インドとロシア、モスクワ外相会談で貿易拡大へ 米国の高関税に揺れない関係
インドとロシアがモスクワで外相会談を行い、米国による高い追加関税が続く中でも、エネルギーを含む貿易関係を一段と強化していくことで一致しました。インドのロシア産原油輸入をめぐって欧米と対立が続く中、この動きは国際秩序とエネルギー市場の両方に影響を与えそうです。
モスクワで外相会談、貿易拡大で一致
2025年12月4日(木)、モスクワで行われたロシアとインドの外相会談には、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相とインドのスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相が出席しました。両外相は、二国間の貿易をさらに拡大し、とくにインドからロシアへの輸出を増やしていく方針を確認しました。
会談では、ドナルド・トランプ米大統領がインド製品に課した高い追加関税について、両国の関係にどこまで影響するかが注目されましたが、発言内容からは、少なくとも現時点では協力路線を変える意思はほとんど見えませんでした。
米国の高関税は何を狙っているのか
現在、インド製品の一部は、ロシア産原油の輸入拡大を理由に、米国から最大50%という非常に高い追加関税を課されています。これは、ワシントンがインドの対ロシア姿勢に圧力をかけるための強いカードとして使っている形です。
こうした関税強化は、インドにとって次のような重荷となり得ます。
- 米市場でのインド製品の価格競争力が低下する
- インド企業が輸出先の多様化を迫られる
- 米印関係に新たな摩擦を生む可能性がある
それでもインドは、エネルギー安全保障と価格の安さを理由に、ロシア産原油の調達を続けています。今回の会談内容からも、米国の圧力だけで対ロ関係を大きく見直す考えは薄いことがうかがえます。
欧米の批判とインドの「二重基準」批判
ロシア産原油をボイコットしている欧米諸国は、インドが安価なロシア産原油を大量に購入することで、モスクワのウクライナでの戦争を間接的に支えていると批判しています。
これに対しインド側は、自国の購入はあくまで商業ベースの取引だと主張。また、米国や欧州連合(EU)もロシアと相当規模の貿易を続けているとして、「二重基準ではないか」と反発しています。国益を最優先するインドの姿勢が、欧米の対ロ制裁の枠組みと必ずしも重ならないことが、今回あらためて浮き彫りになりました。
エネルギー協力はどこまで深まるのか
ラブロフ外相は共同記者会見で、「炭化水素(石油・ガス)分野で良い成果を上げており、ロシア産原油のインド市場への供給が進んでいる」と強調しました。そのうえで、ロシア極東や北極海の大陸棚といったロシア国内の資源開発プロジェクトに、インドが参加することへの期待を示しました。
これは、単なる原油の売り手と買い手という関係を超えて、上流(採掘・開発)から協力するパートナーシップへと踏み込む構想です。インドにとっては長期的なエネルギー確保につながり、ロシアにとっては安定した投資と需要を得られる可能性があります。
「最も安定した関係」の裏側にある課題
ジャイシャンカル外相は、第二次世界大戦以降、インドとロシアの関係は世界の主要国同士の中でも「最も安定した関係のひとつ」だと述べ、ソ連時代から続く伝統的な友好関係をあらためて強調しました。
一方で同外相は、インドからロシアへの輸出拡大を最大の課題に挙げました。インド外務省の発表によると、両国は二国間貿易を拡大する目標を再確認し、そのためにインドの輸出を増やす必要があるとしています。
ジャイシャンカル氏は、「貿易拡大のためには、非関税障壁や規制上の障害を迅速に解消することが不可欠だ」と指摘しました。具体的には、医薬品、農産品、繊維製品といった分野でインドからロシアへの輸出を伸ばすことで、現在の貿易の不均衡是正を図りたい考えです。ここで言う非関税障壁とは、関税以外の検査基準や許認可など、手続き上のハードルを指します。
これから注目したいポイント
今回のモスクワ会談は、米国の高関税と欧米の対ロ制裁という圧力の中でも、インドとロシアが関係維持・強化を選んだことを示しました。今後の国際ニュースを追う上で、次の点が焦点になりそうです。
- 米国の追加関税が、インド企業やインド経済にどこまで影響するのか
- インドが医薬品や農産品などの輸出を本当に増やし、貿易不均衡を是正できるのか
- ロシア極東や北極圏での共同エネルギー事業が、どの程度具体化していくのか
エネルギー、安保、経済制裁が複雑に絡み合う中で、インドとロシアの現実的な選択がどこまで続くのか。米国をはじめとする各国の対応も含め、引き続き注視が必要です。
Reference(s):
India, Russia agree to boost trade ties after FMs meet in Moscow
cgtn.com








