国連安保理がドーハ空爆を非難 イスラエル名指し回避の意味
国連安全保障理事会(安保理)は木曜日、カタールの首都ドーハで起きた空爆を強く非難する声明を全会一致で採択しました。ただし、攻撃の主体とされるイスラエルの名指しは避けられました。同じ日にイスラエルのネタニヤフ首相は「パレスチナ国家は存在しない」と改めて主張しており、ガザ戦争とパレスチナ国家承認をめぐる国際政治は、2025年末の今も緊張を増しています。
ドーハ攻撃と国連安保理声明:何が決まったのか
今回の国際ニュースの焦点は、カタールの首都ドーハに対する空爆と、それに対する国連安保理の対応です。イスラエルは、ドーハでハマスの政治部門の指導者を標的とした攻撃を行い、ガザ戦争での軍事行動を一段とエスカレートさせました。
安保理はこの攻撃を受けて協議を行い、15カ国全てが賛同する形で声明を採択しました。声明は、
- ドーハへの最近の攻撃を非難する
- カタールへの連帯を表明する
- カタールの主権と領土一体性への支持を再確認する
としています。一方で、攻撃主体としてイスラエルの名前を明記することは避けられました。
通常、アメリカは国連の場でイスラエルを強く擁護してきましたが、今回はアメリカも声明に同意しました。これは、攻撃を「米国とイスラエルの利益を前進させるものではない」とみるドナルド・トランプ大統領の不満を反映したものとされています。
イスラエルの主張:「テロに安全地帯はない」
イスラエルの国連大使ダニー・ダノン氏は安保理会合で、今回の攻撃は「テロ組織にはどこにも安全地帯は存在しない」というメッセージだと強調しました。
ダノン氏は、ガザ、テヘラン、ドーハのいずれであっても「テロ指導者には免責はない」と述べ、「イスラエルはテロの指導部がどこに隠れていても行動する」と主張しました。イスラエル側は、ハマスの政治指導部を各地で追い詰めることが自衛の一環だと位置づけています。
仲介役カタールへの打撃と和平交渉への影響
今回のドーハ空爆が特に敏感に受け止められているのは、カタールがガザ戦争の停戦と人質解放をめぐる仲介役を担ってきたためです。ドーハにはハマスの政治指導者が滞在し、各国との交渉が続けられてきました。
カタールのシェイク・モハメド・ビン・アブドゥルラフマン・アール=サーニー首相は安保理で、イスラエルがドーハでハマス指導者を狙ったのは「ガザでの戦争終結に向けた努力を脱線させる試みだ」と批判しました。
同首相は、
- 攻撃は和平の可能性を損なおうとしている
- パレスチナの人々の苦しみを長引かせようとしている
- 現在のイスラエル指導層は人質問題を優先していないように見える
と述べつつ、カタールはそれでも仲介努力を続けると表明しました。仲介者の安全と中立性が揺らげば、停戦交渉そのものが成り立たなくなるリスクがあります。
人質問題と「和平をめぐる信頼」の揺らぎ
安保理声明は、ガザ戦争をめぐる国際社会の共通課題として、次の点を最優先事項として挙げました。
- ハマスによって拘束されている人質の解放(死亡した人質も含む)
- ガザでの戦闘と住民の苦難の終結
パキスタンのアシム・イフティカル・アフマド国連大使は、イスラエルが本当に人質解放を最優先しているのか疑問を呈し、「占領勢力として和平の可能性を自ら損なおうとしている」と批判しました。
これに対し、アメリカのドロシー・シェア国連大使代行は「この事案を利用してイスラエルの人質返還へのコミットメントを疑問視するのは適切ではない」と反論しました。そのうえで、攻撃は米国やイスラエルの目標を進めるものではないとしつつ、「不幸な出来事ではあるが、和平の機会となり得る」とも述べました。
国連の政治担当トップ、ローズマリー・ディカルロ氏は、ドーハ攻撃について「憂慮すべきエスカレーション」だと警告しました。特に、攻撃対象となった人物たちが、アメリカが提示した最新の停戦・人質解放案を話し合っていたと報じられている点を指摘しています。
ネタニヤフ氏「パレスチナ国家はない」 入植拡大とリンク
安保理声明が発表された同じ日、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、占領地ヨルダン川西岸の入植地マアレ・アドゥミムで行われた大規模な入植プロジェクトの調印式に出席しました。
ネタニヤフ氏は演説で、「我々はパレスチナ国家は存在しないという約束を守る。この地は我々のものだ」と述べ、「遺産と土地と安全を守る」「この都市の人口を倍増させる」と強調しました。式典の様子は首相府によってライブ配信されました。
今回の計画は、エルサレムとマアレ・アドゥミムの間にある約12平方キロメートルの土地(通称E1地区)に住宅を建設するという、長年論争の的となってきたものです。国際的な反発から長く棚上げされてきましたが、イスラエルの極右系財務相ベザレル・スモトリッチ氏が先月、約3400戸の住宅建設計画を支持すると表明し、再び動き出しました。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、この入植計画がヨルダン川西岸を事実上分断し、「一体的なパレスチナ国家」にとって「存在そのものへの脅威」になると警告しています。国際法上、1967年以来占領されているヨルダン川西岸でのイスラエルの全ての入植地は、イスラエルの国内手続きの有無にかかわらず違法と見なされています。
パレスチナ国家承認の動き:今月の国連で何が起きるか
こうした中、英国やフランスを含むいくつかの欧米諸国は、今月後半、国連でパレスチナ国家を正式に承認する意向を示しています。英国は、ガザでの壊滅的な戦争についてイスラエルが停戦に応じない場合、承認に踏み切るとしています。
ガザでの戦闘は、2023年10月のハマスによる攻撃をきっかけに激化しましたが、その後も終結の見通しは立っていません。パレスチナ国家承認の動きは、ネタニヤフ首相の「パレスチナ国家はない」という宣言と正面からぶつかる形になり、外交的な対立が一段と鮮明になりつつあります。
このニュースから見える3つのポイント
今回のドーハ攻撃と安保理声明、そしてネタニヤフ首相の発言は、現在の中東情勢と国際政治の複雑さを象徴しています。整理すると、次の3点が重要です。
- 安保理の全会一致とアメリカの態度変化
イスラエルを一貫して擁護してきたアメリカが、イスラエル名指しを避けつつもドーハ攻撃を非難する声明に賛同したことは、同盟関係の中での微妙なずれを示しています。 - 仲介役カタールへの圧力と停戦交渉へのリスク
交渉の舞台となってきたドーハが標的となったことで、今後のガザ停戦協議や人質解放交渉の場をどう確保するのかが課題になります。 - 入植拡大とパレスチナ国家承認の衝突
現地では入植地拡大と「パレスチナ国家否定」が進む一方、国連の場ではパレスチナ国家承認の動きが強まっています。このギャップが埋まらない限り、持続的な和平の枠組みづくりは難しいと言わざるを得ません。
2025年12月現在、ガザ戦争とパレスチナ問題は依然として国際政治の最前線にあります。今月予定されているパレスチナ国家承認の動きと、その後のイスラエル、アメリカ、アラブ諸国の対応が、今後の中東情勢と国際秩序を占う重要な指標になりそうです。
Reference(s):
UN Security Council condemns Doha strike, avoids reference to Israel
cgtn.com








