アッバス大統領、イスラエルの「犯罪」を非難 恒久停戦とパレスチナ国家によるガザ統治を主張
パレスチナのマフムード・アッバス大統領が、ニューヨークで開かれた国際会議にビデオ演説し、イスラエルの「犯罪」を強く非難するとともに、恒久停戦と戦後ガザの統治をめぐる構想を示しました。本稿では、その発言のポイントと「二国家解決」に向けた意味合いを整理します。
戦後ガザ統治は「パレスチナ国家のみが正当」と強調
アッバス大統領は、フランスとサウジアラビアが共同議長を務める「パレスチナ問題の平和的解決と二国家解決の実現に関する国際ハイレベル会議」で演説しました。この会議はニューヨークで開かれ、アッバス氏はビデオ形式で参加しました。
演説の中でアッバス氏は、イスラエルによるガザでの行為を「犯罪」と非難する一方、ハマスによる10月7日のイスラエル南部への攻撃も明確に批判しました。そのうえで、戦後のガザについては「パレスチナ国家だけが全面的な統治を担う正当な主体だ」と主張し、国家としてのパレスチナがガザの将来を主導すべきだと訴えました。
恒久停戦と人道支援の拡大を国際社会に要請
アッバス氏は、現在のガザ情勢をめぐる国際ニュースの焦点となっている停戦や人道支援について、次のような措置を求めました。
- 恒久的な停戦の実現
- 国連および国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)を通じた人道支援物資の確実な搬入
- 人質と拘束中の囚人の解放
- ガザからのイスラエル軍の撤退
- ガザおよびヨルダン川西岸での復旧・復興の開始
こうした要求を通じて、アッバス氏は国連など国際機関が中心となる形で、ガザの人道状況改善と戦後の再建プロセスを進めるべきだとの考えをにじませています。
ハマスは統治から排除 武装解除を要求
統治体制をめぐってアッバス氏は、「ハマスは戦後ガザの統治に関与しない」と明言しました。そのうえで、ハマスやその他の武装組織に対し、武器をパレスチナ自治政府に引き渡すよう求めました。
これは、戦後のガザで複数勢力が並立する状態ではなく、パレスチナ側の統治権と治安権限を一元化したいという意図を示すものといえます。ガザの安全保障を誰がどのように担うのかは、今後の和平プロセスにおける最大の争点の一つです。
国際承認と国連加盟を呼びかけ
アッバス氏は、これまでにパレスチナ国家を承認してきた各国に感謝を示すとともに、まだ承認していない国々に対しても承認を求めました。また、パレスチナの国連正式加盟に向けた支持を呼びかけました。
国家承認と国連加盟は、「二国家解決」を現実の制度として定着させるうえで重要なステップと位置づけられます。アッバス氏の発言は、外交チャンネルを通じた国際的な後押しを一層強めたいというメッセージと受け取れます。
1年以内の選挙と暫定憲法 「権限から国家へ」のロードマップ
政治体制の将来像について、アッバス氏は「戦争終結から1年以内に大統領選挙と議会選挙を実施する」と表明しました。さらに、「3カ月以内に暫定憲法を起草し、自治政府から『完全な国家』への移行を導く」との考えも示しました。
選挙の実施と暫定憲法の制定は、ガザとヨルダン川西岸を含むパレスチナ全体の統治正統性を高めるためのプロセスと位置づけられます。民主的な手続きに基づく体制づくりを約束することで、国際社会に対しても信頼を訴える狙いがあるとみられます。
イスラエルに交渉復帰を要求 「流血を止めるために」
アッバス氏は演説の締めくくりで、イスラエルに対し交渉のテーブルに戻るよう呼びかけました。その目的として、「流血を止め、公正で包括的な平和を実現すること」を挙げています。
ここで言及される「二国家解決」とは、イスラエルとパレスチナがそれぞれ国家として共存し、政治的な紛争を対話と合意によって解決していく構想です。アッバス氏は、その実現に向けた交渉再開を改めて国際社会の前で求めた形です。
国連総会の決定で実現したビデオ演説
今回のビデオ演説は、国連総会の特別な決定によって実現しました。先週、国連総会は、アッバス氏がニューヨークでの各国首脳による年次会合にビデオ形式で参加することを認める決議を採択しました。
これは、米国がアッバス氏に対する入国ビザを発給しない意向を示したことを受けた措置です。対面参加はかなわなかったものの、アッバス氏はビデオ演説という形で、自身の和平構想と停戦への要求を国際社会に直接訴える機会を得たことになります。
「読みやすい国際ニュース」として考えたいポイント
今回の発言からは、少なくとも次の3点が浮かび上がります。
- 戦後ガザの統治主体をめぐり、パレスチナ国家が唯一の正当な担い手だと改めて主張したこと
- 恒久停戦と人道支援、復興を国連主導で進めるよう求めたこと
- 選挙と暫定憲法を通じて、自治から「国家」への移行プロセスを具体的に提示したこと
中東和平をめぐる議論は複雑で感情的になりがちですが、今回のような具体的な提案やスケジュールがどこまで現実味を持ちうるのかを落ち着いて見ていくことが、国際ニュースを読み解くうえで重要になりそうです。
Reference(s):
Abbas condemns Israel's 'crimes,' calls for permanent ceasefire
cgtn.com








