IAEAとイランが核査察再開で合意 欧州の制裁スナップバックは回避なるか
国連の原子力監視機関である国際原子力機関(IAEA)とイランが今週火曜日、イラン国内での核査察活動を再開するための具体的な手順に合意しました。欧州3カ国が制裁の再発動「スナップバック」を視野に入れる中、緊張緩和につながる一歩として注目されています。
IAEAとイラン、何に合意したのか
IAEAのラファエル・グロッシ事務局長は、ウィーンに本部を置くIAEAを代表して合意に署名し、自身のソーシャルメディアで「正しい方向への重要な一歩だ」とコメントしました。投稿には、エジプトの首都カイロでイランのセイエド・アッバス・アラグチ外相と共に文書へ署名する写真も添えられています。
IAEAによると、今回の合意はイラン国内で止まっていた核査察活動を再開するための「実務的な手順(モダリティー)」を定めた枠組みです。具体的な査察の中身やスケジュールは明らかになっていませんが、少なくとも現場復帰に向けた土台が整った形です。
欧州3カ国の「スナップバック」圧力
この合意の背景には、フランス、英国、ドイツの欧州3カ国(E3)が進めている制裁再発動の動きがあります。E3は、2015年にイランと主要国との間で結ばれた核合意の下で解除されていた幅広い制裁を、再び有効にすることを検討してきました。
E3は現在、「スナップバック」と呼ばれる手続きに入っており、そのプロセスは今月末まで続くとされています。3カ国は、次の条件が満たされない限り、手続きを止めないとの姿勢を示しています。
- IAEAによるイラン国内での核査察活動の完全な再開
- イランが高濃縮ウランの備蓄について説明し、実態を明らかにすること
- イランが米国と核問題に関する協議を行うこと
今回の合意は、このうち少なくとも「査察の再開」と「高濃縮ウラン備蓄の説明」に向けた動きと位置づけられています。ただ、今月末までに欧州側が納得するだけの進展があるかどうかは、依然として不透明です。
イラン側の強い姿勢と警告
イランのアラグチ外相は声明で、今回の実務的な措置は条件付きであると強調しました。
アラグチ外相は、「イランに対するいかなる敵対的行動、つまり、すでに取り消された国連安全保障理事会決議の復活などが行われた場合、今回の実務的措置は無効と見なす」と述べ、スナップバックによる制裁決議の復活は受け入れられないとの立場を示しました。
つまりイラン側は、欧州や国連が制裁を再発動すれば、今回の合意に基づく核査察の前進はすべて撤回されると警告していることになります。これは、合意が極めて繊細なバランスの上に成り立っていることを物語っています。
緊張激化の経緯:IAEAとの協力はなぜ止まったのか
イランは、6月に起きたイスラエルと米国による自国の核施設への攻撃や、イラン人核科学者の暗殺を受けて、IAEAとの協力を停止しました。これにより、IAEAは現場での監視活動を十分に行えない状態が続いていました。
それでもIAEAは、イラン当局との連絡チャネル自体は維持してきたとしています。今回のカイロでの合意は、その継続的な対話の積み重ねが、一つの形になったものといえます。
今後の焦点:制裁スナップバックは回避できるか
今回の枠組み合意は、「正しい方向への一歩」であると同時に、出発点にすぎません。今月末に向けて、次のような点が主な焦点になりそうです。
- IAEAの査察官がどれだけ早く、どこまでイランの核施設にアクセスできるか
- 高濃縮ウランの備蓄量や用途について、イランがどの程度詳細な情報を提供するか
- イランと米国の間で、公式・非公式を含めて核問題に関する対話が実現するか
- 欧州3カ国が、スナップバックの最終発動を見送るだけの「成果」があったと判断するかどうか
イラン側は、制裁決議が復活すれば合意を無効にすると警告しており、E3の判断は直接的に査察再開の行方に影響します。合意が進めば核問題の緊張が和らぎ、停滞すれば再び対立が先鋭化する可能性もあります。
核問題をめぐる駆け引きは、中東の安全保障だけでなく、エネルギー市場や国際政治全体にも波及し得るテーマです。IAEAとイランの合意が、一時的な休戦にとどまるのか、それともより安定した枠組みへの入り口となるのか。今月末に向けた各国の動きが、重要な試金石となりそうです。
Reference(s):
cgtn.com







