国連総会でネタニヤフ演説、パレスチナ承認巡り各国代表が一斉退場
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が、第80回国連総会の一般討論で演説した際、多くの各国代表が一斉に席を立ちました。パレスチナ国家承認をめぐる国際社会の溝が、国連の場で改めて可視化された形です。
国連総会で起きた集団退場
金曜日(現地時間)、第80回国連総会の一般討論でネタニヤフ首相が演説に立つと、国連総会の本会議場のあちこちから代表団が立ち上がり、そのまま退場しました。
複数の代表がブーイングを浴びせる一方で、一部の代表からは拍手も送られ、議場は賛否が割れた緊張した空気に包まれました。
背景:パレスチナ国家承認と二国家解決
今回の緊張の背景には、パレスチナを国家として承認する動きの広がりがあります。フランス、イギリス、ポルトガル、オーストラリア、カナダなど、複数の欧米諸国が最近、パレスチナを国家として承認し、二国家解決を支持する立場を鮮明にしています。
国連加盟国のうち、すでに150か国以上がパレスチナを承認しているとされます。国際社会の多数派が、パレスチナを国家として扱う方向に傾いていることが分かります。
二国家解決とは、イスラエルとパレスチナがそれぞれ独立した国家として共存することで、紛争を終わらせようとする構想です。国際社会では長年、和平の基本的な枠組みの一つとみなされてきました。
ネタニヤフ首相の強い反発
ネタニヤフ首相は演説の中で、こうしたパレスチナ承認の動きに強く反発しました。最近パレスチナを国家として承認した国々を名指しで批判し、その行為はパレスチナ側に「ユダヤ人を殺せば報われる」という明確なメッセージを送るものだと主張しました。
さらに、パレスチナ側は二国家解決を信じたことがなく、イスラエルの隣にパレスチナ国家をつくるのではなく、イスラエルに取って代わるパレスチナ国家を望んでいると述べました。
また、いかなる国境であれユダヤ人国家を認めないというパレスチナ側の「一貫した拒否こそが、1世紀以上にわたってこの紛争を駆り立ててきた」と語り、紛争の原因はパレスチナ側の姿勢にあると強調しました。
ハマスの強い反発と批判
これに対し、パレスチナのイスラム組織ハマスは声明を出し、ネタニヤフ首相の発言を「うそであり、彼が犯しているとされる虐殺、強制移住、組織的な飢餓をあからさまに否定するものだ」と強く非難しました。
ハマス政治局メンバーのイッザト・アルリシク氏は、ネタニヤフ首相の周りには「虐殺を支持して拍手を送るためだけに国連総会の議場に入場した取り巻きの喝采」しか残っていなかったと述べ、演説を支持した各国代表も厳しく批判しました。
イスラエル国内からも飛んだ冷ややかな視線
ネタニヤフ首相の演説は、イスラエル国内でも賛否を呼んでいます。最大野党の一つを率いるヤイル・ラピド氏は、演説を「中身のない見せかけだけのものだ」と切り捨てました。
ラピド氏はX(旧ツイッター)への投稿で、「世界はきょう、疲れ果て、愚痴をこぼすイスラエルの首相と、使い古された仕掛けで埋め尽くされた演説を目にした」と述べ、具体的な政策の提示がなかったと批判しました。
国際社会の溝が浮き彫りに
今回の一連のやりとりは、イスラエルとパレスチナをめぐる国際世論の分断を改めて浮き彫りにしました。パレスチナを国家として承認し、二国家解決を後押ししようとする国々と、パレスチナ側の姿勢を厳しく批判するイスラエルとの立場の差が、国連という国際舞台で正面からぶつかった形です。
国連総会の議場から代表が退場するという行動は、発言内容への強い異議を示す象徴的な抗議の手段でもあります。一方で、ネタニヤフ首相の演説に拍手を送った代表もいたことから、国際社会の中でも評価が割れていることがうかがえます。
これからの焦点
今後の焦点として、次のような点が注目されます。
- パレスチナ国家承認の動きが、今後さらに他の国や地域へ広がるのかどうか。
- パレスチナ承認や二国家解決を後押しする国々とイスラエルとの外交関係が、どのように変化していくのか。
- イスラエル国内で、和平や安全保障をめぐる議論がどのように深まり、ネタニヤフ政権への評価にどう影響するのか。
ニュースを読む私たちに問われるもの
イスラエルとパレスチナの紛争は、歴史、宗教、土地、難民問題など、多くの要素が絡み合う複雑な問題です。どちらか一方の主張だけを聞いて全体を理解することは難しく、今回の国連総会でのやりとりも、その複雑さを映し出していると言えます。
ニュースを追う私たちにとっては、次のような問いを持ちながら状況を見つめることが大切かもしれません。
- どのような形なら、双方にとって「受け入れ可能な和平」と言えるのか。
- 国際社会は、対立をあおるのではなく、対話をどう後押しできるのか。
- 特定の民族や宗教への憎悪ではなく、具体的な政策や行為への批判として議論を組み立てられるか。
国連総会の一場面として報じられる今回の「退場劇」は、遠い国の出来事のように見えるかもしれません。しかし、その背後には、戦争と平和、正義と安全保障、国家承認をめぐる重い選択が横たわっています。日々のニュースの中で、その重さをどう受け止めるかが、私たち一人ひとりに問われています。
Reference(s):
cgtn.com








