米国の高関税にインドが強く反発 農業とロシア産原油が焦点に
米国がインド産品に最大50%の高関税を課したことを受け、インド政府が強く反発し、トランプ政権との貿易摩擦が一段と激しくなっています。本記事では、この国際ニュースのポイントと背景、そして今後の焦点を整理します。
ことし8月7日に発動された米国の高関税
ことし8月7日、米国の最新の追加関税が発効し、複数の貿易相手国に対して関税率が一気に引き上げられました。関税は10〜50%の幅で設定され、その中でもインドとブラジルには最大の50%が適用されています。
米国はすでにインドに対して25%の関税を課していましたが、トランプ大統領は、インドがロシア産原油を大量に購入し続けていることを理由に、さらに25%を「制裁」として上乗せしました。結果として、インド産品に対する関税は合計で50%に達しています。
インド政府は「不公正、正当化できない」と強く批判
インド外務省は、こうした追加関税について「不公正で、正当化できず、合理性を欠く」と強く非難し、米国が他のロシア産原油の輸入国には同様の措置を取っていないとして「二重基準」だと批判しています。
インド側は、ロシア産原油をめぐる措置が特定の国を選んで狙い撃ちにしていると受け止めており、関係悪化も辞さない構えで米国に異議を唱えている状況です。
モディ首相「農民の利益は絶対に守る」
こうした中、モディ首相は演説で「農民の利益は我々の最優先事項です。インドは農民や畜産業者、漁業者の利益を決して損なうことはありません。私自身が大きな代償を払うことになっても、その覚悟はできています」と述べ、対米圧力に屈しない姿勢を明確にしました。
インドでは、農業や畜産、漁業に携わる人々は数億人規模にのぼり、選挙にも大きな影響力を持つとされています。そのため、農業分野の市場開放は、政権にとって極めてデリケートなテーマです。モディ首相の発言は、国内の農業関係者に向けた強いメッセージであると同時に、米国側に対しても「譲れない一線」があることを示したものです。
米国が求める市場開放と遺伝子組み換え作物
今回の関税問題の背景には、貿易をめぐる双方の思惑もあります。報道によると、ワシントンはインドに対し、米国産の遺伝子組み換え作物の受け入れや、米国産の農産品・乳製品の無関税での市場アクセスを求めているとされています。
遺伝子組み換え作物とは、遺伝子を人工的に組み換えることで病害虫に強くしたり収量を増やしたりした作物のことです。世界の一部では広く栽培されていますが、安全性や環境への影響をめぐって議論も続いています。
モディ政権は、こうした遺伝子組み換え製品の輸入について「妥協できない問題」と位置づけ、受け入れを明確に拒否してきました。広大な農村部を抱えるインドにとって、農業政策は単なる経済問題ではなく、社会の安定や地域コミュニティのあり方にも直結するテーマだからです。
国内野党からは「対抗関税」を求める声
インド国内では、米国の高関税に対抗するため、自国も報復関税を検討すべきだという声が出始めています。野党・国民会議派の議員、シャシ・タルール氏は「インドも米国製品に50%の関税を課すべきだ」と主張しました。
タルール氏は記者団に対し「彼らは本当に我々との関係を大切にしているのか問いただす必要がある。もしインドが彼らにとって重要でないのなら、我々も同じように考えるべきだ」と述べ、対米姿勢を見直すべきだと訴えました。
こうした発言は、インド国内の不満の強さを映し出すものであり、政府が今後どこまで強硬姿勢を取るのか、政治的なプレッシャーが高まっていることを示しています。
ロシア産原油と貿易摩擦が絡み合う構図
今回の米印の貿易摩擦は、単なる関税引き上げにとどまらず、エネルギー安全保障と外交関係が複雑に絡み合った問題となっています。インドは需要が急増するエネルギー大国であり、ロシア産原油は重要な供給源の一つとなっています。
米国側はロシア産原油の取引をめぐり圧力を強める一方で、インド側は自国のエネルギー確保と経済成長を優先せざるをえない立場にあります。その対立が「追加関税」という形で表面化しているとも言えます。
これからの焦点はどこか
今回の国際ニュースを踏まえて、今後注目すべきポイントを整理してみます。
- 外交交渉と法的な対応:インドは追加関税に対し、「不公正」との立場から強い異議を唱えています。今後、二国間協議の行方や、国際的な紛争解決の枠組みをどう活用していくかが焦点になります。
- 報復関税の有無:国内で高まる対抗関税論に対し、モディ政権がどのように応えるのかは、米印関係の緊張度を左右します。実際に報復措置に踏み切れば、貿易摩擦がさらなるエスカレーションを迎える可能性があります。
- 農業・エネルギー政策への影響:遺伝子組み換え作物や農産品市場の開放をめぐる議論は、インド国内の農業政策の方向性とも密接につながっています。また、ロシア産原油をめぐる判断は、インドのエネルギー政策や物価にも影響しうるテーマです。
「読みやすいけれど考えさせられる」視点
米国の高関税にインドがどう向き合うのかは、単なる二国間の貿易問題ではなく、「誰の利益を優先するのか」という問いも含んでいます。農民や漁業者といった生活者の声をどう守るのか、エネルギーや安全保障と経済制裁をどうバランスさせるのか——。
今回の米印の貿易摩擦は、グローバル化の時代における「公正さ」とは何かを、改めて私たちに問いかけています。ニュースを追いながら、自分ならどこに優先順位を置くか、一度立ち止まって考えてみる価値がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com








