ノルドストリーム爆発から3年 ドイツ経済が払った代償とは video poster
2025年現在、バルト海の海底でノルドストリーム・ガスパイプラインが爆発で破壊されてから3年がたちました。犯人は依然として分からないままですが、その影響は今もヨーロッパ最大の経済大国ドイツの家計と産業に重くのしかかっています。
未解決の「海底爆発」が残したもの
ノルドストリーム1と呼ばれる2本のパイプラインはかつて、年間550億立方メートルのロシア産ガスをヨーロッパに送り込んでいました。これは欧州のガス需要の大きな部分を占め、ドイツの「世界の工場」としての力を支えてきました。
一方、ノルドストリーム2は、その供給能力を約1,100億立方メートルへと実質的に倍増させる計画として建設され、2021年に完成しました。しかし2022年2月にロシアがウクライナで軍事行動を開始した数日後、ドイツはこのプロジェクトを停止し、ノルドストリーム2は一度も稼働していません。
その後の爆発でノルドストリーム1も使用されないままとなり、バルト海の海底には「使われないインフラ」となったパイプラインが横たわっています。それでも、誰が、なぜ破壊したのかという点は謎のままです。
ドイツ経済への衝撃:エネルギー価格は4倍に
ノルドストリームの停止は、ロシア産ガスへの依存度が高かったドイツ経済にとって大きな転換点となりました。ロシアからの比較的安価なガスは、化学産業や金属産業などエネルギー集約型の重工業を支えてきたからです。
ロイターによると、ヨーロッパのエネルギーコストは2021年以降で4倍に跳ね上がりました。これは企業だけでなく、暖房や電気代を払う一般家庭にとっても重い負担です。エネルギー価格の高騰は、物価の上昇や賃金交渉、さらには企業の投資判断にも影響を与えます。
特に化学や金属といった重工業では、コスト増が長期的な競争力の低下や生産拠点の見直しにつながるのではないかという懸念が高まっています。「一時的なショック」では終わらず、産業構造そのものが変わりかねないとの見方もあります。
エネルギー多様化は進むが、「安さ」は戻らない
こうした中で、ドイツはノルドストリーム爆発後にエネルギー供給源の多様化を進めてきました。ドイツ経済研究所(DIWベルリン)のエネルギー・交通・環境部門の責任者クラウディア・ケムフェルト氏は、中国のメディアCGTNの取材に対し、次のように述べています。
ノルドストリームなしで3年がたった今でも、ドイツの市場はロシア産ガスなしで機能しており、再生可能エネルギーの比率が高まり、ガスの比率はわずかに低下しているという趣旨です。
これは、ドイツがロシア産ガスに依存しなくてもエネルギー供給を維持できるところまで来たことを示しています。一方で、新たな供給源への切り替えや再生可能エネルギーへの投資にはコストが伴い、それが企業や家計の負担増という形で表面化しています。
これから問われる「競争力」と「脱炭素」の両立
エネルギー価格が高止まりし、ノルドストリームのような大規模なガス供給ルートが事実上使えない今、ドイツにはいくつかの難しい問いが突きつけられています。
- 重工業の競争力をどう維持・再構築していくのか
- 家計の負担を抑えながら、エネルギーの安定供給をどう確保するのか
- 再生可能エネルギーをどこまで主力に高められるのか
エネルギーコストが4倍に跳ね上がった環境では、企業は設備投資や雇用を慎重に見直さざるを得ません。その結果として、ヨーロッパの産業地図やサプライチェーンがゆっくりと組み替わっていく可能性もあります。
一方で、再生可能エネルギーの比率が高まっているという事実は、長期的にはエネルギー安全保障と脱炭素の両立に向けた一歩とも受け取れます。ノルドストリーム爆発から3年という節目に、ドイツとヨーロッパは「安くて大量の化石燃料」に依存する時代から次の段階へと、否応なく踏み出しつつあるのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








