国連総会ハイレベル・ウィークの舞台裏 同時通訳が支える外交の言葉 video poster
毎年9月に開かれる国連総会ハイレベル・ウィークは、世界のリーダーたちが優先課題を語り合う国際政治の中心舞台です。2025年は9月22日(月)に始まり、各国首脳が世界の危機への対応を示しました。その最も忙しい1週間を陰で支えたのが、国連の同時通訳者たちです。
国連総会ハイレベル・ウィークとは
国連総会ハイレベル・ウィークは、各国の首脳や外相が集まり、自国の優先課題を演説で示しながら、会場の内外で会談を重ねる特別な期間です。気候変動、紛争、経済危機、人道問題など、地球規模の課題が一気に議論されます。
しかし、そこには常に「言語の壁」があります。英語、フランス語、アラビア語、中国語、ロシア語、スペイン語など、多様な言語を話すリーダーたちが互いの考えを理解できるのは、国連本部にいる通訳者たちのおかげです。
「見えない外交官」国連通訳の役割
CGTNのミッチ・マッカン記者のリポートによると、国連総会ハイレベル・ウィークを前に、歴史ある国連本部ではスタッフが1年で最も忙しい1週間の準備に追われ、その中心に通訳チームがいます。通訳者が扱うのは、外交にとって最も繊細な道具ともいえる「言語」です。
一つの言い回しや語順の違いが、柔らかい表現にも、厳しいメッセージにもなり得ます。通訳者は、そのニュアンスをできるだけ正確に、そして公平に伝える必要があります。その意味で、彼らは「見えない外交官」とも言える存在です。
秒単位の反応が求められる現場
同時通訳は、話し手の声を数秒遅れで聞き取りながら、ほぼリアルタイムで別の言語に変換していく作業です。国連総会のような場では、
- 発言のスピードが速い首脳
- 専門用語が多いテーマ
- 緊張感の高い外交発言
など、難易度を一気に引き上げる要素がそろいます。一瞬聞き逃したり、意味を取り違えたりすれば、誤解につながるおそれがあります。そのため、通訳者には「瞬間的な判断」と「集中力の持続」が同時に求められます。
本番前の「準備」が仕事の半分以上
こうした秒単位の反応を支えるのが、事前の徹底した準備です。リポートによれば、通訳者たちは本番前から膨大な資料に目を通し、予想される話題や用語を頭に叩き込んでいます。
代表的な準備作業は次のようなものです。
- 各国首脳や外相の過去の演説を読み、話し方の癖やよく使う表現を把握する
- 気候変動、安全保障、金融など、議題ごとの専門用語や略語のリストを作る
- 最新の国際ニュースや地域情勢をチェックし、文脈を理解しておく
- チームで用語の訳語をすり合わせ、できるだけ一貫した表現に整える
こうした蓄積があるからこそ、本番の演説で予期せぬ表現が飛び出しても、瞬時に意味をつかみ、自然な訳に落とし込むことができます。
多言語で動く国連本部の一日
ハイレベル・ウィーク期間中、国連本部では朝から晩まで、複数の会議が平行して進みます。本会議場だけでなく、サイドイベントや二国間会談など、あらゆる場に通訳者が配置されます。
通訳チームは通常、短い持ち時間で交代しながらブースに入り、集中力を切らさずに対応します。会議が長引けば、昼食もブースに持ち込んで対応することもあります。それでも、彼らの名前がニュースで大きく取り上げられることはほとんどありません。
なぜ日本の私たちに関係があるのか
国連総会ハイレベル・ウィークで交わされる言葉は、やがて日本を含む各国の外交方針や経済政策にも影響を与えます。その根っこを支えているのが「通訳」という目立たない仕事です。
私たちにとっても、これは次のような問いを投げかけています。
- 言葉のニュアンス一つが、国際関係を動かしうるという事実
- 多言語で情報を受け止めることの重要性
- 見えにくい専門職が、社会のインフラとして機能している現実
グローバルなニュースを日本語で受け取る私たちにとって、国連通訳の現場は「翻訳・通訳」という行為の重さを考え直すきっかけにもなります。
静かなプロフェッショナルたちへの視線
国連本部の通訳者たちは、拍手を浴びることも、カメラの前に立つこともほとんどありません。それでも、世界のリーダーたちが互いの言葉を理解し、交渉を進めるためには欠かせない存在です。
ミッチ・マッカン記者のリポートが伝えるように、彼らは徹底した準備と、瞬時の判断を積み重ねながら、1年で最も忙しい1週間を乗り切っています。次に国連総会のニュース映像を見るときには、その画面の外側で働く「見えないプロフェッショナル」の姿にも思いを巡らせてみると、国際ニュースの見え方が少し変わってくるかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








