カリブ海観光を襲う気候変動 ハリケーンと海藻「二重の打撃」 video poster
2025年12月現在、カリブ海の観光地は、気候変動の影響で平年を上回る2025年大西洋ハリケーンシーズンと、記録的なサルガッソウ(海藻)の大量漂着という「二重の脅威」に直面しています。美しい海とビーチを売りにしてきた観光産業が揺らぐ中、その影響は地域経済だけでなく、世界の旅行者にも広がりつつあります。
カリブ海観光と気候変動:何が起きているのか
カリブ海は、青い海と白い砂浜、リゾートホテルやクルーズ船で知られる世界有数の観光地域です。多くの国・地域にとって、観光は雇用と外貨収入を支える基幹産業となっています。
しかし近年、この「楽園」は気候変動の最前線の一つとされています。海面水温の上昇によりハリケーン(熱帯暴風雨)が勢力を増し、同じく海の変化が関係するとされるサルガッソウの大量発生が続いています。2025年の今季は、平年を上回る活発な大西洋ハリケーンシーズンと記録的なサルガッソウ漂着が重なり、観光業への圧力が一段と強まっています。
平年を上回る2025年大西洋ハリケーンシーズン
報道によると、2025年の大西洋ハリケーンシーズンは「平年を上回る」規模となり、カリブ海一帯では強い風雨や高波による被害が相次いでいます。直接の被害を受けた島だけでなく、「いつ大型ハリケーンが来るか分からない」という不安そのものが、観光産業を冷え込ませています。
観光地にとっての主な影響は、次のような形で現れます。
- フライトやクルーズの欠航・遅延が増え、旅行計画の変更やキャンセルが相次ぐ
- ビーチや桟橋、マリーナなどのインフラが壊れ、修復まで観光客を受け入れにくくなる
- 保険料や災害対策コストが増え、中小のホテルや飲食店の経営を圧迫する
- 「安全かどうか分からない」という印象から、予約そのものが減少する
こうしたリスクは、ハイシーズンの観光収入に大きく依存する小さな島々にとって、とりわけ重くのしかかります。
記録的なサルガッソウ漂着 白い砂浜が茶色の海藻に
もう一つの大きな脅威が、サルガッソウと呼ばれる褐色の海藻の大量漂着です。かつては外洋に浮かぶ「海の森」として知られてきましたが、近年はカリブ海やメキシコ湾岸のビーチに大量に打ち上げられています。
2025年は、このサルガッソウが記録的なレベルに達しているとされ、白い砂浜が茶色の海藻で覆われる光景が各地で見られます。観光地にとっての影響は深刻です。
- ビーチが海藻で埋まり、景観が大きく損なわれる
- 腐敗が進むと悪臭が発生し、リゾート地としての魅力が低下する
- 海水浴やマリンスポーツを楽しみに来た旅行者が、予定を切り上げて帰るケースも出る
- 海の中での光や酸素の環境が変化し、サンゴや魚などの生態系にも影響が及ぶ
ホテルや自治体は、重機や人手を投入してサルガッソウを毎日のように除去していますが、広大な海岸線すべてを守るのは簡単ではありません。清掃コストも年々膨らみ、財政的な負担となっています。
二重の打撃を受ける観光産業と地域経済
ハリケーン被害とサルガッソウの大量漂着。この二つが重なることで、カリブ海の観光産業は「二重の打撃」を受けています。短期的には、宿泊・飲食・交通・レジャーなど幅広い業種で売り上げが落ち込み、雇用も不安定になります。
長期的には、次のような懸念も指摘されています。
- 毎年のように災害と環境問題が続けば、「カリブ海=リスクが高い」というイメージが固定化する
- 修復費用や防災投資がかさみ、特に小規模事業者が市場から退出せざるを得なくなる
- 観光収入の減少が、教育や医療など公共サービスの財源不足につながる
- 経済的に弱い立場の人々ほど、仕事や住まいを失いやすくなる
観光は「目に見える被害」だけでなく、「予約が入らない」「投資が集まらない」といった形でダメージがじわじわと広がる産業でもあります。気候変動の影響が強まるほど、その脆さがあらわになっていると言えます。
現場で進む「適応」 リスクと付き合いながらどう生きるか
一方で、カリブ海の国・地域は、こうした現実を前に「適応」の取り組みも進めています。ハリケーンとサルガッソウという二つのリスクと付き合いながら、観光を維持・転換しようとする試みです。
主な動きとして、次のような例が挙げられます。
- 防災インフラの強化や建築基準の見直しによる、ホテル・住宅の耐風・耐水性能の向上
- 早期警戒システムの整備と、観光客向けの避難情報の多言語化
- サルガッソウを堆肥やバイオ燃料の原料として活用する試み
- ハリケーンシーズンに依存しないエコツーリズムや文化体験型の観光商品の開発
こうした取り組みは、気候変動の影響をゼロにするものではありませんが、「被害を減らしながら観光を続ける」ための現実的な選択肢として注目されています。
旅行者としてできること
気候変動によるリスクが高まる中で、旅行者側にもできることがあります。カリブ海への旅を検討する際、次のポイントを意識することが求められています。
- 旅行時期や目的地のハリケーンリスク、環境状況を事前に調べる
- 気候リスクをカバーする旅行保険を検討する
- 環境保全や防災に取り組む宿泊施設・ツアー会社を選ぶ
- サルガッソウ清掃などの負担を抱える地域社会への配慮を忘れない
「どこに行くか」だけでなく、「どのような形で地域に関わるか」を選ぶことが、気候変動時代の観光のあり方として問われつつあります。
「楽園」はこれからも楽園でいられるか
温暖な海とビーチに象徴されるカリブ海は、これからも世界の人々を引きつける観光地であり続けるでしょう。しかし、2025年に見られているようなハリケーンとサルガッソウの「二重の脅威」は、気候変動が観光産業に与える影響を、はっきりと可視化しています。
日本からニュースを追う私たちにとっても、「気候変動は遠い話」ではなく、「旅のあり方」や「地域経済の持続可能性」と結びついた身近な問題になりつつあります。次の旅行先を選ぶとき、そして日々の生活や消費のあり方を考えるとき、カリブ海で起きている変化を一つの手がかりとして捉えてみる価値がありそうです。
Reference(s):
Climate change, hurricanes threatens tourism industry in Caribbean
cgtn.com








