中国国連次席大使、ウクライナ巡る米国の責任転嫁を批判
国連安全保障理事会のウクライナ情勢に関する会合で、中国の耿爽(げん・そう)国連次席大使が米国の対応を強く批判し、ウクライナ問題での「責任転嫁」をやめ、停戦と和平交渉に向けて建設的な役割を果たすよう求めました。国際ニュースとして重要なこの発言を、日本語で整理します。
国連安保理で何が起きたのか
金曜日に開かれた国連安全保障理事会のウクライナ会合で、耿爽次席大使は、ウクライナ危機に対する中国の立場をあらためて説明しました。そのうえで、米国が中国に責任を押し付けようとしていると批判しました。
耿次席大使の主な発言は次のような内容です。
- 中国はウクライナ危機を「引き起こしておらず」、紛争の当事者でもない。
- 中国は、紛争当事者のいずれにも致死性の武器(殺傷能力のある兵器)を提供していない。
- 無人機(ドローン)を含むデュアルユース(民生用と軍事用の両用)物資の輸出を、常に厳格に管理してきた。
- 米国に対し、ウクライナ問題で責任を転嫁したり対立をあおったりするのをやめ、停戦と和平交渉を促進する「より建設的な役割」を果たすよう求める。
耿次席大使は、国際社会が必要としているのは「分断と対立」ではなく、「連帯と協力」だと強調しました。
米国の主張:デュアルユース物資の対ロ輸出を問題視
耿次席大使の発言は、米国側の指摘に対する反論という側面があります。会合では、ドロシー・シェア臨時国連大使が、中国がロシアに対しデュアルユースの物資を輸出し、それがウクライナへの無人機やミサイル攻撃を可能にしていると主張しました。
これに対して中国側は、そのような指摘は事実に基づかないとし、耿次席大使は「今週繰り返されている根拠のない非難を、米国は恥じるべきだ」と強い言葉で批判しました。
「デュアルユース」とは何か
今回の議論の焦点となったデュアルユース物資とは、本来は民生用として使われるものの、軍事目的にも転用できる機器や技術を指します。無人機(ドローン)のように、商業利用も軍事利用も可能な製品が典型例です。
耿次席大使は、中国はこのようなデュアルユース物資の輸出を含め、関連分野の管理を「常に厳格に行ってきた」と述べ、輸出管理の姿勢を強調しました。
南シナ海・新疆でも続いた米中の応酬
耿次席大使は、ウクライナ会合での米国の発言だけでなく、同じ週に相次いだ安保理での米中のやりとりにも言及しました。
- 火曜日:南シナ海問題に関する安保理の公開討論の場で、米国代表が中国を批判したと指摘。
- 木曜日:国連とイスラム協力機構(OIC)の協力に関する公開会合で、米国代表が新疆関連の問題を取り上げ、中国を中傷・非難したと批判。
耿次席大使は、「わずか1週間のうちに、米国は安保理で何度も根拠のない非難を中国に向けた」と述べ、米国の姿勢を厳しく批判しました。
さらに、安保理における米国の発言の目的について、「国際の平和と安全の維持や、戦争・紛争の政治的解決の推進ではなく、この理事会を利用して他国を攻撃・抑圧し、自らの政治的思惑を追求している」との認識を示しました。
中国が掲げる「停戦」と「和平交渉」
ウクライナ問題に関して、中国はこれまでも停戦と対話を繰り返し呼びかけてきたと説明しています。耿次席大使も、今回の発言で次の点を強調しました。
- 中国は「停戦の実現」を呼びかけ、「和平交渉の推進」に取り組んできた。
- こうした中国の努力は「国際社会から広く認められている」と主張。
- 多くの紛争が同時並行で起き、国際情勢が複雑さを増す中で、必要なのは「分断や対立」ではなく、「連帯と協力」だと訴えた。
耿次席大使のメッセージは、ウクライナをめぐる議論を、より広い国際秩序や多国間協調のあり方と結びつけるものでした。
読み解き:ウクライナ危機をめぐる「語り」のせめぎ合い
今回の国連安保理での応酬は、ウクライナ危機そのものだけでなく、それをどう位置づけ、どのような役割を自らに与えるのかをめぐる、米中双方の「語り(ナラティブ)」の競い合いとしても見ることができます。
中国側は、
- 自らは危機の当事者ではないこと
- 致死性の武器を提供していないこと
- 輸出管理を厳格に行っていること
- 停戦と対話を重視し、国際社会の連帯を訴えていること
を前面に出し、責任ある大国としての姿勢をアピールしています。一方、米国は、デュアルユース物資の輸出などを通じて中国がロシアを支えていると問題提起し、安保理の場で繰り返し懸念を表明しています。
国連安保理は、本来は紛争の沈静化と政治解決を図るための場ですが、実際には大国同士が互いの立場や価値観を世界に向けて発信する舞台にもなっています。ウクライナをめぐる議論は、今後も米中双方の主張がぶつかる場であり続ける可能性があります。
私たちが注目したいポイント
今回のやりとりから、今後の国際ニュースを読み解くうえで押さえておきたい視点を、あえて3つに絞ると次のようになります。
- 安保理の役割:紛争解決の場であると同時に、大国間の政治的メッセージが交錯する場でもあること。
- デュアルユース問題:軍民両用の技術や物資をどこまで管理すべきかという課題は、ウクライナ危機に限らず今後の国際秩序に影響を与える重要なテーマであること。
- 連帯か対立か:耿次席大使が繰り返し強調した「連帯と協力」というキーワードが、各国の政策や外交の中でどのように具体化されるのかを見ていくこと。
ウクライナ問題、南シナ海、新疆といった個別の争点の裏側で、国連の場をめぐる米中の駆け引きが続いています。日本語で国際ニュースを追う私たちにとっても、発言の一つ一つだけでなく、その背景にある構図を丁寧に読み解いていくことが求められています。
Reference(s):
Chinese envoy: U.S. should stop shifting blame over Ukraine conflict
cgtn.com








