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クジラは「カーボンキャプチャ装置」?自然の価値をお金で考える
国際ニュース番組「Full Frame: Carbon Capture」のインタビューで、エコノミストのラルフ・チャミ氏が語ったのは「クジラにいくら払うべきか」という少し不思議な問いでした。気候変動が深刻さを増す2025年の今、この発想は私たちの自然の見方を静かに揺さぶります。
自然は「サービス提供者」?ラルフ・チャミ氏の視点
Blue Green Futureの創設者であるラルフ・チャミ氏は、自然が経済に与える価値を政策に反映させるための助言を行っています。番組の司会マイク・ウォルター氏との対談の中で、チャミ氏はクジラについてこう語りました。
「クジラは人類のために炭素を隔離しています。そのサービスには価値がある。私たちはクジラにいくら支払うべきなのか——そこが『ユーレカ(ひらめき)の瞬間』なのです。クジラは、私が経済学者として提供しているよりも、はるかに価値あるサービスを提供しています。彼らは私たちの気候変動との闘いを助けているのです。」
チャミ氏のメッセージはシンプルです。クジラや森、湿地のような自然は、気候変動を抑える「カーボンキャプチャ(炭素の捕獲)」というサービスを人間社会に提供しており、その価値を経済の言葉でもきちんと数え上げるべきだということです。
カーボンキャプチャとは何か
気候変動の議論でよく聞く「カーボンキャプチャ」とは、二酸化炭素(CO2)を大気中から取り除き、長期間閉じ込める仕組みのことです。工場の排ガスを回収して地中に貯留するような技術的な方法もあれば、森林や海洋生態系のように、自然の力でCO2を吸収・貯蔵する方法もあります。
クジラが果たしている役割は、後者の「自然を使ったカーボンキャプチャ」です。クジラの体内や海の生態系の循環を通じて、炭素が長い時間スケールで海に貯蔵されると捉えることができます。チャミ氏は、そのプロセスを「人類へのサービス」と見なし、その価値を可視化しようとしています。
「クジラにいくら払うべきか」という問いの意味
もちろん、実際にクジラにお金を振り込むことはできません。では、チャミ氏はなぜあえて「いくら払うべきか」という表現を使ったのでしょうか。
- 自然の働きを「タダ」だとみなす現在の経済の前提を問い直すため
- 政策担当者や投資家が理解しやすい「金額」に翻訳することで、保護への動機を高めるため
- 気候変動対策の議論を、排出削減だけでなく「自然を守ること」にも広げるため
例えば、1頭のクジラが生涯で隔離する炭素量を金額に換算できれば、そのクジラを守ることは単なる「環境保護」ではなく、社会全体への投資とみなすことができます。チャミ氏の問いは、そのような新しい考え方への招待状だと言えます。
自然の価値をどう数えるか
自然が提供する恩恵は、炭素の隔離だけではありません。洪水を和らげる湿地、都市の気温を下げる緑地、心身の健康に影響を与える景観など、その多くはこれまで「当たり前のもの」として扱われてきました。
チャミ氏が関わるBlue Green Futureのような取り組みは、こうした自然の機能を「エコシステムサービス(生態系サービス)」として捉え、その経済的な価値を推計し、政策に活かすことを目指しています。価値が見える化されれば、
- 開発と保護のどちらを優先すべきかの判断材料になる
- 自然を破壊した場合の「コスト」を評価しやすくなる
- 自然を保全・再生するプロジェクトへの投資を後押しできる
お金に換算すればそれで良いのか?
一方で、自然の価値をすべてお金に換算してしまうことへの懸念もあります。景観や生き物とのつながり、文化や精神的な意味は、数字だけでは測りきれません。
チャミ氏のメッセージは、「お金に換算できない価値は軽い」ということではなく、「お金に換算できる部分すら、これまで過小評価されてきた」という問題提起だと読むこともできます。経済の言葉を使うことで、自然が果たしている役割を政策のテーブルに載せやすくする——そのための一つの手段が、クジラのような存在に「報酬」を考えてみるという発想です。
2025年の私たちへの問いかけ
気候変動が現実のリスクとして感じられるようになった今、カーボンキャプチャ技術や再生可能エネルギーの議論と並行して、「自然そのものをどう守るか」という視点が重みを増しています。
ラルフ・チャミ氏の「クジラにいくら払うべきか」という問いは、次のような日常的な行動にもつながります。
- ニュースや政策を見るとき、「自然が提供しているサービスは考慮されているか」を意識してみる
- 自然を守るプロジェクトや団体の活動を知り、自分にできる形で関わってみる
- 森や海に出かけるとき、「ここは地球のカーボンキャプチャ装置でもある」と想像してみる
クジラや森、湿地は、静かに私たちのために働き続けています。2025年の今、それを「見える化」し、感謝と責任の形に変えていくことが、次の世代への一つの約束になるのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








