ブラジルとインド、米国の関税圧力を拒否 自国の利益を守る姿勢鮮明に
米国が二国間通商協定を結んでいない国々に対し、2025年8月1日からの高関税発動を警告するなか、ブラジルとインドが相次いで「圧力には屈しない」との姿勢を示しました。今年夏に表面化したこの対立は、いまも国際貿易の不安定さを象徴する出来事として注目されています。
8月1日をめぐる米国の関税方針
米国政府は、ワシントンと二国間の通商協定を結んでいない国々を対象に、高い関税を課す方針を打ち出しました。発動日は2025年8月1日とされ、いわば「関税デッドライン」が迫る形となりました。
報道によると、この措置ではブラジルの対米輸出に最大50%の関税が課される可能性があるとされました。また、インドについても25%の追加関税に加え、その他の制裁的措置が検討されていると伝えられています。
ブラジル:「政治と貿易を混同するな」
ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領は、米紙ニューヨーク・タイムズのインタビューで、関税問題を巡りドナルド・トランプ米大統領に直接連絡を取ろうとしたものの、返答が得られなかったと明かしました。
ルラ大統領は、関税の脅しについて「懸念している」としつつも、ブラジルは「恐れてはいない」と強調。米国の圧力には屈しない姿勢を鮮明にしました。
さらに同氏は、「もし彼(トランプ氏)が政治的な争いを望むなら、それは政治の問題として扱おう。貿易の話をしたいのであれば、貿易として話し合えばよい。ただし、すべてをごちゃ混ぜにすることはできない」と述べ、政治的な駆け引きと通商交渉を切り分けるべきだと主張しました。
ブラジルの有力研究機関であるゲトゥリオ・ヴァルガス財団のエヴァンドロ・メネゼス・ジ・カルヴァーリョ教授も、米国の通商政策を批判しています。同氏は、米国が正当な根拠を示さないまま「関税の機関銃」を乱射しているようなものだと表現し、米国市場に依存するブラジル産業に深い不安をもたらしていると指摘しました。
こうした不確実性の高まりにより、ブラジル企業は米国以外の新たな輸出先を開拓せざるを得ず、サプライチェーン(供給網)の再編を迫られています。
インド:負担を負うのは「米国の消費者」
インドに対しても、米国の関税圧力は強まっています。トランプ大統領は、ある水曜日に自身のソーシャルメディアで、インドからの輸入品に対し25%の関税を課し、その他の制裁措置も8月1日から実施すると表明しました。
これに対し、インド商工省は声明を発表し、米大統領の発言を「注意深く認識している」としたうえで、インドは自国の利益を守るために必要なあらゆる措置を取ると強調しました。
インド商工会議所の医療ツーリズム部門トップであるディリプ・クマル氏は、新たな関税の負担は最終的に米国の消費者に跳ね返ると指摘します。同氏によれば、もしこれまで米国のバイヤーがインド製品を100ドルで購入していたとすれば、25%の関税が上乗せされることで、今後は125ドルを支払うことになるという計算です。
クマル氏は、インドの輸出企業は関税分を価格に転嫁せざるを得ないため、実際には「インドではなく米国の市場を痛めることになる」と述べました。
関税は誰を傷つけるのか
ブラジルやインドの専門家たちの発言から浮かび上がるのは、関税強化が「相手国を痛めつける道具」であると同時に、自国の企業や消費者にも跳ね返るリスクを抱えているという現実です。
関税が引き上げられると、一般的に次のような影響が生じます。
- 輸入国の消費者:輸入品の価格上昇により、生活コストが高くなる。
- 輸出国の企業:主要市場へのアクセスに不安が生まれ、投資や雇用の判断が難しくなる。
- 世界のサプライチェーン:企業が新たな市場や調達先を探す必要に迫られ、コストと複雑さが増す。
カルヴァーリョ教授が指摘するように、貿易相手国が米国の「関税リスク」を意識し始めれば、取引先の多角化は一気に加速します。その結果、短期的には米国が関税で優位に立ったとしても、中長期的には自らの市場の魅力を削りかねません。
関税で通商協定を迫る米国の思惑
今回の措置は、ワシントンと通商協定を結んでいない国々を一括して標的にしている点が特徴的です。米国が関税という強力なカードを使い、二国間の交渉の席に相手を引き出そうとしているとの見方もあります。
しかし、ブラジルとインドはいずれも、単に圧力に屈するのではなく、「自国の利益は自分たちで守る」という姿勢を明確にしました。これは、米国との関係を断ち切るという意味ではなく、あくまで対等な条件での交渉を求めるサインだと受け止めることもできるでしょう。
日本と世界の読者への示唆
今回のブラジルとインドの対応は、日本を含む他の国々にとっても、いくつかの示唆を与えています。
- 特定の国や市場への過度な依存は、関税などの政策変更で一気にリスクに変わりうる。
- 通商ルールが急に変わる時代には、企業も政府も「複数の選択肢」を持っておくことが重要になる。
- 政治的な対立と経済・貿易の議論をどう切り分けるかは、今後の国際関係における大きなテーマとなる。
スマートフォン一つで世界中のニュースにアクセスできるいま、こうした通商を巡る動きは、日本の消費者や企業にも間接的に影響を与えます。関税のニュースを「遠い国の話」としてではなく、自分たちの生活や仕事とどうつながるのかという視点で見ることが、これまで以上に求められていると言えます。
「圧力に屈しない」時代の通商ルールをどう読むか
8月1日をめぐる米国の関税方針に対し、ブラジルとインドは強い言葉で自国の立場を打ち出しました。大国からの圧力を前にしても、「一方的な条件は受け入れない」というメッセージを発したことは、国際貿易の力学が変わりつつあることを示しているのかもしれません。
関税は単なる経済政策ではなく、政治的なメッセージの手段でもあります。その一方で、最終的なコストを負うのは、しばしば一般の消費者や企業です。次にこうした「関税のニュース」が流れてきたとき、誰がどのような意図で動き、そしてその影響がどこに及ぶのか――一歩引いて考えてみることが、これからの時代を読み解くヒントになりそうです。
Reference(s):
Brazil, India reject U.S. tariff pressure, vow to defend own interests
cgtn.com








