コロンビア和平から9年 元FARC戦闘員がクラフトビールで築く日常 video poster
2016年、コロンビアで政府とFARC(コロンビア革命軍)が和平合意を結んでから9年。 武装闘争は終わりましたが、元戦闘員の人たちにとっては、そこから「市民として生き直す」長いプロセスが始まっています。
「最古にして最大」の反政府組織が武器を置いた日
FARCは、コロンビアで最も古く、かつ最大の反政府武装組織とされています。そのFARCが2016年に政府と和平条約に署名したことは、長く続いた武力紛争に一つの区切りをつける出来事でした。
しかし、和平合意の署名は「ゴール」ではなく、多くの元戦闘員にとっては「スタートライン」でもあります。戦場から離れ、仕事を見つけ、家族や地域社会との関係を築き直す——その日常の積み重ねが、本当の意味での平和につながっていきます。
ボゴタの「平和の家」で生まれるクラフトビール
コロンビアの首都ボゴタには、「ラ・カサ・デ・ラ・パス(平和の家)」と呼ばれる場所があります。ここでは、元ゲリラ戦闘員たち、とくに多くの女性たちが、クラフトビール作りに取り組んでいます。
武器ではなくビールを手にした彼女たちは、発酵の管理や味の調整、ラベルづくりなど、ものづくりのプロセスそのものを意識しながら、日々の仕事としてのリズムを取り戻しています。こうした日常的な営みが、「元戦闘員」ではなく「地域の一員」として生きる感覚を少しずつ育てていると言えるでしょう。
女性たちが担う「新しい役割」
ボゴタの平和の家でクラフトビールを醸造しているのは、主に女性の元戦闘員たちです。紛争の現場ではしばしば見えにくくされてきた女性たちが、和平後の社会では、経済活動とコミュニティづくりの中心を担う場面もあります。
ビール作りのような具体的な仕事は、収入の面だけでなく、仲間と協力する経験や、自分たちの手で未来をつくる実感にもつながります。平和の家は、そうした「新しい役割」を模索する場の一つになっています。
クラフトビールと平和構築——どこがつながるのか
一見すると、クラフトビールと和平プロセスは無関係に見えるかもしれません。しかし、紛争後の社会では、次のような要素が平和構築にとって重要だとされています。
- 安定した日常の仕事: 元戦闘員が合法的な収入源を持つことは、再び武装に戻らないための基盤になります。
- コミュニティとの接点: 商品を通じて地域の人たちと関わることが、偏見や不信感を少しずつ和らげます。
- 自分の物語を語り直す場: 「かつての戦闘員」ではなく、「ビール職人」「起業家」として自分を語り直すことは、自己イメージの回復にもつながります。
ボゴタの平和の家で生まれるクラフトビールは、こうした要素を象徴する存在と言えるかもしれません。戦闘服からエプロンへ、銃からビール瓶へ——道具が変わることで、人生の意味づけも少しずつ変わっていきます。
メディアが映し出す「その後」の物語
この平和の家の様子は、CGTNのミシェル・ベゲ記者の取材によって伝えられました。和平合意のニュースが世界を駆け巡った後、その「その後」の日常をていねいに追う報道は、国際ニュースを立体的に理解するうえで重要です。
合意文書の行方や政治交渉の数字だけでは見えないのが、平和の現場で生きる人たちの表情や迷い、手の動きです。クラフトビール工房で働く元戦闘員たちの姿は、ニュースの見出しには載りにくい「小さな変化」ですが、平和を根づかせるうえで欠かせない一歩でもあります。
日本の読者への問いかけ——「平和」をどうイメージするか
国際ニュースとしてコロンビアの和平を眺めるとき、私たちはつい、「条約が結ばれたかどうか」「紛争が終わったかどうか」といった大きな節目に注目しがちです。
しかし、ボゴタの平和の家のように、元戦闘員がクラフトビールを醸造するという一見ささやかな取り組みこそが、社会の空気を少しずつ変えていきます。そうした「小さな平和の実験」を見つけ、共有していくことも、グローバル社会の一員としてできることの一つではないでしょうか。
2016年の和平合意から2025年の現在に至るまでの時間を思い浮かべながら、画面越しに伝わるクラフトビール工房の光景をきっかけに、「戦争が終わる」とは何を意味するのか、「平和をつくる仕事」とはどんなものかを、あらためて考えてみたいところです。
Reference(s):
cgtn.com








