米露首脳会談を前に米欧とウクライナが結束 停戦と制裁の行方
8月15日にアラスカで予定されていたトランプ米大統領とプーチン露大統領の米露首脳会談を前に、米国・欧州、そしてウクライナがロシアへの対応とロシア・ウクライナ停戦をめぐって立場をすり合わせました。本記事では、この国際ニュースのポイントを日本語で整理します。
米欧・ウクライナ、ビデオ会議で事前調整
首脳会談の準備段階で、トランプ大統領はウクライナのゼレンスキー大統領に加え、複数の欧州各国の首脳、欧州連合(EU)、北大西洋条約機構(NATO)のトップらとビデオ会議を行いました。議題は、アラスカでの米露首脳会談に向けた共通方針づくりと、ロシア・ウクライナ間の停戦問題です。
会議では、交渉が順調に進んだ場合にゼレンスキー大統領も加えた三者会談を開く構想や、その開催地についても意見交換が行われたとされています。
トランプ大統領「停戦拒否なら非常に深刻な結果」
トランプ大統領はビデオ会議の場で、アラスカでの会談がうまく進めば早期に2回目の会談を設け、その場にはゼレンスキー大統領も招く考えを示しました。
一方で、ロシアが停戦案を拒否した場合には「非常に深刻な結果」が待っていると警告しました。米財務長官スコット・ベッセント氏も、交渉が行き詰まった場合にはロシアへの制裁を一段と強化し、欧州にもいわゆるセカンダリー制裁(第三国経由の取引などを対象とする制裁)への参加を呼びかける姿勢を示しています。
ゼレンスキー氏が示した「5つの原則」
ゼレンスキー大統領は、ベルリンで行われたメルツ独首相との共同記者会見で、欧州と米国の指導者たちがロシアとの対話に向けて合意した「5つの原則」があると説明しました。
発言内容から、その柱は次のように整理できます。
- 第一に、実効性のある停戦が必要であること。
- 第二に、ウクライナに対する「本当に信頼できる」安全保障の保証が不可欠であり、米国もその枠組みに関与すること。
- 第三に、ロシア・ウクライナ間の紛争の平和的解決には、ウクライナ自身が直接関与しなければならないこと。
- 第四に、ウクライナに関わる事柄は、ウクライナ抜きに決めてはならないという原則。
- 第五に、ウクライナの欧州連合やNATOへの将来的な道筋について、ロシアに事実上の拒否権を与えないこと。
ゼレンスキー大統領は、ロシアが停戦に応じない場合には、制裁をさらに強化すべきだとも訴えました。
欧州首脳が強調する「安全保障」と「ウクライナの声」
ビデオ会議後、欧州側の指導者たちは一様に、欧州とウクライナ双方の安全保障、そして停戦の緊急性を強調しました。
メルツ独首相は、欧州としてもアラスカでの米露首脳会談の成功を望むとしつつ、「欧州の安全保障とウクライナの利益が守られることが不可欠だ」と述べました。
フランスのマクロン大統領も、ウクライナの領土に関わるあらゆる議題はゼレンスキー大統領と協議しなければならないと強調し、トランプ大統領が三者会談の実現に動く考えを示したと明らかにしました。
欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、SNSへの投稿で「欧州、米国、NATOはウクライナをめぐる共通の立場を一段と強化した」と述べ、公正で持続可能な和平に向けて緊密に協力していくと表明しました。NATOのルッテ事務総長も、参加者が紛争終結へのコミットメントで一致したとし、「ボールは今やプーチン大統領の側にある」と記しました。
領土問題では双方譲らず
領土をめぐる立場では、モスクワとキーウの溝は依然として深いままです。
ゼレンスキー大統領は、ドンバス地域に関するウクライナの立場は変わっておらず、国家の領土一体性に関わるいかなる決定も、ウクライナ国民の意思と憲法を尊重しなければならないと改めて強調しました。大統領顧問のポドリャク氏も、ドネツクの地位をめぐる議論には米国・ロシア・ウクライナの三者による直接協議が必要だと述べています。
ロシア外務省情報・報道局のアレクセイ・ファデエフ次長は記者会見で、「ロシア連邦の領土構成は憲法に明記されている。それがすべてだ」と述べ、いわゆる「領土交換」がアラスカ会談で協議されるとの見方を退けました。ロシア代表団の目的は、あくまでロシアの国益によって決まると強調しています。
なぜゼレンスキー大統領はアラスカに招かれなかったのか
ホワイトハウスのカロライン・レヴィット報道官によると、アラスカでの米露首脳会談はプーチン大統領側から提案され、トランプ大統領が「戦争をどう終わらせることができるのかを、よりよく理解する」ために受け入れたと説明されています。
レヴィット報道官は、アラスカ会談には「この戦争に直接関わる当事者は一方しか参加しない」としたうえで、まずはロシア側の意図を見極める場だとの位置づけを示しました。そのうえで、ゼレンスキー大統領を含む三者会談は、その後のステップとして検討されている形です。
今回の動きから見える3つのポイント
今回の一連の動きから、ロシア・ウクライナをめぐる国際交渉の特徴がいくつか見えてきます。
- 停戦と安全保障はワンセットで議論されていること。 単なる停戦ではなく、ウクライナに対する長期的な安全保証がセットで議論されている点は、今後の枠組みづくりを左右します。
- 「当事者不在の取引」への懸念。 米露首脳会談が先行する一方で、欧米側が「ウクライナ抜きには決めない」と繰り返し強調しているのは、大国同士の取引でウクライナの声が置き去りにされることへの警戒の表れです。
- 制裁は依然として主要な圧力手段。 米国は追加制裁やセカンダリー制裁の可能性をちらつかせ、ロシアに停戦受け入れを促そうとしています。経済制裁がどこまで実効性を持つのかも、今後の焦点となります。
2025年12月時点でも、ロシア・ウクライナをめぐる情勢は国際秩序全体に大きな影響を与え続けています。アラスカでの米露首脳会談を前に交わされたこれらのやり取りは、各国がどのような「落としどころ」を探ろうとしているのかを読み解くうえで、今なお重要な手がかりと言えます。
Reference(s):
As Trump-Putin summit nears, U.S., Europe, Ukraine align on Russia
cgtn.com








