ノルウェー総選挙で労働党が続投 右派ポピュリストも歴史的躍進
ノルウェーで月曜日に行われた議会選挙の結果、少数与党だった労働党政権が2期目の続投を決めました。一方で、右派ポピュリスト政党が過去最高の議席を獲得し、欧州の政治潮流を考えるうえで示唆に富む結果となっています。
労働党が辛うじて多数確保 ストーレ首相は続投へ
開票率99%の時点で、現職のヨナス・ガール・ストーレ首相(65)が率いる労働党と、4つの小規模な左派・中道左派政党は合わせて87議席を獲得し、ノルウェー議会(全169議席)の過半数ラインである85議席を上回りました。これにより、労働党政権は2期目の続投が事実上確定しました。
とはいえ、ストーレ首相の立場は決して盤石ではありません。重要法案や予算案を通すには、今後も小政党の支持が不可欠で、実務的には5党に依存する難しい議会運営が続きます。2021年の前回選挙後、労働党は中道のセンターパーティーと連立を組んで政権に復帰しましたが、今年に入りEUのエネルギー政策をめぐる対立からセンターパーティーが連立離脱。労働党は単独での少数与党として舵取りをしてきました。
右派ポピュリスト政党「進歩党」が歴史的躍進
今回の選挙で特に注目を集めたのが、移民に厳しい姿勢をとる右派ポピュリスト政党、進歩党(党首シルヴィ・リスタウグ)です。進歩党は48議席を獲得し、4年前の前回選挙から議席数を倍以上に伸ばしました。これは同党にとって史上最高の結果です。
リスタウグ党首は、ロナルド・レーガンやマーガレット・サッチャーをロールモデルに挙げ、大幅減税や小さな政府を掲げて選挙戦を展開しました。国際援助や再生可能エネルギーへの補助金などを「無駄な公的支出」と批判し、家計への負担感が高まるなかで多くの保守層の支持を取り込んだとみられます。
左派ブロックが全体として多数を維持した一方で、保守層の中では右寄りへのシフトが進んでいることを、今回の結果は示しています。
課題山積のストーレ政権 富裕層課税・石油・政府系ファンド
ストーレ首相がこれから直面するのは、政策の中身をめぐる厳しい綱引きです。特に次のようなテーマで、与党ブロック内の合意形成がカギになります。
- 富裕層への増税や所得再分配の強化
- 将来の石油・ガス開発をどこまで認めるかというエネルギー政策
- 約2兆ドル規模にのぼるノルウェーの政府系ファンド(ソブリン・ウェルス・ファンド)の運用方針、とくにイスラエル企業からの投資引き揚げ問題
トロムソ大学の政治学者ヨナス・スタイン氏は、ストーレ首相について「首相を続けるが、5つの政党に依存せざるをえない、より厳しい議会状況に置かれる」と分析しています。環境、福祉、外交をめぐる価値観の違いが、今後の政策交渉を難しくしそうです。
有権者が重視した「格差」「エネルギー」「公共サービス」
統計当局によると、今回の選挙で投票資格を持っていた人は405万人超と過去最多でした。有権者の関心は、次のような生活に直結するテーマに集まりました。
- 格差と税制:富裕層への課税強化か、減税による成長優先か
- エネルギー政策:化石燃料に依存する産業構造をどのスピードで転換するか
- 政府系ファンドの運用:倫理的投資と収益性をどう両立させるか
- 住宅と公共サービス:物価上昇のなかで福祉や医療をどう維持するか
こうした論点は、ノルウェーに限らず多くの先進国が抱える課題でもあります。だからこそ、この選挙結果はグローバルな視点から見ても注目されています。
欧州右傾化のなかで示された「もう一つの答え」
ストーレ首相は選挙後、支持者を前に「右派の波が押し寄せるなかでも、社会民主主義は勝利できるというシグナルをノルウェーの外に送るものだ」と語り、会場では「あと4年」を意味するコールが続きました。
近年の欧州では、移民やエネルギー価格の高騰、安全保障不安を背景に、右派やポピュリスト政党の影響力が強まっています。そのなかで、左派が辛うじて政権を維持しつつ、右派ポピュリストも大きく議席を伸ばしたノルウェーの選挙結果は、社会の分断と折り合いを付けながら政治を運営することの難しさを物語っていると言えるでしょう。
日本を含む他の国々にとっても、格差是正と財政規律、エネルギー転換と雇用、国際協調と内政重視という、いくつものトレードオフをどう乗り越えるのか。そのひとつの実験場として、ノルウェー政治の行方をフォローしていく価値がありそうです。
Reference(s):
Norway ruling Labor Party wins reelection while populists score gains
cgtn.com








