イラン核合意巡りイランとE3がNY協議へ 制裁再発動前の駆け引き
2025年9月下旬、イランとフランス・英国・ドイツのいわゆるE3が、イラン核問題を巡ってニューヨークで外相級協議を行う方向で調整していると報じられました。国連安全保障理事会で制裁を巡る緊張が高まるなかでの動きであり、2015年の核合意である包括的共同作業計画(JCPOA)の行方を占う局面となりました。
ニューヨークでの外相級協議の概要
イランの準公式メディアであるタスニム通信によると、イランとフランス・英国・ドイツの3カ国(E3)は、テヘランの核問題を議題に、ニューヨークで外相級の協議を行う予定だと9月の時点で伝えられていました。協議はその週の月曜か火曜に行われる見通しとされ、欧州連合(EU)の外交政策責任者カヤ・カラス氏も出席すると報じられています。
イランのセイエド・アッバス・アラグチ外相は、国連総会(UNGA)に出席するため、日曜日にテヘランを出発しニューヨークへ向かいました。外務省の発表によれば、外相は国連総会の会期中、各国の外相らと二国間、地域、国際問題に関する協議も行う予定とされています。
背景にあるイラン核合意と国連制裁
今回の協議の背景には、国連安全保障理事会での重要な動きがあります。今年9月の金曜日、安保理は2015年の核合意JCPOAの枠組みの下で、イランに対する国連制裁の緩和を延長する決議案を採択できませんでした。制裁緩和を延長するための決議が成立しなかったことで、合意を巡る不透明感が一段と高まる結果となりました。
その前の月には、フランス・英国・ドイツのE3がJCPOAに盛り込まれたスナップバックメカニズムを発動しています。この仕組みは、イランが合意に違反したと判断された場合、30日以内に国連制裁を再び課すことを可能にするものとされています。報道によれば、こうした制裁は9月当時、同月中にも発効する見通しとされていました。
制裁緩和延長の決議がまとまらず、さらに制裁再発動のプロセスが進むなかで、イランとE3がニューヨークで直接協議の場を持つことには、対立のエスカレーションを抑えつつ、自らの立場を国際社会に訴える狙いもあったとみられます。
IAEAとの協力を事実上停止へ
安保理で制裁緩和延長の決議案が採択されなかった翌日、イランの最高国家安全保障評議会は、国際原子力機関(IAEA)との協力を事実上停止すると発表しました。評議会は、安保理での投票結果を受けた対応だとしています。
IAEAは各国の核活動を監視し、核の軍事転用が行われていないかを確認する国際機関です。イランがIAEAとの協力を大幅に縮小すれば、国際社会が同国の核計画の実態を把握することが難しくなり、核拡散への懸念が高まる可能性があります。
こうした強い対応を打ち出した直後に、イランがE3との外相級協議に臨む構図は、圧力と対話を同時に用いる戦略とも受け取ることができます。欧州側にとっても、制裁という圧力手段を維持しつつ、対話の窓を閉ざさないバランスが問われています。
昨年から続くイランと欧州3カ国の協議
タスニム通信によれば、イランは昨年9月以降、フランス・英国・ドイツと複数回の協議を行ってきました。主な焦点は、テヘランの核活動と国連制裁を含む制裁の解除や緩和をどのように位置づけるかです。
2024年以降の主な流れ
- 2024年9月以降 イランとE3が、イラン核問題と制裁解除を巡る協議を開始。
- 国連安保理での採決の前月 フランス・英国・ドイツがJCPOAのスナップバックメカニズムを発動。
- 2025年9月の金曜日 国連安保理が、イランへの制裁緩和を延長する決議案を採択できず。
- 翌土曜日 イランの最高国家安全保障評議会が、IAEAとの協力を事実上停止すると表明。
- 翌日の日曜日 タスニム通信が、イランとE3がニューヨークで外相級協議を行う予定だと報道。
こうした一連の動きからは、合意履行を巡る溝が深まりつつも、完全な対話断絶は避けようとする両者の思惑がにじみ出ています。
日本の読者が押さえておきたいポイント
今回のイランとE3のニューヨーク協議を理解するうえで、次のような点が重要になります。
- 制裁再発動とIAEAとの協力停止という二つの動きが、イラン核合意への信頼を大きく揺るがしていること。
- フランス・英国・ドイツとEUは、制裁という圧力を維持しながらも、外相級協議などを通じて対話のチャンネルを残そうとしていること。
- イランを巡る緊張は、中東情勢やエネルギー市場、国際的な核不拡散体制にも影響し得るため、日本を含む各国にとっても無関係ではないこと。
これから問われるもの
ニューヨークでの外相級協議は、制裁再発動を前に外交的な着地点を模索する場として位置づけられていました。数日の協議だけで長年の不信を一気に解消することは難しいとしても、対話のチャンネルを維持できるかどうかは、緊張緩和への最低条件となります。
JCPOAを巡る駆け引きは、制裁の有効性や限界、そして核拡散をどう防ぐかという国際秩序上の課題を改めて浮かび上がらせています。ニュースを追う際には、個々の決議や発表だけでなく、その背後にある長期的な関係や信頼醸成のプロセスにも目を向けることで、イランとE3の動きをより立体的に理解できるはずです。
Reference(s):
cgtn.com








