米CDCトップが就任1カ月足らずで解任 ワクチン政策巡り政権内対立
米疾病対策センター(CDC)のトップに就任してから1カ月足らずで、スーザン・モナレス所長が解任されました。ワクチン政策をめぐり、保健福祉長官ロバート・F・ケネディ・ジュニア氏との対立が表面化し、米国の公衆衛生と政治の関係が改めて問われています。
最短在任のCDCトップ、その解任劇
モナレス氏は今年7月31日にCDC所長に就任しました。しかし就任から1カ月もたたない水曜日、米保健福祉省(HHS)はX(旧ツイッター)への投稿で、モナレス氏がもはやCDCのディレクターではないと発表し、米国民への献身的な奉仕に感謝するとだけ述べました。理由についての説明はありませんでした。
この時点で、モナレス氏はCDC史上、在任期間が最も短いトップになったとされています。
ところが、HHSの発表から数時間後、モナレス氏の法務チームは声明を公表し、自身は辞任しておらず、解任もされていないと主張しました。
ケネディ長官への批判とワクチン政策の転換
モナレス氏の弁護士らは声明の中で、HHSを所管するケネディ長官が公衆衛生を政治的利益のために「武器化」していると非難しました。また、政府から保健当局者を排除することで、数百万人の米国民の命を危険にさらしたとも指摘しています。
報道によると、ケネディ長官は今年5月、新型コロナウイルスワクチンについて、妊婦と健康な子どもに対する連邦レベルの接種推奨を撤回しました。さらに6月には、CDCのワクチン専門家で構成される助言委員会のメンバー全員を解任し、自ら選んだ助言者に入れ替えたとされています。その中には、反ワクチン運動に関わってきた人物も含まれていると報じられています。
ホワイトハウスが「正式解任」を発表
モナレス氏側の声明が出た後、今度はホワイトハウスが動きました。ホワイトハウス報道官のクッシュ・デサイ氏は声明で、モナレス氏をCDCの職から解任したと発表しました。
デサイ氏によれば、モナレス氏はHHSの幹部に辞任の意向を伝えていたにもかかわらず、最終的に辞任を拒んだため、ホワイトハウスが解任に踏み切ったと説明しています。HHSによる「退任の発表」と、モナレス氏側の「辞めていない」との主張、その後のホワイトハウスによる正式解任が重なり、経緯は分かりにくい形となりました。
ワシントン・ポストが伝える「圧力」
米紙ワシントン・ポストは事情に詳しい関係者2人の話として、ケネディ長官や政権の弁護士らが数日にわたりモナレス氏に圧力をかけていたと報じています。焦点は、新型コロナワクチンの一部承認を撤回する政権の方針を支持するかどうかでした。
同紙によると、反ワクチン運動への長年の関与で知られるケネディ長官や他の当局者は、モナレス氏が政権のワクチン政策の変更にどこまで歩調を合わせる意思があるのかを問いただしたとされています。
CDC幹部の相次ぐ辞任と公衆衛生の「政治化」
また、モナレス氏の解任と同じ水曜日には、CDCの複数の上級幹部が辞任しました。米メディアによれば、これらの辞任は、新たなワクチン政策への不満や、誤情報とされる発信、公衆衛生の政治化への懸念と結びついていると伝えられています。
こうした一連の動きは、米国の感染症対策の司令塔であるCDCの内部で、大きなゆらぎが起きていることを示しています。科学的な評価に基づく専門家の助言と、政権の政策判断との距離感が、改めて問われています。
なぜ日本から見る価値があるニュースなのか
今回の解任劇は、米国の行政人事のニュースにとどまりません。感染症対策やワクチンの扱いが政治的な争点になるとき、科学的な議論や専門家の独立性をどう守るのかという課題が浮かび上がっています。
日本でも新型コロナやワクチンをめぐる議論では、科学的知見と政治判断、そしてSNS上の世論が複雑に絡み合いました。米国CDCで起きていることは、公衆衛生への信頼をどう維持するかという点で、日本社会にとっても無関係ではありません。
情報があふれる今、どの国でも共通して問われるポイントは次のようなものです。
- ワクチンや感染症対策の方針が、どのような科学的根拠と手続きに基づいて決められているのか
- 専門家や行政トップが、政治的な圧力からどの程度独立して判断できるのか
- SNSなどで広がる主張が、どこまで事実に基づき、誰の利益につながっているのか
米国で進む公衆衛生と政治のせめぎ合いは、今後のワクチン政策や感染症対策をめぐる国際的な議論にも影響を与える可能性があります。日本にいる私たちも、海外の動きを冷静に見つめながら、自分たちの社会でどのような仕組みと対話が必要なのかを考えていくことが求められています。
Reference(s):
U.S. disease control chief fired after less than a month in position
cgtn.com







