第80回国連総会が開幕 80年目の国連が問う「まだ意味はあるのか」
国連創設80周年にあたる2025年、第80回国連総会がニューヨークの国連本部で開幕しました。世界各地で危機が深まるいま、「国連はまだ意味があるのか」という根本的な問いを突きつける会期になりそうです。
第80回国連総会が開幕 テーマは「Better Together」
第80回国連総会は、新たに総会議長に就任したアナレーナ・ベアボック氏が開会を宣言し、正式にスタートしました。今会期のテーマは「Better Together: 80 years and more for peace, development and human rights(ともにより良く:平和・開発・人権のための80年とその先へ)」と掲げられています。
ベアボック議長は開会演説で「80年というのは平均的な人間の寿命より長く、本来であれば祝うべき節目だ」としつつ、「しかし、いま私たちは本当に祝う気分になれるのか」と問いかけました。
その理由として、議長は世界の厳しい現実を次々と挙げました。
- ガザで子どもが飢えに苦しむ様子を見守るしかない親たち
- 学校に通うことを禁じられたアフガニスタンの少女たち
- 性暴力から娘を守ろうと身を潜めるダルフールの女性たち
- 海面上昇で自宅に波が打ち寄せる太平洋の島しょ地域の人々
- いまだ極度の貧困に取り残されている8億800万人
本来なら祝賀ムードに包まれていてもおかしくないが、むしろ「私たちを地獄から救うために生まれたはずの国連は、一体どこにいるのか」と自問すべき時期だと強調しました。
それでもベアボック議長は、「だからこそ世界には国連が必要だ」と強調しました。全ての国を一つの場に集め、真に地球規模で行動できる組織は国連だけだとしたうえで、「今年を、次の80年──私たちの子どもたちの一生にかけて必要とされる国連をつくるための『適応と進化』の年にしなければならない」と呼びかけました。さらに、約80億人の人々に対し、この組織が今もなぜ重要なのかを示す好機だと位置づけています。
グテーレス事務総長のメッセージ:国連憲章は「道具」
会合では、国連のグテーレス事務総長も演説し、80年前に米カリフォルニア州サンフランシスコに集った国連創設者たちの原点に立ち返りました。彼らは、戦争の悲劇を繰り返さないだけでなく、貧困や飢餓、病気、不平等といった人類を苦しめてきた課題に対処するグローバルな問題解決機関を構想していたと振り返りました。
事務総長は、こうした取り組みは世界によって世界のために築かれたものであり、国連憲章の価値と原則に根ざしている、それこそが総会の存在理由だと述べました。
さらに「国連は対話と協力の場を提供し、国連憲章はそのための道具を提供している」と強調し、9月に採択された「未来のためのパクト」が、多国間主義と国連の価値を再確認する大きな後押しになったと評価しました。
同時に事務総長は、国連憲章は自動的に働くものではなく、各国が自国の利益だけを越えて互いへの信頼を築き直し、国際社会が連帯して行動しようと決意して初めて力を発揮すると指摘しました。
世界のあらゆる問題をニューヨークだけで解決することはできないが、「より良く、公平で、平和で、そして平等な世界」に一歩でも近づく解決策のために各国が結集することはできるとし、多国間協調の重要性を訴えました。
9月のハイレベルウィークで焦点となる議題
第80回国連総会では、各国首脳が集まるハイレベルウィークが9月22日から30日までの日程で設定されました。開幕時点の計画では、総会一般討論に加え、次のような会合が予定されています。
- 国連創設80周年を記念するハイレベル会合
- 持続可能な開発目標(SDGs)モーメント
- 第4回世界女性会議から30周年のハイレベル会合
- 気候サミット
- AIガバナンスに関するグローバル対話の立ち上げを目的としたハイレベル会合
気候変動やジェンダー平等、そして急速に進化するAIの国際的なルールづくりなど、21世紀の国際議題が一度に俯瞰できる構成になっているのが特徴です。
私たちにとっての意味:3つのポイント
日本やアジアに暮らす私たちにとって、第80回国連総会はどのような意味を持つのでしょうか。ニュースを追う際の視点として、3つのポイントを挙げます。
1. 国連の存在意義を問い直すタイミング
紛争や人権侵害、貧困が続くなか、国連は機能しているのかという疑問は各国で共有されています。一方で、全ての国が一堂に会して議論する場が他にないのも現実です。今回の総会は、国連をどう変えていくべきかを考える出発点になり得ます。
2. SDGsと極度の貧困の現実
ベアボック議長が言及したように、いまも約8億800万人が極度の貧困にとどまっているとされています。2030年を期限とする持続可能な開発目標(SDGs)の達成は険しい道のりですが、その優先順位や資金の集め方をどう見直すのかは、日本を含む各国の政策にも直結します。
3. AIガバナンスは遠い話ではない
ハイレベルウィークで予定されているAIガバナンスに関するグローバル対話は、生成AIなどの技術が社会にもたらす恩恵とリスクを国際的にどう管理するかを巡る議論です。日々デジタル技術に触れる私たちにとっても、プライバシー、雇用、教育など、身近なテーマとつながっています。
創設から80年を迎えた国連は、いま大きな転換点に立っていると言えます。第80回国連総会の議論を追うことは、世界のニュースを知るだけでなく、これからの80年をどう生きるのかを考えるきっかけにもなりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








