トランプ米大統領、ウクライナ和平で米軍の「航空支援」示唆 地上部隊は否定
米国のドナルド・トランプ大統領は、ロシアとウクライナの戦闘を終結させる和平案をめぐり、ウクライナ領内への米軍地上部隊の派遣は否定する一方で、米軍による航空支援を提供する可能性に言及しました。戦争終結に向けた道筋が不透明な中で、米国と欧州がどのような役割分担をするのかが焦点となっています。
地上部隊は「なし」、空からの支援は「あり得る」
トランプ大統領は米メディアのインタビューで、ウクライナに関する安全保障協議について「ヨーロッパ諸国は地上に人員を出す用意がある。米国は彼らを支援する用意がある。特に、おそらく……空からだ」と述べ、欧州が地上部隊を担い、米国が空から支える構図を示唆しました。
大統領は、ウクライナに米軍地上部隊を送る選択肢は排除したものの、航空支援の具体的な中身については明らかにしていません。現時点で想定されるのは、ミサイル防衛システムの提供や、戦闘機による飛行禁止空域(いわゆるノーフライゾーン)の設定などとみられています。
ホワイトハウスのカロライン・レヴィット報道官も、米国による航空支援は「あくまで一つの選択肢であり、可能性だ」と認めましたが、詳細には踏み込みませんでした。
和平模索の裏で続くロシアの大規模空爆
トランプ大統領がホワイトハウスでウクライナのゼレンスキー大統領に安全保障上の保証を約束した翌日、ロシア軍はウクライナに対し、ここ1か月余りで最大規模となる空爆を行いました。
ウクライナ空軍によると、ロシアは270機の無人機(ドローン)と10発のミサイルを発射。ウクライナ中部ポルタワ州ではエネルギー関連施設が攻撃を受け、大規模な火災が発生しました。同州にはウクライナ唯一の石油精製所があり、エネルギーインフラへの打撃が懸念されています。
ゼレンスキー大統領は今回のホワイトハウス会談について、「過去80年で欧州最悪の紛争」を終わらせるための「大きな前進」だと評価していますが、ロシア側は軍事的圧力を緩めておらず、和平への道のりはなお険しい状況です。
「本能がプロセスに勝る」トランプ流の交渉術
トランプ大統領はラジオ番組のインタビューで、自身の外交交渉スタイルについて「プロセスというより、おそらく本能の方が大きい」と語り、形式よりも直感を重視する姿勢を強調しました。
また、ロシアのプーチン大統領が本当に和平合意を望んでいるかどうかについて問われると、トランプ大統領は「結局のところ、プーチン大統領がどうするのかは、今後数週間で分かるだろう」と述べ、合意に至らない可能性も認めました。交渉の行方は、当事者であるロシア側の出方に大きく左右されるとの見方をにじませた形です。
トランプ・プーチン・ゼレンスキー三者会談の行方
ゼレンスキー大統領は、今回のホワイトハウスでの協議を、プーチン大統領とトランプ大統領を交えた三者会談への「大きな一歩」と位置づけています。2月に行われたトランプ大統領とのオーバルオフィス会談は「惨憺たる結果」と評されましたが、今回は一転して、トランプ大統領との関係が改善した印象を示しました。
ホワイトハウス関係者によると、トランプ大統領はハンガリーのオルバン首相との協議で、プーチン大統領とゼレンスキー大統領を招く首脳会談の開催地としてブダペスト案を協議したとされています。トルコのイスタンブールも、これまで両国代表団が協議を行ってきたことから候補に挙がっており、スイスもプーチン大統領を受け入れる用意があると表明しています。
トランプ大統領はラジオ番組で、プーチン・ゼレンスキー両氏の会談について「関係者は今、その段取りを進めている」と述べました。一方で、自身が会談に出席するかどうかについては、「今の時点では、私抜きで会う方が良いかもしれない。必要であれば行くつもりだ」と述べ、あえて一歩引いた立場を示しています。
欧米の「有志連合」が制裁と安全保障を協議
ウクライナを支援する各国は、いわゆる「有志連合(Coalition of the Willing)」形式で協議を行い、ロシアへの追加制裁や圧力強化の方策を話し合いました。同時に、ウクライナに対する「安全保障上の保証」をどのような中身にするかについても、実務レベルでの詰めが進められています。
有志連合の参加国は、今後数日のうちに米国側の担当チームと協議し、ウクライナ向けの安全保障措置を具体化していくことで合意しました。軍事支援の内容だけでなく、長期的な防衛協力の枠組みが議論される見通しです。
一方、北大西洋条約機構(NATO)の軍事トップも、ウクライナ情勢を協議する会合を今週開催する予定です。米軍制服組トップのダン・ケイン統合参謀本部議長はオンラインで会合に参加するとされています。ロシアのプーチン大統領はこれまでも、NATO部隊がウクライナに展開することは容認できないと繰り返し表明しており、NATOの関与の度合いは今後も敏感な争点となりそうです。
今回の発言が示すもの:リスクを抑えた関与か、介入拡大か
今回のトランプ大統領の発言は、少なくとも現時点では、米国がウクライナへの地上戦力の直接投入を避けつつ、欧州諸国やNATOと役割分担をしながら関与を続ける方針を示したものといえます。
航空支援にとどまるとすれば、米兵が地上戦に巻き込まれるリスクは抑えられる一方、飛行禁止空域の設定などは、ロシア軍との直接的な衝突を招きかねない高度な判断を要します。欧州が「地上」、米国が「空」を担う形が進めば、欧米の連携のあり方もこれまでとは違った姿になる可能性があります。
ゼレンスキー大統領が「大きな前進」と評価するように、和平に向けた政治日程は動き出しつつありますが、ロシアによる空爆が続く現実とのギャップは依然として大きいままです。トランプ大統領が語った「今後数週間」のあいだに、プーチン大統領がどのような選択をするのか。ウクライナ和平をめぐる駆け引きは、2025年12月現在も世界の注目を集め続けています。
Reference(s):
Trump says U.S. may provide air support to back a Ukraine peace deal
cgtn.com








