英独が新友好条約に署名 防衛・鉄道・移民で連携強化
英独が新友好条約に署名 防衛・鉄道・移民で連携強化
現地時間の木曜日、イギリスとドイツが包括的な友好条約に署名しました。防衛から交通、移民対策までを網羅する内容で、ブレグジット後に揺れていた英独関係と欧州の安全保障の行方に、新たな一歩を刻む動きです。
ブレグジットから「協力の再構築」へ
今回の友好条約は、フリードリヒ・メルツ首相にとって初のロンドン訪問の場で結ばれました。直前にはフランスのエマニュエル・マクロン大統領がイギリスを国貿名で訪問しており、欧州の三大国であるイギリス、ドイツ、フランスの連携強化が一つの流れになりつつあります。
ベルリンのシンクタンクSWPのニコライ・フォン・オンダルツァ氏は、この条約について「一つには、ブレグジット後の独英関係が正常化したサインだ。同時に、大西洋を挟んだ不確実性が高まる中で、イギリスが安全保障上ますます重要なパートナーになったことの表れでもある」と指摘します。
条約には、相互支援に関する条項も盛り込まれました。ロシアとウクライナの戦闘が続き、欧州周辺の安全保障環境が厳しさを増す中で、こうした条項は「非常に重要だ」と専門家は見ています。およそ10年前のEU離脱是非を問う国民投票から、英EU関係は長くぎくしゃくしてきましたが、その軸を安全保障協力へと移し直す試みとも言えます。
防衛協力の「質」を変える条項
今回の友好条約は、すでに合意されていた防衛協力を土台にしています。両国は昨年、長射程打撃兵器を共同開発する防衛協定を結びましたが、新条約はその枠組みを広げるものです。
具体的には、タイフーン戦闘機やボクサー装甲車といった共同開発装備について、第三国への輸出を両国が共同で進める「共同輸出キャンペーン」を行うことで一致しました。これは、この10年ほどドイツがサウジアラビアやトルコ向けのタイフーン輸出を事実上ブロックしてきた流れからの大きな転換でもあります。
欧州企業のコンソーシアムが製造し、イギリスではBAEシステムズ、ドイツではエアバスなどが参加するタイフーンは、各国政府の輸出判断が鍵を握ります。今回の方針転換は、欧州の防衛産業を一体的に強化し、NATO内での役割分担を見直すきっかけになりそうです。
さらに、ドイツの防衛技術企業シュタルクが、AIを活用した無人システムを製造する工場をイギリスに新設することも発表されました。同社にとってドイツ国外では初の生産拠点となり、防衛AI技術とサプライチェーンを英独で共有する狙いがうかがえます。
鉄道と移民対策 日常生活にもつながる協力
軍事だけでなく、日常に直結する分野でも連携が深まります。条約には、イギリスとドイツを結ぶ新たな直通鉄道の開発計画が盛り込まれました。実現すれば、出張や観光、貨物輸送の利便性が高まり、航空便に依存しない低炭素の移動手段としても注目されます。
もう一つ大きいのが、いわゆる「不規則な移民」への対策です。イギリスのキア・スターマー政権は、右派ポピュリスト政党リフォームUKの台頭を意識しながら、亡命希望者の流入抑制を重要課題に掲げています。今回、両国は不法な越境に対抗するための協力強化で合意しました。
ドイツ側は、イギリスへの違法な渡航を助長する行為を処罰対象とする法改正を年末までに行うと約束しました。これにより、密航業者が小型ボートを隠す倉庫や保管施設などを警察が捜査しやすくなり、危険な海峡横断のルートを断つ狙いがあります。
トランプ政権の復帰と「大西洋の不確実性」
背景には、アメリカとの関係をめぐる不安が横たわっています。ドナルド・トランプ大統領がホワイトハウスに復帰して以降、欧州向けの新たな関税が導入され、通商関係は一段と緊張しています。同時に、アメリカがどこまで欧州防衛にコミットし続けるのかという疑問も、欧州側で根強く語られています。
こうした中で、英独友好条約は、欧州が自ら安全保障と防衛産業の基盤を強めようとする動きの一端と見ることができます。NATOという枠組みは維持しつつも、米国一極に依存しない「欧州の責任」の比重を高める方向です。
日本への示唆 分断の時代に何を整えるか
今回の動きは、遠い欧州の話に見えて、日本にとっても考える材料を与えてくれます。友好条約が焦点を当てているのは、軍事同盟そのものよりも、共同開発や輸出ルール、鉄道や移民管理といった「インフラと制度」の部分です。
緊張が高まりやすい時代だからこそ、そうした静かなインフラ整備こそが、長期的な信頼関係と抑止力の土台になる——。英独の選択は、その一つのモデルと言えるかもしれません。
日本もまた、同盟国やパートナーとの関係を、安全保障、経済、移動や人の往来といった複数のレイヤーでどうデザインしていくのか。今回の英独友好条約は、その議論を深める材料として注視する価値がありそうです。
Reference(s):
UK, Germany sign friendship treaty, deepening ties in face of threats
cgtn.com








