上海協力機構(SCO)首脳会議 習近平主席が示す多国間主義の行方 video poster
地政学的な緊張と経済の不透明感が続くなか、中国の習近平国家主席が各国首脳を招き、上海協力機構(SCO)首脳会議を主催しています。巨大なユーラシア地域をカバーするSCOが、なぜ今「多国間主義」を掲げるのか。その背景と意味を、日本語で整理します。
上海協力機構(SCO)とは何か
上海協力機構(Shanghai Cooperation Organization, SCO)は、2001年に設立されたユーラシアの政治・経済・安全保障協力の枠組みです。設立から20年あまりの間に加盟が広がり、現在では26カ国が参加する世界最大の地域機構へと成長しました。
SCOは次のような性格を持つ組織です。
- ユーラシアを中心とした多国間の政治対話の場
- 経済協力や貿易拡大をめざすプラットフォーム
- 安全保障やテロ対策などを協議する枠組み
こうした広い射程を持つことから、SCOは加盟国同士の関係にとどまらず、世界のパワーバランスにも影響しうる存在となっています。
習近平国家主席が主催するSCO首脳会議の狙い
今回のSCO首脳会議は、地政学的な対立や世界経済の先行き不安が重なるタイミングで開かれています。その中で中国の習近平国家主席は、各国首脳をホストし、「多国間主義」の強化を掲げています。
会議の大きなテーマは、次のような点に集約されます。
- 一国主義ではなく、多国間の枠組みで課題に向き合う姿勢を示すこと
- ユーラシア地域における政治・経済・安全保障の協力を安定的に拡大すること
- 不透明な世界経済の中で、貿易と投資の流れをできるだけ途切れさせないこと
なぜ今「多国間主義」なのか
2025年の世界は、紛争リスクや経済の分断など、複数の不確実性を抱えています。その中でSCO首脳会議が「多国間主義」を前面に出すことには、いくつかの意味があります。
- 複雑な安全保障課題を、一国ではなく複数の国が協議する必要性の高まり
- サプライチェーン(供給網)の見直しが進む中で、地域ごとの経済連携を強める動き
- 国際機関の機能を補完し、対話の場を増やすことへの期待
SCOは、こうした流れの中で、ユーラシア地域における一つの選択肢として注目されています。
中国とSCO加盟国の貿易 急増する経済ネットワーク
多国間主義のメッセージを裏付けるように、ここ5年ほどで中国と他のSCO加盟国との貿易は大きく伸びています。SCOの枠組みの下で貿易と投資が拡大し、昨年にはその規模が5124億ドル(約51兆円規模)に達し、過去最高を記録しました。
この数字が意味するところは、単なる金額の大きさだけではありません。
- 中国とSCO加盟国の経済関係が、継続的に深化していること
- エネルギー、インフラ、製造業など多様な分野での連携が広がっている可能性
- グローバルな景気減速懸念の中でも、地域的な需要と供給の結び付きが強まっていること
こうした動きは、世界経済がブロック化しつつあると指摘される中で、ユーラシア地域の結び付きが一段と目立つ状況を示しています。
国際討論番組で交わされた多様な視点
国際討論番組「The Heat」では、このSCO首脳会議と多国間主義の意味をめぐり、各分野の専門家が議論を交わしました。参加したのは、次のような顔ぶれです。
- Zoon Ahmed Khan 氏:Center for China and Globalization の研究員(中国と世界の関係を分析する政策研究機関)
- Victor Gao 氏:蘇州大学(Soochow University)の教授
- Anton Fedyashin 氏:ロシア・欧州問題のアナリストで、アメリカン大学の歴史学教授
- Vijay Prashad 氏:Tricontinental: Institute for Social Research の所長
中国の対外政策、ロシアと欧州の関係、グローバルサウス(新興・発展途上国)の視点など、バックグラウンドの異なる専門家が集まることで、SCO首脳会議をめぐる議論は、多角的なものになりました。
番組での議論は、SCOを次のような角度から捉えるヒントを与えています。
- ユーラシア地域の安定と経済発展にとって、SCOという枠組みが果たしうる役割
- グローバルな多国間主義の再構築の中で、中国を含む加盟国がどのような位置を占めるのか
- 欧米中心ではない国際協力の形が、今後どのように発展しうるのか
日本の読者にとってSCO首脳会議はなぜ重要か
日本はSCOの加盟国ではありませんが、ユーラシアを横断するこの巨大な枠組みの動きは、日本の社会や経済とも無関係ではありません。特に次のような点で、SCO首脳会議の行方は注目に値します。
- エネルギーと資源:ユーラシアには豊富な資源を持つ国が多く、SCOを通じた資源協力は、世界のエネルギー市場に影響を与える可能性があります。
- 物流とサプライチェーン:大陸横断の物流ネットワークが強化されれば、日本企業にとっても新たなルートやビジネス機会が生まれるかもしれません。
- 安全保障環境:ユーラシア地域の安定は、東アジアの安全保障にも間接的な影響を与える可能性があります。
国際ニュースを日々追いかける日本の読者にとって、SCO首脳会議は「遠い地域の話」のように見えつつも、実はエネルギー価格や貿易、外交環境など、生活やビジネスにじわりと関わるテーマでもあります。
「読みやすいのに考えさせられる」ための視点
最後に、今回のSCO首脳会議と多国間主義をめぐる動きを考えるための問いを、いくつか挙げてみます。
- 多国間主義は、今のような緊張した国際環境の中で、どこまで機能しうるのか
- ユーラシア中心の枠組みが、既存の国際秩序とどのように共存・補完しうるのか
- 日本は、こうした地域協力の動きをどのように観察し、自国の外交や経済戦略に活かすべきか
習近平国家主席がホストする今回のSCO首脳会議は、中国とSCO加盟国だけのイベントではなく、国際秩序の変化を読み解く上での一つの「窓」としても位置付けられます。ニュースの見出しだけで終わらせず、その背後にある多国間主義の動きにも目を向けることで、世界の見え方は少し変わってくるかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com







