25カ国が対米郵便を停止 米国の新関税ルールが招く波紋
米国の新たな通関ルールをめぐる不透明感から、25カ国が対米郵便物の引き受けを停止しました。関税強化の動きが、国際郵便と世界の消費者にまで波紋を広げています。
25カ国が対米郵便を一時停止 背景に新通関ルールの不透明感
国連の専門機関である万国郵便連合(UPU)は、192の加盟国を代表する立場から、25カ国が米国向けの郵便物の発送を一時停止したと明らかにしました。理由は、米国で導入される新たな通関ルールの詳細が見通せないことにあります。
この新ルールは、ドナルド・トランプ米大統領が署名した大統領令に基づき、長年続いてきた「デミニミス」免税制度を2025年8月29日に終了させるものです。これまで800ドル未満であれば関税なしで米国に輸入できていた小口貨物も、課税対象となる可能性が高まっています。
UPUは、ワシントンと協議しながら加盟国への情報提供を進めており、目時政彦事務局長は米国務長官マルコ・ルビオ氏宛ての書簡で、新ルールの運用をめぐる懸念を伝えました。UPU側は「加盟国が影響に備えられるよう、可能な限りの措置を講じている」としています。
最初に打撃を受けるのは越境ECと中小企業
新ルールの影響について、北京外国語大学の王朔教授は、国境をまたぐ小口の郵便・荷物に依存する小規模EC(電子商取引)プラットフォームや中小企業(SME)が「最初に打撃を受ける」と指摘します。送料や通関コストの上昇に耐えられず、米国市場からの撤退や規模縮小を迫られるケースが増えるとみています。
王氏は「米国の中小企業でさえ圧迫から逃れられない」とも述べ、対米輸出企業だけでなく、米国内の企業も仕入れ価格や事務コストの増加に直面すると分析します。その結果として、企業はコストを価格に転嫁せざるを得ず、最終的な負担は消費者に及ぶ可能性が高いといいます。
ウォルマートやアディダスも値上げ 消費者が直接の被害者に
価格への影響はすでに表面化しています。一部のウォルマートの商品では値段が15%上がり、アディダスも秋のフットウェア(靴)コレクションについて22%の値上げを予定しているとされています。
王氏は「最終的に、これらの関税政策の直接の被害者は米国の消費者だ」と強調します。関税は表向きには海外企業を狙った措置に見えても、実際には国内で商品を購入する人々の生活費を押し上げるからです。
平均関税率は1934年以来の水準 家計と雇用への打撃
米国の輸入関税の平均水準は、いまや1934年以来で最も高い水準に達しています。アナリストの試算によれば、米国の世帯あたりの損失は年間およそ2,000ドルに上る可能性があり、とりわけ所得の低い労働者層への打撃が大きいとされています。
こうした政策は、表向きには「貿易不均衡を是正する」ためと説明されていますが、批判派はそのコストの多くが米国内の企業と消費者にのしかかっていると指摘します。輸入部品や原材料の価格が上がれば、国内メーカーも競争力を失いかねません。
王氏は具体例としてフォード・モーターを挙げます。鉄鋼輸入コストの上昇を受け、同社は従業員の福利厚生や雇用の削減を余儀なくされたとされます。保護を掲げたはずの関税が、かえって米国の雇用と産業を圧迫しているという見方です。
「国内政策」が世界を揺らす時代 私たちへの含意
今回の一連の動きは、一国の関税や税制の変更が、国際郵便や越境ECを通じて世界中の消費者や企業に波及する時代であることを改めて示しました。UPU加盟25カ国が郵便物の取り扱いを止めざるを得なかった背景には、ルールそのものだけでなく、その不透明さへの不安もあります。
アジアや日本の企業・利用者にとっても、これは他人事ではありません。国際郵便と小口貨物は、海外向けのネット通販や個人輸入を支えるライフラインです。大国の政策変更が突然その前提を揺るがす可能性がある以上、事業者も利用者も、通商ルールの動きにこれまで以上に敏感である必要がありそうです。
「誰を守るための関税なのか」。米国の新通関ルールをめぐる混乱は、その問いを改めて投げかけています。国際ニュースとしての動向を追うとともに、自分の暮らしやビジネスにどうつながるのか、一度立ち止まって考えてみるタイミングかもしれません。
Reference(s):
25 countries halt mail to U.S. over tax uncertainty: UN postal body
cgtn.com








