インドと米国、最大50%追加関税の攻防 交渉継続も「守るべき一線」
インドと米国、関税の応酬の中でも「交渉は継続」
インド製品に対し米国が最大50%の追加関税を科す方針を示すなか、インドのスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相は、インド・米国の貿易交渉は現在も続いていると説明しました。同時に、インドとして「守るべき一線」があると述べ、妥協できない国益をにじませました。
最大50%の追加関税、その中身
今回問題となっているのは、インドによるロシア産原油の購入拡大を理由に、米国がインド製品に段階的な追加関税を課していることです。
- インド製品には最大50%の追加関税がかかる可能性がある
- この税率は、ワシントンが他国に課してきた関税の中でも最も高い水準の一つ
- すでに25%分の関税は発効済み
- 残り25%分も、当時の発表では今年8月27日から発効するとされていました
世界第1位と第5位の経済規模を持つ米国とインドのあいだで、これほど高い関税がかかるとなれば、企業や消費者への影響は避けられません。
ロシア産原油を巡る「守るべきライン」
ジャイシャンカル外相は、インド・米国の貿易交渉は継続しているとしつつも、「インドが守らなければならないラインがある」と強調しました。その背景には、インドのロシア産原油購入を巡る攻防があります。
外相によれば、ロシア産原油の購入拡大は、追加関税の正式発表前の協議では主要な争点としては取り上げられていなかったといいます。インド側からみれば、「後出し」の形で制裁的な関税が打ち出された、という受け止めもにじみます。
中止された交渉団訪問と、新たな大使人事
当初、8月25〜29日には米通商交渉団がニューデリーを訪れ、関税問題を含む協議を行う予定でした。しかし、この訪問は取りやめとなり、追加関税の引き下げや発動延期に対する期待は一気にしぼみました。
訪問中止の直後、ドナルド・トランプ米大統領は、側近の一人である38歳のセルジオ・ゴア氏を、次期駐インド大使兼南・中央アジア担当特使に指名する意向を表明しました。高い関税と人事を同じタイミングで打ち出すことで、インドに対する交渉上の圧力と、地域戦略のテコ入れを同時に進める狙いがあるとの見方も出ています。
農業・酪農市場が最大の火種
インド・米国の貿易交渉は、今年の前半にも一度決裂しています。最大の争点となったのは、インドが広大な農業・酪農市場をどこまで開放するか、という問題でした。
インド側は、自国の農家や酪農業を保護するため、急激な市場開放には慎重な姿勢を崩していません。一方、米国側は、農産品や乳製品へのアクセス拡大を重要な関心事項としており、ここが「守るべき一線」と「開いてほしい分野」として真っ向からぶつかっている構図です。
成長率0.8ポイント押し下げのインパクト
民間調査会社キャピタル・エコノミクスのアナリストは、もし追加関税が予定通りすべて発動し、そのまま維持された場合、インドの経済成長率は今年と来年のそれぞれで0.8ポイント押し下げられると試算しています。
一見、小さく見える数字かもしれませんが、成長率が1ポイント近く削られれば、雇用や投資マインド、政府の財政にも波及します。特に、成長をテコに社会保障やインフラ整備を進めたいインドにとっては、看過できないインパクトです。
「異例」と評されるトランプ氏の外交スタイル
ジャイシャンカル外相は、トランプ大統領の一連の政策発表について「異例だ」と言及しました。
外相は、「これほど公然と外交を展開する米大統領はこれまでいなかった。世界とのビジネスの進め方という点で、従来とは一線を画している」とも述べ、X(旧ツイッター)などを通じてリアルタイムに政策を打ち出す現在の手法が、各国との調整を難しくしている側面を示唆しました。
これから何を注視すべきか
今回のインド・米国の関税問題は、単なる二国間の通商摩擦にとどまらず、エネルギー、安全保障、農業政策が絡み合う複雑な構図を映し出しています。今後を考えるうえで、少なくとも次の点が注目されます。
- インドが「守るべき一線」とするロシア産原油調達と農業保護を、どこまで維持できるのか
- 高関税がインド経済の成長と、企業の投資判断にどの程度影響するのか
- 新たな駐インド大使・特使の人事が、地域全体の対米関係にどんな変化をもたらすのか
世界やアジアの動きを見るうえで、インド・米国関係は今後も重要なチェックポイントであり続けます。日本にいる私たちにとっても、サプライチェーンやエネルギー価格を通じて無関係ではいられないテーマです。
Reference(s):
India says U.S. trade negotiations still ongoing as fresh tariffs loom
cgtn.com








