英政府の極秘アフガン避難計画、スーパー禁制令解除で発覚
イギリスで、アフガニスタンで英国に協力していた人々を極秘に受け入れていた計画が、裁判所の「スーパー禁制令」解除をきっかけに公になりました。2022年のデータ流出から始まったこの問題は、政府の情報管理と難民保護の在り方に大きな問いを投げかけています。
何が明らかになったのか
イギリス政府は、2022年のデータ流出で危険にさらされたアフガニスタンの人々を極秘に受け入れていたことを公表しました。国防相のジョン・ヒーリー氏は、先日、議会でこの事実を明らかにしました。
発表によると、この計画は「アフガン・レスポンス・ルート(Afghan Response Route)」と呼ばれ、これまで存在自体が報じられないよう、英国高等法院による厳格な報道差し止め命令、いわゆる「スーパー禁制令」の対象となっていました。この命令が解除されたことを受けて、政府は初めて計画の詳細を説明した形です。
発端は2022年の大規模データ流出
ヒーリー国防相によると、問題の発端は2022年2月の情報流出でした。当時、イギリスへの移住を希望していたアフガニスタンの人々、約1万9,000人分の名前や詳細が記載されたスプレッドシートが、英国当局者のミスによって漏えいしました。
この流出は、タリバン勢力が首都カブールを掌握してから約6か月後に起きたと説明されています。タリバンによる報復の危険が指摘されるなかでの流出であり、ヒーリー氏は「重大な省庁の過失であり、命が危険にさらされた可能性がある」と述べています。
極秘計画「アフガン・レスポンス・ルート」とは
この事態を受け、前の保守党政権は2024年4月、流出によって特に危険にさらされた人々を救済するための極秘プログラム「アフガン・レスポンス・ルート」を開始しました。対象は、タリバンからの報復リスクが最も高いと判断された人々だったとされています。
ヒーリー国防相の説明を基にすると、これまでに以下のような受け入れが進んでいます。
- アフガニスタン人約900人と、その家族3,600人が、すでにイギリスに到着済み、もしくは移送中
- さらに600人分の申請が受理済みで、今後の移送対象となる見込み
これまでにかかった費用は約5億3,500万ドルに達し、受け入れ済み・受け入れ予定の全員を含めた計画の総額は、約13億7,000万ドルに上ると見積もられています。
3万6,000人の受け入れの一部にすぎない
今回の極秘プログラムの対象者は、イギリスがこれまで受け入れてきたアフガニスタンの人々の一部にすぎません。ヒーリー国防相によれば、2021年8月のカブールの政変以降、さまざまな仕組みを通じてイギリスに受け入れられたアフガニスタンの人々は、合計で約3万6,000人に達しています。
「アフガン・レスポンス・ルート」は、その中でも特に「データ流出によって危険が増した人々」を対象とした補完的なルートだったと位置づけられます。
情報管理と透明性、難民保護のジレンマ
今回の一連の経緯は、いくつかの重要な論点を浮かび上がらせています。
1. 行政の情報管理体制
まず問われるのは、政府による個人情報の管理体制です。武力紛争や政変から逃れようとする人々の名簿は、その存在自体が命に直結します。その情報が一度外部に漏れれば、本人だけでなく家族や関係者も危険にさらされます。
ヒーリー国防相が「重大な過失」と認めざるを得なかった背景には、単なる事務ミスでは済まされない重さがあると言えます。
2. 秘密指定と説明責任
次に、極秘プログラムとして進められていた点も議論を呼びそうです。タリバンによる報復のリスクを考えれば、一定の秘匿性が必要だったという側面は否定できません。一方で、巨額の公的資金が投じられた以上、議会や市民に対する説明責任も避けて通れません。
今回、「スーパー禁制令」が解除されるまで、計画の存在自体が報じられなかったことは、民主主義国家における透明性の在り方をめぐる議論につながる可能性があります。
3. 協力者をどう守るのか
アフガニスタンでイギリスに協力してきた人々をどこまで保護するのか、という問題も改めて浮上しています。2021年以降、イギリスは複数の制度を通じて受け入れを進めてきましたが、今回のような情報流出が起きれば、その人々の信頼にも影響しかねません。
武力紛争に関わった国が、現地で協力した人々の安全にどこまで責任を負うべきか――この問いは、イギリスだけでなく、国際社会全体に共通するテーマでもあります。
これから何が問われていくのか
2022年の情報流出から始まり、2024年に極秘プログラムが立ち上げられ、そして今になって公表に至った今回の経緯は、時間をかけて積み重なった問題が一気に表面化したかたちとも言えます。
今後、イギリス国内では、
- データ流出の経緯と再発防止策
- 極秘プログラムの必要性と妥当性
- アフガニスタンからの避難者支援をどのような枠組みで続けるか
といった点をめぐる議論が続きそうです。
国際ニュースとしてこの問題を見るとき、私たちに突きつけられているのは、「安全を求めて国境を越えようとする人々に、各国はどのように向き合うのか」という普遍的な問いです。イギリスの事例は、その一つの現実として、しばらく注目を集めることになりそうです。
Reference(s):
UK Afghan asylum scandal comes to light after super-injunction lifted
cgtn.com







