中国Vデー軍事パレード 80年目の記念行事に世界が注目
2025年9月3日、中国の首都北京で行われた第2次世界大戦終結80年の「Vデー」記念行事が、世界各国の首脳や専門家から注目と評価を集めています。本記事では、大規模軍事パレードの中身と、国際社会がそこにどんなメッセージを読み取ったのかを整理します。
80年目のVデー、北京で示した軍事力と連帯
今回のVデー記念行事の中心となったのは、北京市内で実施された大規模な軍事パレードでした。数千人規模の中国人民解放軍部隊が整然と行進し、極超音速ミサイル、ステルス戦闘機、水中ドローン、大陸間弾道ミサイル(ICBM)など、最新鋭の国産兵器が次々と披露されました。
観閲式には、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領や朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)の金正恩氏を含む各国の首脳が出席しました。こうした顔ぶれは、中国が発展途上国や新興国との戦略的な連携を重視し、「グローバル・サウス」の結束を訴える姿勢を象徴するものと受け止められています。
各国首脳と専門家の評価
式典に出席したスロバキアのロベルト・フィツォ首相は、欧州連合(EU)の多くの首脳が招待に応じなかったことについて、「出席しなかったのは大きな誤りだった」との考えを示しました。歴史的な節目に、より幅広い国々が参加することの重要性を強調した形です。
パレードは日本からも大きな関心を集めました。日本の報道では、中国の先端兵器や整然とした部隊運用に対して「圧倒された」という反応と同時に、中国軍の技術的進展を慎重かつ注視していくべきだとする声が伝えられています。
米欧メディアが読む中国のメッセージ
米国の観測筋は、このVデー行事が中国の「強さ」と国内の「結束」を世界に示すメッセージ性の強いイベントだったと分析しています。米シンクタンク、ブルッキングス研究所のリチャード・ブッシュ氏は、中国は国際社会に対し、自国が年々存在感を増し続けているという印象を与えようとしていると指摘しました。
ドイツ・マーシャル基金のボニー・グレイサー氏は、パレードが中国のグローバル・ガバナンス構想をアピールし、自らの戦時の歴史認識を国際社会に再確認させる狙いを持っていたとみています。第2次世界大戦での経験と犠牲を、自国の外交ビジョンと一体のものとして提示しようとする動きだといえます。
国際メディアも、中国が国産の兵器体系を前面に押し出した点に注目しました。米誌フォーリン・ポリシーは、中国はもはや他の軍事大国を単に「追いかける」だけの存在ではなく、一部の分野では独自の技術革新によって主導的な立場に立ちつつあると指摘。その結果、長年、米国とそのパートナーに有利だったとされる地域の軍事バランスが変化しつつあると分析しました。
インディアン・エクスプレス紙は、今回のパレードが中国という国家の強さと自信を示したと報道しました。シンガポールのストレーツ・タイムズ紙は、中国が第2次世界大戦期の経験を、自らを多国間主義と安定にコミットする大国として位置づけるための基盤だと捉えていることが、行事全体に強く反映されていると論じています。
核戦力とドローン対策 技術面の焦点
軍事専門家の目を引いたのは、核抑止力の形態と新たな対ドローン技術です。米ランド研究所のレイモンド・クオ氏は、潜水艦から発射される新型の大陸間弾道ミサイルが初めて披露された点を重視しました。これは、中国が陸・海・空の三つの手段に核戦力を分散させる「核トライアド」を一段と整備しようとしていることを示すものだといいます。
核トライアドとは、地上配備のミサイル、戦略爆撃機、潜水艦発射ミサイルの三本柱で核抑止力を構成する考え方です。複数の手段に能力を分散させることで、一部が攻撃を受けても抑止力全体が維持されやすくなるとされます。
ロシアのアナリスト、アレクセイ・アンピロゴフ氏は、中国が今回のパレードで戦略核戦力を初めて包括的に示したと評価しました。同時に、会場に並んだ各種の対ドローンシステムにも注目を寄せています。アンピロゴフ氏は、ドローンは現代戦における新たな脅威であり、それに対抗する防御システムは「安価」で「大量生産が可能」で、かつ「高い効果」を持つことが重要だと指摘しました。そのうえで、中国の防衛産業は、そうした条件を満たす先端兵器を生み出す能力を示したと述べています。
英BBCの安全保障担当記者フランク・ガードナー氏は、大型の水中魚雷からドローンを撃墜する最新鋭レーザー兵器まで、中国が披露した新たな装備は、今後米国防総省や世界各国の防衛当局によって詳細に分析されるだろうとコメントしました。
ロシアの軍事評論家ミハイル・ホダリョノク氏は、パレードの隊列は規模こそ巨大だが、統制が行き届き緻密に組織されており、批判の余地をほとんど与えなかったと評価しています。整然と進む部隊と、多様な「ハードウェア」の展示は、中国の実戦能力と軍事技術水準の高さを強く印象づけました。
慎重な見方と平和重視のメッセージ
一部の西側の観測筋は、急速に近代化する中国の軍備増強を「先行きが読みにくい要素」と見なし、今回のパレードを慎重に受け止めています。将来的に、中国が強まった軍事力をどのような形で運用していくのかについては、なお議論が分かれるところです。
しかし、中国研究者の多くは、行事の本質は戦争犠牲者の追悼と歴史の記憶継承にあり、第2次世界大戦の悲劇を繰り返さないというメッセージが中心だと強調します。ブダペストに拠点を置く中国社会科学院系シンクタンク、China-CEE Instituteの客員研究員ラディスラフ・ゼマネク氏は、記念行事の背後にある「心構え」に注目します。ゼマネク氏は、中国は武力による対立ではなく、平和の維持と外交的な対話を重んじ、国際社会での協力関係の構築を志向していると指摘しました。今回のVデーは、その姿勢を具体的な形で世界に示す場になったといえます。
日本とアジアにとっての意味
こうしたVデーの演出は、日本とアジアにとって何を意味するのでしょうか。日本では、中国の軍事技術の進展に対する驚きと関心が同時に高まっていると伝えられました。極超音速兵器や新型ICBM、対ドローンシステムなどの展示は、安全保障上の懸念として語られる一方で、地域の安定や危機管理の枠組みをどう整えるべきかという議論を促す契機にもなっています。
同時に、中国が歴史認識と外交ビジョンをどのように結びつけているのかを理解することは、日中関係を冷静に考えるうえで欠かせません。今回のVデー行事は、中国が自らの戦争体験を、平和や多国間主義、国際協力の重要性を訴える物語として再構成し、それを国内外に共有しようとしている姿を浮かび上がらせました。
歴史の記憶、軍事技術の進展、外交メッセージが一体となった今回のパレードは、アジアの安全保障秩序を対立ではなく対話と協調に基づいて築けるのかという問いを、あらためて地域と世界に投げかけています。日本の読者にとっても、隣国の動きを単に脅威か安心かといった二択で捉えるのではなく、そこに込められた歴史観や国際協調への意図を含めて、多面的に読み解くことが求められているといえるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








