ガザ市住民の8割が避難拒否 人道地区指定の中で揺れる選択
イスラエル軍がガザ南部ハンユニスに人道地区を新たに指定し、ガザ市の奪取を目指す地上作戦を拡大するなか、ガザ市の多くの住民は避難を選ばず、厳しい現実の中でとどまる決断をしています。
ガザ市で何が起きているのか
イスラエル軍は同じ土曜日、ガザ市での地上作戦の拡大とハマス拠点の制圧を背景に、ガザ南部ハンユニスに人道地区を指定したと発表しました。作戦名はギデオンの戦車II作戦とされ、この動きはガザ市に対する本格的な軍事行動が続いていることを示しています。
一方で、地元の活動家による推計では、ガザ市の住民の約8割が避難せず、依然として市内にとどまる選択をしているとされています。
避難しない理由 三つの証言
なぜ多くのガザ市住民が、人道地区への移動をためらっているのでしょうか。住民の証言からは、単なる勇気や反抗ではなく、生活の限界と選択肢の欠如が浮かび上がります。
- 38歳で4人の子どもを育てるサーメル・アブ・サムラさんは、南部の地域はすでに過密で、移動のための交通費やテントを用意する余裕もないと話します。人々は疲れ果て、飢えに直面しているといいます。
- ガザ市の教師ナセル・アル・アッタールさんは、過去に南部での避難生活を経験し、それが人生で最悪の経験だったと振り返ります。南部も安全とは言えず、とどまるのは英雄的だからではなく、他に選択肢がないからだと語ります。
- ウム・モハンマド・ジャーベルさんは、もはや命以外に失うものは残っていないとしつつ、避難は尊厳を失うことだと感じていると打ち明けます。そのため、危険を承知でガザ市にとどまる決意を示しています。
南部ハンユニスに設けられた人道地区
イスラエル軍は声明で、人道地区には主要な人道支援インフラが含まれ、食料やテント、医薬品や医療機器の供給を継続するための場所だと説明しています。
この人道地区の指定は、ガザ市での地上作戦拡大とハマス拠点の制圧を進める中で行われました。軍事作戦と人道支援を同時に進めるという構図の中で、住民は移動するかとどまるかという難しい判断を迫られています。
イスラエル社会の世論にも変化
ここ数週間で、イスラエル軍はガザ市やそのほかの地域での作戦を拡大し、その目的はハマスの排除にあると説明してきました。
しかし、ガザでの軍事作戦はイスラエル社会の一部で次第に支持を失っているとも伝えられています。世論調査では、多くのイスラエルの人々が、人質の解放を条件としたハマスとの恒久的な停戦交渉を政府に求めているとされています。
安全か尊厳か 住民が抱える三つのジレンマ
ガザ市の状況からは、次のようなジレンマが見えてきます。
- 安全と危険の間で揺れる選択 地上作戦が拡大する中で、市内にとどまることも、人道地区へ移動することも、それぞれに危険を伴います。
- 経済的な限界 交通費やテントを用意できないという声からは、避難そのものが現実的な選択肢になっていない人が多いことが分かります。
- 尊厳を守るかどうかの葛藤 避難生活は、家や仕事、地域社会から切り離されるだけでなく、尊厳を失う体験として語られています。そのため、危険を理解しつつも、あえてとどまる人も少なくありません。
これから注視したい点
人道地区の指定と地上作戦の拡大、そしてガザ市住民の避難拒否という三つの動きは、今後の情勢を占ううえで重要な要素になっています。また、ハマスの排除を掲げる軍事目標と、人質解放と恒久的停戦を求めるイスラエル国内の世論の間に生じているギャップも無視できません。
ガザ市の人々が置かれている現実は、単なる戦況の一断面ではなく、市民の安全と尊厳をどう守るのかという普遍的な問いを投げかけています。今後、ガザ市の住民の声とイスラエル社会の世論が、どのように政策や交渉の行方に反映されていくのかが、国際社会にとっても大きな関心事となりそうです。
Reference(s):
Gaza City residents refuse to flee amid Israeli military operations
cgtn.com








