コロンビア農村の生徒が気候変動と闘う 教室から始まる環境ニュース video poster
コロンビアの農村地域ウバテにある学校ICAMの生徒たちが、教室を拠点に気候変動と向き合いながら地域を変えています。水の浄化から太陽放射(太陽から届くエネルギー)の研究まで、実験と調査を通じて環境問題に取り組む姿が注目され、現在は国際的な「World’s Best School Prize(ワールド・ベスト・スクール・プライズ)」のファイナリストにも名を連ねています。
コロンビア農村の教室から始まった気候アクション
舞台はコロンビア中部の農村地帯ウバテにあるICAMという学校です。都市部から離れたこの地域では、気候変動の影響や環境問題が日常生活に直結しやすく、教育へのアクセスも決して恵まれているとは言えませんでした。
そんな環境の中で、ICAMの生徒たちは科学の力を使って自分たちの暮らしと地域を良くしようと動き始めました。環境をテーマにした探究学習を通じて、教室の学びをそのまま現場で試し、地域の課題解決につなげているのが特徴です。
水をきれいにする、太陽を測る──手を動かす科学
ICAMの生徒たちが取り組むのは、教科書の中だけにとどまらない、実践的な環境研究です。分かっているだけでも、次のような活動があります。
- 水の浄化プロジェクト:農村部では安全な飲料水の確保が課題になりがちです。生徒たちは水をきれいにする方法を科学的に学び、浄化のプロセスを実験しながら、地域の水環境を改善しようとしています。
- 太陽放射の研究:太陽から地上に届くエネルギー(太陽放射)を観測し、データとして記録・分析する取り組みも行っています。これは、将来の再生可能エネルギー利用や、地域の気候パターンの理解につながる可能性があります。
こうした活動は、単に理科の成績を上げるためのものではありません。生徒たちは、観測・データ分析・実験・検証というサイクルを自分たちで回しながら、「科学とは何か」「自分たちの生活とどう関わるのか」を体感的に学んでいます。日々の授業が、そのまま地域のサステナビリティ(持続可能性)向上に直結しているのです。
「中退予備軍」から国際賞ファイナリストへ
ICAMに通う多くの生徒は、かつては学校をやめてしまうリスクを抱えていたといいます。経済的な理由や、勉強する意義を見いだせないことなど、農村部の子どもたちが直面しやすい現実がありました。
しかし、気候変動や環境問題という「自分ごと」のテーマに科学で挑むプロジェクトに参加する中で、彼らの立場は大きく変わりました。今では、世界中の優れた学校を表彰する国際賞「World’s Best School Prize」のファイナリストとして名前が挙がるまでになっています。
かつては中退の不安を抱えていた生徒たちが、
・地域の環境課題に向き合う若い研究者
・世界から注目される「チェンジメーカー(変化を起こす人)」
として見られるようになったことは、本人たちの自己肯定感や将来観にも大きな影響を与えていると考えられます。
教室から地域へ広がる「小さな気候革命」
ICAMの取り組みが意味するのは、学校の中だけの変化ではありません。水の浄化プロジェクトや太陽放射の研究は、地域社会にもじわじわと波及していきます。
- 実験で得られた知識が、家庭での水の扱い方の改善につながる
- 気候や天候に敏感な農村では、太陽や雨の変化への理解が暮らしの工夫に結びつく
- 生徒が「環境の専門家」として家族や近隣住民に知識を伝える役割を果たす
このように、教室の学びが外へとにじみ出ることで、地域全体が少しずつ変わっていく構図が見えてきます。気候変動に向き合うというと、国際会議や巨大プロジェクトが注目されがちですが、ICAMの事例は「一つの教室」「一人の生徒」から始まる変化の力を示していると言えます。
2025年の世界で、このストーリーが投げかける問い
2025年の今、世界各地で異常気象や干ばつ、豪雨といった気候変動の影響が指摘されています。にもかかわらず、気候危機の「最前線」にいる地域ほど、教育や研究のリソースが限られていることも少なくありません。
コロンビアの農村にあるICAMのような学校が、限られた環境の中でも科学教育と地域課題の解決を結びつけていることは、次のような問いを私たちに投げかけます。
- 気候変動の影響を最も受ける地域で、どのように「学び」と「生きること」を結びつけるか
- 子どもや若者を、被害の当事者としてだけでなく、解決策を生み出す担い手としてどう支えるか
- 都市と農村、グローバルな北と南の間にある「教育格差」をどう埋めていくか
世界の気候教育の流れの中で見るICAM
近年、世界の教育現場では、環境や気候変動をテーマにした「探究学習」「プロジェクト型学習」が広がっています。その多くは、ワークショップや模擬会議、キャンペーンなどの形を取りますが、ICAMの特徴は、環境研究がそのまま地域の暮らしの改善と直結している点にあります。
気候変動を「遠いどこかの大きな問題」として学ぶのではなく、
・身の回りの水や空気を自ら測る
・データを集めて変化を可視化する
・地域の人と対話しながら小さな改善策を実行する
こうしたプロセスそのものが、気候危機の時代に必要とされる市民性や科学リテラシーを育てていると言えるでしょう。
日本からこのニュースを読む意味
日本でも豪雨や猛暑など、気候変動の影響が身近な話題になりつつあります。一方で、環境問題を学ぶ授業が「テスト対策」にとどまり、実社会との接点が見えにくいという声もあります。
コロンビアの農村で、かつて中退のリスクを抱えていた生徒たちが、科学と地域課題を結びつけながら世界的な賞のファイナリストにまでなっているという事実は、日本の教育や地域づくりにも示唆を与えてくれます。
- 小さな学校でも、学びのテーマ設定次第で世界とつながり得ること
- 環境問題への向き合い方が、そのまま若者の学びの動機になること
- 「地方」「農村」といった条件が、必ずしもハンディキャップではなく、むしろ独自の強みになり得ること
この取り組みは、CGTNのミシェル・ベゲ記者がコロンビア・ウバテから伝えたものです。地球規模の気候危機の時代に、遠く離れた農村の教室で起きている小さな変化は、日本にいる私たちが「学び」と「環境」をどう結びつけるかを考えるヒントにもなりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








