EU首脳「ウクライナの将来はウクライナ人が決める」 米露会談前に発信
アラスカで予定されるトランプ米大統領とプーチン露大統領の首脳会談を前に、欧州連合(EU)の首脳らが「ウクライナの将来を決めるのはウクライナ人だ」とする共同声明を発表しました。ウクライナ東部ではスームィ州で小さな反転攻勢も伝えられており、外交と戦場の両方で重要な局面を迎えています。
EU首脳が示した「ウクライナの自己決定」
EU加盟国(ハンガリーを除く)の首脳は共同声明で、ウクライナの人々が自らの将来を選ぶ自由を持つべきだと強調しました。これは、これまでウクライナへの武器供与で主導的な役割を果たしてきた米国が、ロシアとの首脳会談でどのような和平案を描くのかを注視するメッセージでもあります。
声明の主なポイントは次の通りです。
- 「意味のある交渉」は、停戦もしくは戦闘の激しさが低下した状況でのみ成立し得る
- 外交的な解決は、ウクライナと欧州の「死活的な安全保障上の利益」を守るものでなければならない
- そのためにEU諸国は、将来の安全保障の枠組みや保証への一層の貢献を行う用意がある
EUが強調するのは、「停戦のための停戦」ではなく、ウクライナが自らを防衛できる状態を維持したうえでの持続的な和平です。声明は「自らを効果的に防衛できるウクライナは、あらゆる将来の安全保障上の保証の不可欠な一部だ」とも述べ、軍事支援と外交努力を結び付けています。
トランプ・プーチン会談への不安
こうしたメッセージの背景には、アラスカで予定される米露首脳会談への警戒感があります。トランプ氏は以前にロシアに対して強い姿勢を打ち出し、ウクライナ向けの米国製兵器の追加供与に合意したほか、ロシア産原油の購入者に対して高関税を課すと警告したこともあります(この最後通告はすでに失効しています)。
それでも、2021年以来となる米露首脳会談が米国で開かれる見通しとなったことで、EU内では「欧州の安全保障よりも、米国の狭い国益や対ロシアのビジネス上の利害が優先されるのではないか」という不安が再燃しています。
とくに波紋を広げているのが、トランプ氏が和平案について「ロシアとウクライナ双方の利益になるよう、ある程度の領土の交換を含む」と語った点です。検討対象とされる地域のほぼすべては、これまでウクライナの領土と見なされてきたとされ、ウクライナや欧州の首都では、自国の頭越しに合意がまとめられるのではないかという懸念が強まっています。
このため、EUの首脳とウクライナのゼレンスキー大統領は、米露首脳会談に先立ってトランプ氏と協議し、「ウクライナの将来を決めるのはウクライナ人であるべきだ」と改めて伝える構えです。
EU内の異論:ハンガリーのオルバン首相
今回の共同声明には、EU加盟国のうちハンガリーのみが加わりませんでした。ロシアのプーチン大統領に比較的近い立場とされるオルバン・ハンガリー首相は、X(旧ツイッター)への投稿で、他のEU首脳の対応を皮肉っています。
オルバン氏は、ウクライナ和平をめぐる議論からEUが事実上「蚊帳の外」に置かれていること自体が問題だと指摘したうえで、「ベンチから指示を飛ばす」ような声明を出すべきではないと主張しました。そのうえで、米露首脳会談を手本に、EUとロシアによる首脳会談を主導することこそがEUにとって最も賢明だと訴えています。
このやり取りは、ウクライナ支援と対ロシア政策をめぐって、EU内部に温度差が存在することを改めて浮き彫りにしました。一方で、共同声明に名を連ねた多くの加盟国は、ウクライナと十分に協議しないままの和平案には慎重であるべきだという点で足並みをそろえています。
前線の現実:スームィ州での小さな前進
外交の舞台裏で駆け引きが続くなか、ウクライナ東部の前線でも動きが出ています。ウクライナ軍は、東部スームィ州で2つの村を奪還したと発表しました。これは、南東部でロシア軍がじわじわと前進を続けてきた、この1年以上にわたる状況の中で、久しぶりの小さな反転攻勢とされています。
ウクライナ軍トップのオレクサンドル・シルスキー総司令官は、ゼレンスキー大統領や他の指揮官らとの会合後にフェイスブックへ投稿し、「厳しい状況だが、われわれは敵を押しとどめている」と現状を説明しました。
ロシアは2022年2月にウクライナへの、いわゆる「特別軍事作戦」を開始して以降、今年になってスームィ州で新たな攻勢に出ています。プーチン大統領が同州に「緩衝地帯」を設ける必要があると述べたことを受けた動きとされ、ロシア軍は全長1,000キロに及ぶ前線の他の区間でも西へ向けて前進を続けており、とくにドネツク州では村落の掌握がほぼ日常的に報告されています。
ウクライナの地図プロジェクト「Deep State」によると、ロシア軍はスームィ州で約200平方キロ、ウクライナ全土では2014年からロシアの支配下にあるクリミアを含め、約11万4,000平方キロを掌握しているとされています。
これからの焦点
EU首脳の声明は、ウクライナの主権と欧州の安全保障が切り離せないという認識を改めて示すものです。同時に、ウクライナをめぐる和平交渉が当事者不在のまま進むことへの強い警戒もにじみます。
今後の焦点は、トランプ・プーチン両氏の会談がどのような結果をもたらすのか、そしてそこにウクライナと欧州の声がどこまで反映されるのかです。戦場ではスームィ州やドネツク州などでの攻防が続いており、前線の力関係と外交の駆け引きが、これからの和平プロセスの現実味を左右していくことになりそうです。
Reference(s):
EU leaders say Ukraine should have freedom to decide its future
cgtn.com








