IAEA総会、核不拡散体制の「守り方」を議論 ウィーンから見えた危機感
ウィーンで開かれた国際原子力機関(IAEA)の第69回総会で、核の平和利用と核不拡散体制の保護が正面から議論されました。テロや武力紛争が続く中、核をどう管理し、人類の安全と発展につなげるのかが問われています。
IAEA第69回総会:焦点は「核の平和利用」と核不拡散
IAEA第69回総会は、オーストリアの首都ウィーンで開幕し、9月19日までの日程で開催されました。会場には、IAEA加盟国の代表のほか、国際機関や非政府組織(NGO)の関係者など、あわせて2500人超が参加しました。
今回の総会の柱となったのは、次の二つのテーマです。
- 核エネルギーと核技術を、いかに平和目的に限定して利用するか
- 揺らぎつつある世界の核不拡散体制を、どう守り、強化していくか
国連事務総長が強調した「平和利用」と開発
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、ウィーンの国連事務所トップであるガーダ・ワリ氏を通じてメッセージを寄せ、IAEAが核科学と核技術が平和目的のみに用いられるようにするうえで、重要な役割を果たしていると評価しました。
メッセージでは、核関連技術が医療や農業、エネルギーなどの分野で人類の発展に貢献し得る一方で、核兵器拡散の危険と隣り合わせであることが指摘されました。その上で、こうしたツールが開発を前進させ、人類を守るようにするため、核拡散の脅威を取り除く努力を続けるべきだと呼びかけています。
グロッシ事務局長「核不拡散体制は大きな圧力下にある」
IAEAのラファエル・グロッシ事務局長は、総会の場で「いま総会は極めて重要な局面で開かれている」と危機感を表明しました。その背景として挙げたのが、テロリズム、武力紛争、核に関する国際的な規範の弱体化、そして拡大する世界の不平等です。
グロッシ氏は、国連安全保障理事会に対しても、世界の核不拡散体制が大きな圧力にさらされており、防護を必要としていると報告したと明らかにしました。核兵器や関連技術の拡散を防ぐ国際的な枠組み自体が揺らぎかねないとの認識を示した形です。
総会で議論された主なテーマ
今回のIAEA総会では、組織運営から地域情勢まで、核をめぐる幅広い議題が取り上げられました。主なポイントは次の通りです。
- IAEAの2024年年次報告書の審議
- 2026年予算案の検討
- 核科学・核技術の応用に関する最新の取り組み
- ウクライナにおける原子力安全とセキュリティ
- 中東地域の核安全保障や保障措置をめぐる議論
- 朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)に関する保障措置問題
ウクライナや中東、DPRKといった地域は、それぞれ武力紛争や長期的な緊張が続き、核施設や核開発をめぐる懸念が国際社会で指摘されてきました。IAEAは、これらの地域の安全性と透明性を高めるため、監視や技術支援を含む役割を担っています。
なぜ今、核不拡散体制の「保護」が問われるのか
グロッシ事務局長が核不拡散体制の防護を強調した背景には、核関連のルールや信頼を支えてきた国際的な合意や慣行が、世界的な緊張の高まりのなかで揺らいでいるとの危機感があります。
核エネルギーは、気候変動対策やエネルギー安定供給の観点から、今後も一定の役割を果たすと見込まれます。しかし同時に、核物質や技術が軍事目的に転用されるリスクをどう抑え込むかという課題は、むしろ重みを増しています。
今回のIAEA総会は、単に一つの国際会議という枠を超え、次のような問いを世界に突きつけています。
- 核技術を人類の安全と持続可能な発展にどう結びつけるのか
- 紛争や不平等が広がるなかで、国際規範と信頼をどう維持・再構築するのか
- IAEAなど多国間の枠組みに、各国はどう責任を持って関わるのか
私たちが読み取るべきメッセージ
ウィーンのIAEA総会から伝わってくるのは、核をめぐる国際ルールが自動的には維持されないという現実です。テロや地域紛争、格差の拡大といった問題は、遠いどこかの出来事ではなく、核リスクを通じて世界全体の安全とつながっています。
核の平和利用と核不拡散体制の保護をどう両立させるのか。その模索は、国際機関や各国政府だけでなく、市民社会や専門家コミュニティを含む幅広い対話のテーマとなりつつあります。今回の総会の議論は、その出発点の一つとして位置づけられそうです。
Reference(s):
IAEA conference urges protection of nuclear non-proliferation scheme
cgtn.com








