イランと欧州が核協議を再開 国連制裁スナップバック巡り駆け引き
国連制裁の全面解除か、それとも自動復活か。イランと欧州主要国がイスタンブールで行った核協議は、中東情勢だけでなく世界経済にも影響し得る重要な局面となっています。
イスラエル・米国の空爆後、初の対面協議
イスラエルと米国によるイランへの空爆から約1か月後、イランと欧州側の代表団がトルコ・イスタンブールで対面協議を行いました。両者が直接顔を合わせるのは、この空爆以降で初めてです。
協議には、欧州連合(EU)とフランス、イギリス、ドイツのいわゆるE3が参加し、イランの領事館で約4時間にわたって話し合いました。国連の核監視機関は、この会合がイランでの査察再開に向けた「入口」になる可能性があるとみています。
イラン側は、この日のやり取りを「真剣で、率直かつ詳細な協議だった」と評価し、欧州との核協議を今後も継続すると明らかにしました。
2015年の核合意と「スナップバック」制裁とは
今回の交渉の土台となっているのは、2015年に結ばれたイランの核計画をめぐる合意です。欧州3か国(フランス、イギリス、ドイツ)と欧州連合(EU)、中国、ロシアが現在も当事者として残り、イランの核活動に制限を課す代わりに制裁を解除するという仕組みになっています。一方、米国は2018年にこの合意から離脱しました。
この合意を裏付ける国連安全保障理事会の決議には有効期限があり、当時、10月18日に失効するとされていました。決議が失効すれば、国連による対イラン制裁は原則としてすべて解除されることになります。
ただし、少なくとも失効の30日前までに「スナップバック」と呼ばれる仕組みが発動された場合、解除されていた国連制裁は自動的に復活します。対象となるのは、炭化水素(石油・ガス)産業から銀行、防衛分野に至るまで、イラン経済の中枢をなす広範なセクターです。
イラン側は会合前から、この国連決議の延長を求める動きに慎重な姿勢を示し、自国の権利を損なう形での延長には応じられないとの立場を強調していました。
イラン副外相「侵略戦争」と非難しつつも協議継続
協議後、イランのカゼム・ガリババディ外務次官は、両者が制裁解除と核問題に関して具体的なアイデアを提示し合ったと説明しました。
ガリババディ氏は、イスラエルと米国による最近の対イラン軍事行動について「われわれの人々に対する侵略戦争だ」と強く批判し、その問題をめぐる欧州側の姿勢にも異議を唱えました。
そのうえで、合意違反が疑われた場合に制裁が自動的に復活するスナップバックの扱いを含め、イランの原則的な立場を説明したと述べています。双方は、この問題について協議を継続することで一致しました。
E3が示した「8月末」までの外交期限
スナップバック発動の条件となる30日前のリミットを念頭に、E3は外交を立て直すための期限として「8月末まで」を一つの目安に設定していました。
外交関係者によれば、欧州側はイランに対し、期限の延長を検討できるだけの具体的な措置を求めています。イランが何らかの形で具体的な行動を示せば、この締め切りを最長でおよそ半年延ばす可能性もあるとされています。
査察再開は実現するか 国連核監視機関の視点
国連の核監視機関は、イランでの査察再開が今回の協議の重要な成果になり得るとみています。査察は、イランの核活動があくまで平和目的にとどまっているかを確認するための中核的な手段です。
もし査察が再開されれば、イランの核計画に対する国際社会の懸念が和らぎ、スナップバックの発動圧力も一定程度下がる可能性があります。一方で、査察の範囲や頻度をめぐる条件交渉は難航することが多く、今回も協議の行方を左右する争点になりそうです。
日本とも無縁ではないイラン核協議
イランの核問題や国連制裁は、一見すると遠い地域のニュースのように感じられるかもしれません。しかし、日本やアジアの読者にとっても、無関係とは言えない要素がいくつかあります。
- エネルギー価格への影響:制裁の復活は原油やガスの供給不安を招き、ガソリン価格や電気料金に波及する可能性があります。
- 国際金融システム:銀行部門への制裁は、国際決済や送金のリスクを高め、企業の海外取引コスト上昇につながり得ます。
- 地域の安全保障:中東で緊張が高まれば、海上輸送ルートの安全やサプライチェーンの安定性にも影響が出るおそれがあります。
こうした点から、イランと欧州の核協議は、日本経済やエネルギー安全保障を考えるうえでも注視すべき国際ニュースだと言えます。
これからの注目ポイント
イスタンブールでの協議は、イランと欧州が「真剣かつ率直な」対話を再開したという意味で、核合意と国連制裁をめぐる駆け引きに新たな段階をもたらしました。今後の焦点は次のような点にあります。
- イランと欧州が追加協議でどこまで妥協点を見いだせるか
- 国連の核監視機関によるイランでの査察が、実際に再開されるかどうか
- スナップバック制裁が発動されるのか、それとも回避されるのか
- イスラエルや米国の動きなど地域の軍事的緊張が、外交努力を後押しするのか、妨げるのか
イランと欧州の「率直」な核協議は、中東の安定だけでなく、日本を含む世界のエネルギー市場と安全保障環境にも静かに影響を及ぼしつつあります。今後の交渉の一つひとつの動きが、国連制裁の行方と国際秩序の形を左右していくことになりそうです。
Reference(s):
Iran, Europeans hold 'frank' nuclear talks with UN sanctions looming
cgtn.com








