フランス政局混迷:マクロン大統領、政府崩壊で5人目の首相探し
フランスのマクロン大統領、政府崩壊で「5人目の首相」探しへ
フランスのエマニュエル・マクロン大統領が、新たな首相選びを迫られています。財政引き締め案への反発を背景に、与野党の反対勢力が結束して中道右派のフランソワ・バイルー首相への不信任案を可決し、政権は事実上崩壊しました。
与野党が結束しバイルー首相を不信任
バイルー首相は、来年度予算に向けた歳出削減や増税など、いわゆる「緊縮」寄りの財政引き締め策を打ち出してきました。しかし、生活費高騰に不満を抱える有権者の間で反発が強まり、議会でも支持を失った形です。
今週月曜日の議会の信任投票では、不信任側が364票、政権側が194票と大差で否決され、首相は翌火曜日にマクロン大統領へ正式に辞表を提出する見通しです。
マクロン氏が直面する難題:分断された議会と次の首相
マクロン氏は就任から2年足らずで、すでに5人目となる首相を選ばざるを得ない状況に追い込まれました。エリゼ宮によると、数日以内に新首相を任命する方針ですが、その人選には明確なルールはなく、大統領の裁量に委ねられています。
候補として名前が挙がっているのが、現職のセバスチャン・ルコルニュ国防相です。その一方で、議会左派との対話を重視して中道左派から起用する案や、政党色の薄い「テクノクラート(専門官僚)」を据える案も取り沙汰されています。
新たな首相には、ねじれ・多党化が進んだ議会をまとめ、来年度予算を成立させるという「ほぼ不可能に近い」任務が待ち受けています。
左派は「今度は自分たちの番」 極右は解散総選挙を要求
今回の不信任成立で勢いづいているのが左派勢力です。社会党のオリヴィエ・フォール第一書記はフランス・アンテールのラジオ番組で、「今度は左派と環境政党の番だ。私たちは権力を取りにいかなければならない」と述べ、政権運営への参画を強く求めました。
一方、極右政党・国民連合は、改めて議会の解散総選挙か大統領選の前倒しを要求しています。マクロン氏は昨年、一度議会の解散・総選挙に踏み切りましたが、その結果、議会はかえって細かく分断され、与党は安定多数を失いました。大統領はこれまでのところ、さらなる解散には否定的な姿勢を崩していません。
「全部止めよう」抗議がSNSで拡散、9月18日スト構想も
政局の混乱は、街頭の動きとも連動しています。水曜日には「Let's Block Everything(全部止めよう)」と名付けられた反政府デモが全国各地で呼びかけられており、SNSを通じて急速に広がっています。特定の中心組織がないゆるやかなネットワーク型の抗議であるため、どの程度の規模になるのかは読みにくい状況です。
フランス中部クレルモン・フェランでは、月曜日の夜に市庁舎前で「バイルー首相とのお別れの一杯」と称する集まりが開かれました。61歳の参加者アラン・プティさんは、「首相交代が既定路線になった今こそ、その上にいる存在を変えなければならない。それがマクロン氏へのメッセージだ」と語り、政権そのものへの不満をにじませました。
同様の集まりは各地の市庁舎前でも開かれており、人々は水曜日の大規模抗議へ向けて準備を進めています。労働組合も、9月18日に全国的なストとデモを行う方針をすでに打ち出しており、反政府運動は短期決戦ではなく長期戦の様相を帯びつつあります。
市場の反応は限定的、次の焦点はフィッチの格付け判断
こうした政治の混乱にもかかわらず、火曜日のヨーロッパ市場の反応は比較的落ち着いたものとなっています。バイルー首相の退陣はすでに「織り込み済み」とみられ、株式や国債の動きは限定的です。
投資家にとって次の大きなイベントは、金曜日に予定される格付け会社フィッチによるフランス国債の格付け見直しです。財政赤字の削減に向けた道筋が見えない中で、政権交代がフランス財政への信認にどのような影響を与えるのか、世界の金融市場が注視しています。
日本からどう見るか:分断時代の「統治能力」
今回のフランスの政局は、分断が進んだ議会のもとで、どのように財政再建と社会の不満に向き合うのかという、先進国共通の課題を映し出しています。日本の読者にとっても、次の3点は今後の国際ニュースとして押さえておきたいポイントです。
- マクロン氏がどのような政治的立場の人物を新首相に選ぶのか
- 「全部止めよう」デモや9月18日スト構想など、街頭の抗議がどこまで広がるのか
- フィッチなど格付け会社がフランス財政をどう評価し、市場がどう反応するのか
フランス発のこの政局ドラマは、2025年の世界政治が直面する「統治の難しさ」を象徴する出来事と言えそうです。
Reference(s):
France's Macron seeks new prime minister after government's collapse
cgtn.com








