ルビオ米国務長官がエルサレム有争点遺跡を訪問 ガザ停戦へカタールにも期待
アメリカのマルコ・ルビオ国務長官がエルサレムの論争の的となっている遺跡を訪問し、イスラエルの入植者主導プロジェクトに事実上の支持を示しました。今月予定される国連でのパレスチナ国家承認の議論や、ガザ情勢をめぐるカタールの仲介とも重なり、中東外交の緊張が一段と高まっています。
何が起きたのか 一目で分かるポイント
- ルビオ米国務長官がエルサレムのシティ・オブ・デイビッド考古公園を訪問
- 同公園はユダヤ人入植者主導の計画で、パレスチナ国家構想を損なうとの批判も
- 今月、国連本部で英国やフランスなどがパレスチナ国家を正式承認する見通し
- ルビオ氏はその後カタールへ向かい、ガザ情勢での建設的役割継続を要請へ
- イスラエル軍はガザ市への地上作戦を本格化させたと報じられ、外交解決は一層難しい局面にあります
エルサレムの敏感な遺跡で示されたメッセージ
ルビオ国務長官は今週月曜日、エルサレムにあるシティ・オブ・デイビッド考古公園を視察しました。この遺跡は、ユダヤ人にとっては神殿の丘とされる高台の一角に位置し、イスラム教徒はハラム・アルシャリフまたは高貴なる聖域と呼びます。長年、エルサレムの中でも最も衝突が起きやすい場所の一つとされてきました。
公園の発掘はユダヤ人入植者の団体が主導しており、批判的な専門家やパレスチナ側は、将来のパレスチナ国家樹立に向けた可能性を弱める動きだと懸念しています。その現場をアメリカの現職国務長官が訪れたことは、イスラエル側の計画に対する政治的な後押しと受け止められています。
トランプ政権から続くエルサレム政策の流れ
今回の訪問は、エルサレムをめぐるアメリカの政策転換の延長線上にあると見ることができます。トランプ政権は2017年、エルサレムをイスラエルの首都と公式に認定し、長年テルアビブにあったアメリカ大使館をエルサレムへ移転しました。これは、エルサレムの最終的な地位はイスラエルとパレスチナの交渉で決めるべきだとしてきた、従来のアメリカ外交からの大きな転換でした。
ルビオ氏は今回、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相、マイク・ハッカビー駐イスラエル米大使とともに、ユダヤ教で最も神聖な祈りの場とされる嘆きの壁や、その地下に広がるトンネルも視察しました。トンネルの発掘はイスラエル主導で進められており、国連からは周辺住民への影響などを理由に批判の声も上がっています。
国連で加速するパレスチナ国家承認の動き
こうした動きの背景には、エルサレムから遠く離れたニューヨークの国連本部で、今月予定されている世界の首脳級会合があります。そこでは、
- イギリス
- フランス
- カナダ
- オーストラリア
- ベルギー
といった国々が、パレスチナ国家を正式に承認する見通しだと伝えられています。イスラエルはこの動きを強く拒否しており、今後の国連外交は一段と緊張が高まる可能性があります。
エルサレムの敏感な場所でアメリカの存在感を示したルビオ氏の行動は、そうした国連での議論をにらんだ「事前のメッセージ」としても読み取ることができます。
ルビオ氏、カタールへ ガザ情勢で「建設的役割」を要請
ロイター通信によりますと、ルビオ国務長官はイスラエル訪問後、ガザ情勢をめぐる協議のためカタールへ向かう予定です。カタールはこれまでもガザをめぐる停戦交渉や人質解放の仲介役として、国際社会から注目されてきました。
ルビオ氏はカタールに対し、ガザの紛争解決で今後も建設的な役割を果たすよう呼びかけています。具体的には、
- ガザに残る48人の人質全員の解放
- イスラム組織ハマスの武装解除
- ガザの人々にとってより良い未来の構築
といった目標の達成に向け、協力を続けてほしいと表明しました。
一方で、ネタニヤフ首相と並んで行った発言からは、ワシントンが外交的な解決の可能性を低く見積もり、イスラエルが準備する大規模な軍事作戦を支持しているとの見方も広がっています。ネタニヤフ氏は、今回の作戦でハマスを「完全に打倒する」と強調しています。
ドーハの緊急サミット カタールへの攻撃を非難
外交はイスラエルとカタールの両方で動いています。カタールの首都ドーハでは月曜日、アラブ・イスラム緊急サミットが開催されました。参加国は、先週カタール国内で起きたハマス幹部への攻撃を強く非難し、湾岸産油国であるカタールへの「完全な連帯」を表明しました。
この緊急サミットは、ガザ情勢をめぐる軍事行動が第三国にまで広がることへの懸念と、中東・イスラム諸国がカタールを支える姿勢を改めて示した形になります。カタールが仲介役であり続けるためには、安全確保と国際的な信頼の両立が大きな課題となりそうです。
ガザ市での地上作戦本格化と和平の行方
エルサレムとドーハで外交が展開される一方、ガザでは戦闘が激しさを増しています。米メディアの Axios は、イスラエル軍が月曜日にガザ市の占拠を目的とした地上攻勢を開始したと、イスラエル当局者の話として報じました。
すでに空爆が続いていたガザ市で本格的な地上作戦が進めば、
- 市街戦の長期化
- 民間人の被害拡大
- 人道支援のアクセス悪化
といった懸念が一段と強まります。ガザの人々の安全と日常生活の回復をどう確保するのかという根本的な問いに、国際社会は十分に答えられていません。
「軍事」と「外交」がぶつかる中で問われるもの
今回のルビオ国務長官の行程は、「軍事による解決」を重視するイスラエルと、「仲介と承認」を通じて政治解決を模索する中東諸国や欧米諸国の間で、アメリカがどこに軸足を置くのかを示す試金石にもなっています。
一方で、国連でのパレスチナ国家承認の動きや、カタールを含む地域諸国の外交努力は、軍事行動とは異なるルートから「出口」を探ろうとする試みでもあります。
2025年12月現在、エルサレムの遺跡からガザの市街地まで、同じ土地をめぐる複数の物語が重なり合っています。宗教や歴史、国家安全保障と人道支援、そして国家承認をめぐる議論が複雑に絡み合う中で、どこまで「政治的な想像力」を働かせられるかが、今後の中東和平の行方を左右しそうです。
読者の皆さんにとっても、エルサレムの遺跡訪問という一見象徴的な動きが、ガザの地上作戦や国連での国家承認とどう結びついているのかを考えることは、ニュースを「点」ではなく「線」として理解する手がかりになるはずです。
Reference(s):
Rubio visits Jerusalem site to support Israel, urges Qatar aid Gaza
cgtn.com








