南アフリカ、米国の人権報告書を「深刻な欠陥」と非難
南アフリカ政府が、米国が公表した2024年の人権状況に関する報告書を「不正確で深刻な欠陥がある」と強く批判しました。国際ニュースとして注目されるこの対立は、人権をどう評価するかという根本的な問いを投げかけています。
米国の「South Africa 2024 Human Rights Report」とは
問題となっているのは、米国政府が水曜日に公表した全21ページの「South Africa 2024 Human Rights Report」です。報告書は「南アフリカの人権状況は年内に大きく悪化した」と主張し、その背景として次のような点を挙げています。
- アフリカーナーの土地が収用されたこと
- 人種的マイノリティに対する虐待があったとする指摘
- とりわけクワズール・ナタール州などで、警察との銃撃戦により容疑者が死亡した事例を「超法規的殺害(extrajudicial killings)」と位置づけていること
こうした評価に対し、南アフリカの国際関係協力省(DIRCO)は、「わが国の憲法に基づく民主主義の現実を反映していない」として、強く反発しています。
南アフリカ側の主な反論ポイント
DIRCOは声明の中で、報告書が「文脈を無視した情報」や「すでに信頼性が否定された説明」に依拠していると指摘し、具体的な事例ごとに反論しています。
農場労働者死亡事件の扱い
報告書は、農場労働者が死亡した一件を、南アフリカでの「超法規的殺害」の代表例として取り上げています。しかしDIRCOによれば、この事件はすでに独立した司法のもとで審理が進んでおり、そのプロセスを無視して「超法規的殺害」と断定的に描くのは誤解を招くとしています。
DIRCOは、このような取り上げ方は南アフリカの司法制度の独立性と手続きの存在を軽視するものであり、「事実の根本的なゆがめ方だ」と強い表現で批判しました。
警察による武力行使と「超法規的殺害」
報告書はまた、クワズール・ナタール州を中心に、犯罪容疑者が警察との銃撃戦で死亡した事例を挙げ、「超法規的殺害」として疑義を呈しています。
これに対してDIRCOは、こうした事案では、関係者が正式に裁判所に起訴されていると説明し、「時期尚早な評価であるだけでなく、事実の根本的な歪曲にあたる」と反論しました。
さらに、警察による武力行使に関する記述についても、南アフリカには民主主義を守るために設計された強力な監視・調査の仕組みが存在し、適正手続きが守られたか、武力行使が正当化されるかどうかを、専任機関が積極的に検証していると強調しています。
土地収用法と国連の評価のずれ
報告書は、アフリカーナーの土地収用を含む土地問題にも触れていますが、DIRCOは土地収用に関する法律、いわゆる収用法(Expropriation Act)について、米国側の評価は国連の見解と大きく異なると指摘しました。
南アフリカ側によれば、国連人権高等弁務官事務所は、この収用法を「人種的不均衡な土地所有を是正するための重要な一歩」と位置づけています。DIRCOはこの点を引き合いに出し、米国の報告書が南アフリカ社会が抱えてきた歴史的な土地所有の不平等と、それを是正するための国内プロセスを適切に理解していないと主張しています。
「誰が評価するのか」という人権をめぐる問い
今回の一件は、南アフリカの人権状況そのものだけでなく、「誰が」「どの視点から」人権を評価するのかという問題を浮かび上がらせています。米国の報告書は、南アフリカ国内の刑事司法や土地政策について厳しい評価を示しましたが、南アフリカ政府は、自国の憲法秩序や司法の独立性、民主主義を守るための制度設計が十分に考慮されていないと反発しました。
国際社会では、人権をめぐる報告書や評価が、外交関係や世論形成に大きな影響を与えることがあります。その一方で、今回のように評価の前提や参照する情報源をめぐって、受け止め方が大きく分かれるケースも少なくありません。
読者が押さえておきたいポイント
今回のニュースからは、次のような論点が見えてきます。
- 米国の「South Africa 2024 Human Rights Report」は、南アフリカの人権状況が悪化したと結論づけている
- 南アフリカの国際関係協力省(DIRCO)は、報告書が不正確で「深刻な欠陥」があり、自国の憲法に基づく民主主義の現実を反映していないと批判している
- 具体的には、農場労働者死亡事件や警察による武力行使、土地収用法などをめぐり、事実認定や評価の仕方に大きな溝がある
- 人権報告書を読み解く際には、その国の制度や歴史的文脈、そして評価する側の視点をどう意識するかが重要になる
南アフリカと米国の認識のずれは、今後も議論の対象となりそうです。読者としては、一つの報告書や声明だけで判断するのではなく、複数の視点や当事者の声を丁寧に見比べながら、自分なりの見方を育てていくことが求められているのかもしれません。
Reference(s):
South Africa slams U.S. human rights report as 'deeply flawed'
cgtn.com








