トランプ米大統領のガザ和平案 二国家解決を外して広がる懐疑
トランプ米大統領が今年9月末、イスラエルのネタニヤフ首相と共に発表したガザ戦闘終結に向けた「20項目」案が、国際ニュースの焦点になっています。戦闘停止や人道支援拡大をうたいながらも、二国家解決を明示的に盛り込んでいないことへの懐疑が広がっています。
ガザ戦闘終結をめざす「20項目」案とは
トランプ米大統領の提案は、イスラエル・ガザ情勢の安定化と恒久的な和平を目指すとされています。複数の報道によると、主なポイントには次のような項目が含まれます。
- イスラエルが提案を正式に受け入れてから72時間以内に、人質全員を生死にかかわらず解放・送還すること
- ガザでの戦闘を終結し、人道支援を拡大すること
- ガザの再建と治安維持のため「国際安定化部隊」を創設する構想
- 将来的なガザ統治を担う暫定的な民政当局を設置する構想
しかし、この案をハマス側はなお検討中とされ、イスラエルが受け入れた場合、72時間という猶予の短さがハマスへの圧力として働いていると指摘されています。
「イスラエル寄り」「中身が曖昧」との指摘
実施方法が見えにくい国際安定化構想
The Conversationは、トランプ案がハマスよりもイスラエルに有利な設計になっているうえ、実施の具体像が極めて不透明だと分析しています。特に、ガザに展開するとされる「国際安定化部隊」にどの国が参加するのか、またガザ再建を統括する民政当局に、トランプ氏やブレア元英国首相以外に誰が関わるのかといった点は明らかにされていません。
ガザの治安維持や再建を国際枠組みに委ねる発想自体は、域内の緊張を和らげる可能性もありますが、参加国や権限、責任の範囲が曖昧なままでは、現場の混乱や権力空白を生むリスクも指摘されています。
パレスチナの独立は「象徴的な約束」にとどまる?
The New York Timesは、多くのパレスチナ人が、この案が示す独立国家への道筋を「遠く、曖昧な将来像」にすぎないと受け止める可能性が高いとみています。同紙は、一方でこの案が、パレスチナ側の国家権利を完全に否定するものではなく、一定の「象徴的なコミットメント(約束)」も含んでいると評価しています。
とはいえ、具体的な二国家解決のスケジュールや枠組みが示されていない以上、政治的な自決権を求めるパレスチナ側からは、十分な前進とは受け止められにくい状況です。
専門家はどう見ているか
シリアからの視点:「暴力の停止」と「二国家解決の欠如」
シリアのラタキアを拠点とするアナリスト、スティーブン・サフーニ氏は、中国のメディアに対し、この計画には「プラス面とマイナス面の両方がある」と語っています。
- プラス面として、パレスチナの人々が現在経験している殺りくと苦しみから解放される可能性がある点を挙げています。戦闘の停止と人道支援の拡大は、今すぐにでも必要とされている措置だからです。
- マイナス面として、案が二国家解決を伴わず、パレスチナ人が自らの国家を持ち、自らの土地を統治する権利を保障していない点を指摘しています。
サフーニ氏は、将来のガザ統治において、パレスチナ人が主体的な役割を担わない懸念にも言及しています。彼によれば、ガザの管理はアラブ諸国や欧米諸国など「外部の主体」に委ねられ、パレスチナ人自身が土地をコントロールできない構図が続きかねません。
上海の研究者:「戦闘終結には寄与、しかし不平等」
上海外国語大学中東研究所の丁隆(ディン・ロン)教授は、この案が、イスラエルとハマスの戦闘を終わらせ、ガザへの人道支援を大幅に拡大し、イスラエルによるガザの占領や併合を行わないことを保証するという点で、一定の前進を含んでいると評価します。
その一方で、丁教授は「全体として見れば、ハマスとパレスチナにとって不平等な合意だ」と指摘しています。政治的な側面では、将来のガザが「非政治的な暫定統治機構」によって運営されるとされ、ハマスが政治的役割を担う余地は認められていません。また、イスラエルのネタニヤフ首相が、パレスチナの国民的統治主体であるパレスチナ解放機構・パレスチナ自治政府がガザ再建の統治に関与する可能性を排除しようとしているとも述べています。
二国家解決を外した和平案が意味するもの
今回のトランプ案の特徴は、「戦闘の停止」と「人道支援」「治安・統治の暫定枠組み」に重点が置かれる一方で、パレスチナ国家樹立を含む二国家解決の具体像が示されていない点にあります。これは、短期的な安全と人道状況の改善を優先するアプローチとも言えます。
しかし、紛争の根底にある主権や領土、難民問題などの核心が先送りされれば、将来の不満や暴力の火種を残すことにもなりかねません。ガザの再建と治安維持を誰がどのような正統性に基づいて担うのかという問いも、依然として解決されていません。
これから注視すべきポイント
今後、国際ニュースとして注目される論点は、次のような点になりそうです。
- ハマスが最終的にこの案を受け入れるのか、それとも修正や代替案を求めるのか
- 「国際安定化部隊」にどの国・地域が参加し、その権限がどこまで認められるのか
- ガザの暫定統治機構に、パレスチナ側のどの勢力がどの程度関与できるのか
- 今回の案が、将来的な二国家解決の土台となるのか、それとも切り離された「停戦管理」の枠組みにとどまるのか
戦闘の停止と人道支援の拡大は、今のガザにとって緊急に必要なステップです。一方で、中長期的な政治解決とパレスチナ人の自己決定権をどう位置づけるかという課題は残されています。トランプ米大統領の「20項目」案は、その両者のバランスをどう取ろうとしているのか、そしてそれが現地の人々にどう受け止められていくのかを、これからも丁寧にフォローしていく必要があります。
Reference(s):
Trump's Gaza plan draws skepticism for sidelining two-state solution
cgtn.com








