インド旅客機墜落、予備報告で結論出さず 最終報告待ちの理由
2025年6月にインドで起きたボーイング787旅客機墜落事故をめぐり、インド政府は、事故調査当局による予備報告が公表されたものの、最終報告が出るまでは結論を出さない姿勢を改めて示しています。
260人死亡のインド航空事故、何が分かったのか
インド西部グジャラート州のサルダール・ヴァッラブバーイー・パテール国際空港を2025年6月12日に離陸したロンドン行きエア・インディアのボーイング787-8型機が、離陸直後に墜落しました。今回の事故では少なくとも260人が死亡し、その中には機内の242人のうち1人を除く乗客乗員が含まれ、インドで数十年ぶりとなる最悪級の航空事故となりました。
インド政府の航空事故調査機関である航空事故調査局(AAIB)は、墜落から約1か月後に15ページにわたる予備報告書を公表しました。この報告書は、事故当時の機体の状況や操縦室で何が起きていたのかについて、初めて公式な全体像を示すものです。
インド政府「コメントは最終報告を見てから」
連邦民間航空相のラム・モーハン・ナイドゥ・キンジャラプ氏は、報告書公表の際、報道陣に対し、予備報告はあくまで途中経過にすぎないと強調しました。
同氏は「これは現時点での予備報告に過ぎません。省として内容を分析しているところですが、最終報告が出てからコメントする方が適切だと考えています」と述べ、原因についての早急な判断を避ける姿勢を示しました。
政府が結論を保留している背景には、予備報告ではまだ原因を特定するには不十分であり、人的要因や運航会社の体制、管制や整備の状況など、幅広い要素を洗い出す作業が続いていることがあります。
予備報告が指摘した「燃料遮断」と操縦室の混乱
AAIBが公表した予備報告によると、墜落の直前、機体の両エンジンへの燃料供給が遮断されていたことが分かりました。報告書は、操縦室でのエンジンスイッチの操作をめぐり、パイロット同士の間で混乱が生じた後に、燃料遮断が起きたと説明しています。
- エンジンへの燃料供給が遮断されたことが、推力喪失の直接の要因とみられること
- 燃料遮断は、エンジンスイッチの操作をめぐるパイロット間の混乱の後に発生したこと
- 現時点の分析では、機体やエンジンに重大な構造的欠陥や設計上の問題は確認されていないこと
- ボーイング787-8型機の製造企業や運航会社に対する具体的な安全勧告は、現段階では提示されていないこと
一方で、両エンジンがほぼ同時に機能を失った経緯については、多くの疑問が残されています。予備報告は、事故当時の状況を描き出したものの、なぜこのような同時的なエンジン停止に至ったのかという根本原因については、まだ十分な説明を与えていません。
エア・インディアとボーイング、調査への継続協力を表明
予備報告の公表を受け、運航会社のエア・インディアと機体メーカーのボーイングは、AAIBが進める調査を引き続き支援すると表明しました。今後も情報提供などを通じて協力していくとしています。
AAIBとは インドの航空事故調査機関
AAIB(航空事故調査局)は、インド国内で発生した航空機事故を専門的に調査する政府機関です。6月12日の墜落を受けて、AAIBは国際的な基準や手順に従い、翌日には多分野の専門家からなる調査チームを立ち上げ、本格的な原因究明に着手しました。
航空事故調査では、機体の残骸やフライトデータレコーダーの解析だけでなく、乗員の訓練状況、運航マニュアル、管制との交信記録など、多くの要素が検証されます。こうした作業には時間がかかるため、最終報告が公表されるまでには通常、数か月から1年以上を要することもあります。
なぜ「結論を急がない」ことが重要なのか
今回の事故では、予備報告がエンジンへの燃料遮断という重大な事実を明らかにした一方で、インド政府は原因の断定をあえて避けています。この姿勢には、次のような意味合いがあると考えられます。
- 限られた情報で特定の個人や組織の責任を断定すると、後に新たな事実が判明した際に調査の信頼性が損なわれかねないこと
- 人的ミスだけでなく、訓練体制やマニュアル、運航文化など、構造的な問題を含めて総合的に検証する必要があること
- 最終報告は、単に原因を示すだけでなく、再発防止に向けた具体的な提言をまとめる役割を持つこと
国際ニュースとしてこの事故を追うことは、インドの航空行政を理解するだけでなく、日常的に飛行機を利用する私たち自身の安全意識を見直すきっかけにもなります。今後公表されるAAIBの最終報告が、どのような教訓と提言を示すのか注目されます。
Reference(s):
cgtn.com








