中東和平は岐路に ガザ停戦、イラン核問題、シリア危機が同時進行
ガザでの戦闘継続、イラン核問題をめぐる外交の停滞、シリア南部の新たな宗派対立が重なり、中東和平は2025年末の今、ぎりぎりの岐路に立たされています。
この記事では、中東情勢をめぐる国際ニュースの中から、ガザ、イラン核問題、シリア南部の危機がどのように絡み合い、「和平への道」を細くしているのかを、日本語で整理していきます。
ガザ:ドーハ停戦協議と「60日間停戦案」
パレスチナ自治区ガザでは、イスラエル軍の攻勢が続く一方で、カタール、エジプト、米国が仲介するドーハでの間接停戦協議が数カ月にわたり続いています。中心となっているのは、約60日間の停戦を柱とする案です。
- 段階的な人質解放
- イスラエル軍地上部隊の段階的撤収
- 敵対行為終結に向けた包括的枠組み作り
しかし、交渉は難航しています。ハマス側は、いかなる暫定合意であっても恒久停戦への道筋を含むべきだと主張しています。一方、イスラエルの強硬派は、ハマスの完全武装解除と「軍事的な勝利」を求め、いかなる妥協も認めない姿勢です。
結果として、「とりあえずの停戦」で人道危機を和らげたい仲介国と、「最終的な勝敗」を優先する当事者とのあいだで、交渉のゴールイメージが大きく食い違ったままになっています。
イラン核問題:イスタンブールで再開されるE3協議
同じタイミングで、イランの核開発をめぐる外交にも再び動きが出ています。イランと英国・フランス・ドイツ(いわゆるE3)による協議が、イスタンブールで再開される予定となり、核合意をめぐる駆け引きが再び前面に出てきました。
テヘランはウラン濃縮度を60%まで高めつつも、計画はあくまで平和目的だと主張しています。これに対し欧州側は、2015年の核合意(いわゆるイラン核合意)に基づく「スナップバック制裁」(合意違反時に制裁を自動復活させる仕組み)について、具体的な進展がない場合は8月末をめどに発動も視野に入れると警告してきました。
イラン側は、欧州がスナップバック発動を主張する正当性そのものに異議を唱え、米国やイスラエルによる核関連施設への軍事攻撃が、信頼醸成と対話の大きな障害になっていると指摘しています。
核協議は、単に技術的な核合意の問題にとどまらず、「相手をどこまで信頼するか」「安全保障上の不安をどう埋めるか」という、より根深い不信の問題と結び付いています。
シリア南部スウェイダ:宗派対立と外部介入
シリア南部のスウェイダ県では、この1週間でドルーズ派とベドウィン系住民とのあいだで激しい宗派間衝突が起き、数百人規模の死者と大規模な住民の避難が発生しました。
混乱のさなか、イスラエルはダマスカスやスウェイダ近郊にあるシリア軍施設を空爆しました。イスラエル側は、ベドウィン勢力を支援しているとみなす政府軍からドルーズ系住民を守るための措置だと説明しています。
その後、米国が仲介に入り、シリアの暫定大統領アフマド・シャラー氏とイスラエルのネタニヤフ首相が、戦闘停止で合意しました。停戦により表向きの戦闘は収まったものの、その静けさは非常に不安定なものです。
アサド後の宗派地図とトルコの警告
バッシャール・アル・アサド政権の崩壊は、シリアの宗派バランスを大きく変えました。その後も各地で宗派間の衝突が頻発しており、アラウィー派やドルーズ派をはじめとする少数派の間では、新たに権力を握ったイスラーム主導の当局への不信が根強く残っています。
暫定大統領のアフマド・シャラー氏には、この分断された国家をどこまで安定させられるかという重い課題がのしかかっています。隣国トルコ(Türkiye)は、イスラエルがシリアを分断しようとしていると警戒し、「宗派や民族ごとの分割は容認しない」と強く主張。必要であれば直接介入してでも、シリアの分裂を阻止すると警告しています。
ガザ・イラン・シリア:3つの危機はどうつながっているか
ガザ、イラン核問題、シリア南部の紛争――これらの危機は別々の出来事に見えますが、互いに影響し合いながら、中東全体の安定を揺るがしています。
- ガザの人道危機が地域世論を硬化させ、妥協を掲げる政治家の立場を弱める
- イラン核問題をめぐる緊張が、ガザやシリアでの軍事行動や抑止の計算と結び付きやすい
- シリアの宗派対立が周辺国の安全保障不安を高め、新たな軍事介入や代理戦争の火種となる
こうした「連鎖する危機」のなかでは、一つの交渉で譲歩することが、別の戦線での弱さと受け止められかねません。そのため各当事者は、ギリギリまで立場を硬く保ちやすく、結果として合意形成のハードルはさらに高くなります。
それでも残る「細い道」:和平への3つの手がかり
それでも、中東和平への道が完全に閉ざされたわけではありません。現在進行中、あるいは検討中のプロセスには、危機を和らげるための「細い道」がまだ残されています。
- ガザ停戦案の行方
現在議論されている60日間の停戦案がまとまれば、即時の犠牲を減らすだけでなく、恒久停戦に向けた交渉枠組みの出発点となる可能性があります。人質解放と軍撤収をどう段階的に結び付けるかが鍵です。 - イランとE3の核協議
イランと英仏独の協議が、実質的な核制限や透明性の向上につながるのか、それともスナップバック制裁の発動による緊張再燃につながるのかは、中東のみならず世界経済にも影響します。 - シリア南部の停戦定着
スウェイダでの停戦は、一時的な火消しにとどまるのか、それとも宗派をまたぐ信頼醸成(トラスト・ビルディング)の出発点になりうるのかが問われています。ここで一定の成功例が示されれば、他地域での対話のモデルともなりえます。
2025年末、中東和平はどこへ向かうのか
ガザ交渉の停滞、イラン核協議の綱渡り、シリア南部の不安定な停戦――それぞれのタイムラインが同時に締め切りへと近づき、互いに影響し合っているのが、2025年12月現在の中東情勢です。
和平への道は確かに細くなっていますが、短期的な停戦や限定的な合意を積み重ねることでしか、出口に近づく方法はありません。今後数カ月から数年にかけて、ガザ、イラン核問題、シリア南部の三つの危機がどのように推移するかが、中東全体の安定と、国際社会の安全保障環境を大きく左右していくことになります。
Reference(s):
Middle East peace at a crossroads as multiple crises converge
cgtn.com








