを含む世界各地で「生態系再生」をキーワードとする政策やプロジェクトが増えつつあります。
市民社会を巻き込むメキシコの取り組み
今回のサミットの特徴は、政府だけでなく、市民社会が幅広く参加した点にあります。環境保護を訴える団体や地域の代表が同じテーブルにつくことで、政策決定のプロセスに多様な声を反映させようという姿勢が見て取れます。
生態系の再生は、単に上からの命令で進むものではなく、地域に住む人々の生活や価値観と強く結びついています。山や海、川をどう使い、どう守るかは、日々の暮らしの選択そのものだからです。
メキシコでの議論は、
- 政府が大きな方向性と資金の枠組みをつくる
- 専門家が科学的な知見を提供する
- 地域コミュニティが現場で実行し、成果と課題を共有する
といった役割分担をどう組み合わせるか、という実務的な論点にもつながっています。
メキシコ発の動きが世界と日本に投げかける問い
CGTNの報道が伝えるメキシコの事例は、「環境政策は、守るだけでなく、直すフェーズに入った」というメッセージとして、国際社会にも共有されつつあります。
日本に住む私たちにとっても、次のような問いを投げかけます。
- 身近な川や緑地で、「保全」だけでなく「再生」が必要な場所はどこにあるのか
- 行政任せにせず、地域や市民社会として何に参加できるのか
- 環境対策をコストではなく、将来世代への投資と捉え直せるか
地球規模の環境ニュースの一つとしてのメキシコの動きをきっかけに、自分の暮らしや地域から、どんな「小さな再生」を始められるのかを考えてみてもよさそうです。
Reference(s):
Mexico shifts to restoration in fight against environmental decline
cgtn.com








