米国、アッバス議長の国連訪問を拒否 同盟国はパレスチナ国家承認へ
米国がパレスチナ指導者マフムード・アッバス議長の米国入国ビザを認めず、国連総会の首脳級会合への出席を阻む方針を示しました。パレスチナ国家承認を進めようとする動きが広がる中での決定で、欧州連合(EU)やアラブ・イスラム諸国から再考を求める声が相次いでいます。
米国がアッバス議長のビザを拒否
米国務省高官によると、米国はパレスチナ解放機構(PLO)とヨルダン川西岸のパレスチナ自治政府のメンバーに対し、入国ビザの新規発給を拒否し、既に発給済みのビザも取り消す方針だといいます。この措置の対象には、パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長を含む約80人が含まれるとされています。
アッバス議長は、ニューヨークの国連本部で開かれる年次の国連総会ハイレベル会合に出席する予定でした。さらに、同じタイミングで予定される首脳級会合にも参加し、そこでイギリス、フランス、オーストラリア、カナダといった米国の同盟国がパレスチナを国家として正式に承認する見通しだと伝えられていました。
この発表を受けて、アッバス議長の事務所は驚きを表明し、今回のビザ拒否は国連本部協定に反するものだと批判しています。
国連本部協定と米国の裁量
今回の判断をめぐって焦点となっているのが、1947年に結ばれた国連本部協定です。この協定は、国連本部が置かれている米国が、加盟国などの代表がニューヨークの国連本部にアクセスすることを基本的に認める義務を負うと定めています。
一方、ワシントンは、安全保障や過激主義、外交政策上の理由がある場合にはビザを拒否できるとの立場を示しており、今回の措置もその例外規定に基づくものだと説明しています。このため、ホスト国としての義務と、自国の安全保障や外交上の判断のどちらを優先させるのかという、根本的な問いがあらためて浮かび上がっています。
- 国連本部協定は、原則として各国代表の入国を認める枠組みを築いてきました。
- 米国は例外として、安全保障や外交政策上の理由によるビザ拒否が可能だと主張しています。
- パレスチナ側は、今回の判断が例外の範囲を逸脱し、協定違反に当たると見ています。
同盟国はパレスチナ国家承認へ
アッバス議長が参加を予定していたニューヨークでの首脳級会合では、イギリス、フランス、オーストラリア、カナダがパレスチナを国家として正式に承認する方針だとされています。いずれも米国と緊密な関係を持つ国であり、パレスチナ国家承認をめぐる動きが米国の従来のスタンスとずれ始めている姿も浮かび上がります。
米国がアッバス議長の訪問を認めない一方で、主要同盟国がパレスチナ承認に踏み出そうとしている構図は、パレスチナ問題をめぐる外交の力学が変化しつつあることを示しているとも言えます。
EUとアラブ・イスラム諸国が再考を要請
アッバス議長の報道官ナビル・アブ・ルデイナ氏は、米国に対し決定の再考を改めて求めました。欧州連合(EU)の外相会合もコペンハーゲンで開かれ、出席した各国外相は全会一致で、米国に対してパレスチナ高官へのビザ拒否決定を見直すよう求めています。
また、ガザ情勢をテーマに設置されたアラブ・イスラム合同臨時首脳会議の閣僚委員会も、米政権に対し今回の決定を再考し、撤回するよう呼びかけました。米国の措置は、中東だけでなく欧州を含む広い範囲で懸念を呼び起こしていることがうかがえます。
パレスチナ国家承認をめぐる現在地
国連人権高等弁務官事務所によれば、2024年5月28日時点で、パレスチナ国家は国連加盟国の大多数から承認されています。ただし、国連におけるパレスチナの地位は加盟国ではなく、オブザーバーとしての資格にとどまっています。
つまり、多くの国が二国間レベルではパレスチナを国家として扱っている一方で、国連という多国間の場では、パレスチナは依然として限定的な権利しか持たない立場に置かれています。今回のビザ問題や同盟国による国家承認の動きは、こうしたギャップをどう埋めていくのかという、より大きな議論の一部でもあります。
今回の動きが示す三つのポイント
- 米国は国連本部を抱えるホスト国としての役割と、自国の外交・安全保障上の判断との間で難しいバランスを取ろうとしています。
- イギリスやフランスなどの同盟国がパレスチナ国家承認に向かうことで、米国との間でアプローチの違いがより鮮明になる可能性があります。
- EUやアラブ・イスラム諸国が足並みをそろえて再考を求めたことで、今回のビザ問題は一地域の問題にとどまらず、国際社会全体のガバナンスやルールを問うテーマになりつつあります。
考えるための問い
- 国連本部を抱える国には、ビザ発給についてどこまでの裁量が認められるべきでしょうか。
- 各国によるパレスチナ国家承認の広がりは、今後の国連での議論や中東和平の行方にどのような影響を与えるでしょうか。
- ビザや入国管理を外交上の圧力として用いることについて、読者のみなさんはどう考えますか。
Reference(s):
U.S. bars Palestinian leader Abbas from UN as allies back statehood
cgtn.com








