ハンガリー研究、うつ病治療の鍵となる脳細胞を発見 video poster
ネガティブな感情を和らげるかもしれない新しい脳細胞
2025年、ハンガリーの研究チームが、うつ病や不安障害などの精神疾患の治療法を変えるかもしれない新しいタイプの脳細胞を報告しました。ネガティブな感情を調整する役割を持つとみられるこの細胞は、今後のターゲット型治療の鍵になると期待されています。
ハンガリー研究チームが見つけた新しい脳細胞
この発見を行ったのは、ハンガリーのHUN-REN実験医学研究所に所属するガーボル・ニリ(Gábor Nyiri)氏らのチームです。もともとは脳幹という、脳の中でも生命維持に深く関わる領域を調べている最中に、偶然この細胞群を見つけたとされています。
研究チームが注目したのは、脳幹の中に広がる比較的大きな緑色の領域です。この領域に存在する神経細胞が、感情処理に関わる別の脳部位とつながっていることが分かり、詳細な解析が進められました。
鍵を握るのは外側手綱核という感情のハブ
今回見つかった脳幹の神経細胞は、外側手綱核(がいそくしゅづいかく、lateral habenula)と呼ばれる部位の活動に影響していると考えられています。外側手綱核は、痛み、拒絶、失敗といったネガティブな経験を処理する中継地点のような役割を持つ場所です。
人が強い落ち込みや絶望感にとらわれているとき、この外側手綱核が過剰に働いていることが、さまざまな研究で示されています。ハンガリーのチームによると、新たに見つかった脳幹の細胞は、この外側手綱核の活動を静める方向に働きかけているようだと報告されています。
うつ病・PTSD・不安障害…多くの人に関わる発見
ニリ氏は、恐怖症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、大うつ病、不安障害といった病気について、生涯のうち一度は人口の25〜30%がこれらのいずれかを経験すると説明しています。
4人に1人から3人に1人が、強い不安や落ち込みに悩まされる可能性がある計算です。今回の発見は、こうした精神疾患の背景にある脳のメカニズムを、より細かいレベルで理解するための重要な手がかりになります。
どんな新しい治療法につながるのか
研究チームは、今回の脳細胞が将来の治療法開発の具体的な標的になりうるとみています。考えられている方向性としては、次のようなものがあります。
- 外側手綱核そのものではなく、その活動を調整する脳幹の細胞を狙う
- ネガティブな感情を生み出す回路の一部だけに、よりピンポイントで作用させる
- その結果、副作用を抑えた、個々の症状に合わせた治療法につながる可能性がある
研究者たちは、将来、うつ病やPTSD、不安障害などの治療薬や脳刺激療法が、この細胞群を標的とする形で設計されるようになることを視野に入れています。
偶然の発見が大きなブレークスルーになる理由
今回の神経細胞は、そもそも別の目的で脳幹を調べている途中に、偶然見つかったものです。基礎研究の現場では、このような予想外の発見から、のちに大きなブレークスルーにつながるケースが少なくありません。
脳は、いまだに分かっていないことの方が多い臓器です。新しい細胞群や神経回路が見つかるたびに、感情や記憶、行動がどのように生み出されるのかという問いに、少しずつ具体的な答えが加わっていきます。
私たちの日常にとっての意味
今回の発見が、すぐに新薬や治療法として病院に並ぶわけではありませんが、方向性ははっきりしています。ネガティブな感情をただゼロにするのではなく、行き過ぎた状態を脳の仕組みから整えるという発想です。
仕事、学校、家庭など、どの場面でもメンタルヘルスの問題が身近なテーマになりつつある今、ハンガリー発のこの研究は、世界中の研究者や医療現場がめざす、より精密でやさしい治療法の流れの一部といえます。
今後、この脳細胞をめぐる研究が進むことで、うつ病や不安障害に苦しむ人たちの選択肢が広がることが期待されます。国際ニュースとしての注目だけでなく、私たち自身の将来の治療のかたちを考えるきっかけにもなりそうです。
Reference(s):
Hungarian researchers target brain cells to help treat depression
cgtn.com







