在米中国大使館が建国76周年レセプション 謝鋒大使が米中関係の「羅針盤」を提示
2025年9月29日、在米中国大使館が中国の建国76周年を記念するレセプションを開催しました。謝鋒(Xie Feng)駐米中国大使はスピーチで、中国を「安定・平和・進歩」の力として位置づけつつ、米中関係の今後の方向性を示しました。本稿では、その主なメッセージを国際ニュースとして整理します。<\/p>
ワシントンで開かれた建国76周年レセプションの概要<\/h2>
レセプションは9月29日(月)、ワシントンの在米中国大使館で行われました。長年にわたり米中関係に関わってきた米国各界の関係者が招かれ、謝鋒大使が来場者に感謝の意を表しました。<\/p>
冒頭には、中国の宇宙ステーションからの特別メッセージとして、神舟20号の乗組員である陳冬氏、陳仲瑞氏、王傑氏のビデオ挨拶が上映されました。謝大使は「宇宙から参加してくれた3人のタイコノートに感謝したい」と述べ、会場を沸かせました。<\/p>
「安定・平和・進歩」を掲げた中国の自己像<\/h2>
謝大使のスピーチは、中国を「世界の安定の力」「世界の平和の力」「世界の進歩の力」として位置づける構成になっていました。経済、安全保障、グローバル・ガバナンスの三つの側面から、中国の役割を強調しています。<\/p>
世界経済の「安定要因」として<\/h3>
まず謝大使は、保護主義の台頭や格差拡大、世界経済の低成長といった状況に触れた上で、中国が「世界経済の安定の力」となっていると主張しました。具体的には次のような点を挙げました。<\/p>
- 2025年上半期の中国のGDP成長率は前年同期比5.3%で、主要国の中でも高い水準であること。<\/li>
- 過去10年以上にわたり、中国が世界経済成長への貢献度で30%超を占めてきたと紹介。<\/li>
- IMF(国際通貨基金)の試算として、中国の成長率が1ポイント上がると、他国の成長率が平均で約0.3ポイント押し上げられると説明。<\/li>
- 保護主義が広がる中でも、中国は一方的かつ制度的な対外開放を拡大してきたと強調。中国国際輸入博覧会、広州交易会(カントンフェア)、中国国際サービス貿易交易会、中国国際サプライチェーン博覧会などのプラットフォームを整備してきたこと。<\/li>
- 外交関係のあるすべての最貧国に対し、輸入品目の100%に無税枠を提供していること。<\/li>
- 「一帯一路」協力により、4,000万人以上が貧困から脱却したと説明し、中国の発展が世界の発展の機会になっていると述べたこと。<\/li>
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謝大使は、中国が今後も自国の発展を通じて、世界の平和・発展・近代化により大きな貢献をしていくと語りました。<\/p>
平和と安全保障へのコミットメント<\/h3>
次に謝大使は、中国を「世界の平和の力」と位置づけました。2025年が中国人民の抗日戦争と世界反ファシズム戦争の勝利80周年にあたることに触れ、中国が14年にわたる抵抗と3,500万人を超える死傷者を代償に、主要な東部戦線として戦争勝利に不可欠な貢献をしたと振り返りました。<\/p>
そのうえで、「歴史は改ざんされるべきではなく、真実は歪められてはならない。第二次世界大戦の歴史観を正しく保つことが、悲劇の再発を防ぐ鍵だ」と強調しました。<\/p>
現在の世界については、「伝統的な軍事紛争と非伝統的な安全保障上の脅威が絡み合い、世界は安穏とはほど遠い」との認識を示し、次のように述べました。<\/p>
- 過去76年間、中国は一度も戦争を始めておらず、平和と安全に関して最も良い記録を持つ大国であると主張。<\/li>
- 平和五原則に基づく外交、周辺国との国境画定、グローバル安全保障イニシアチブの打ち出し、国際調停機構の設立などを挙げ、中国が一貫して政治的解決を重視してきたと説明。<\/li>
- 紛争の「ホットスポット」に対する政治解決の推進や、国連平和維持活動への積極的参加を通じて、世界平和を守る「堅固な守り手」であると位置づけ。<\/li>
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そして、「中国の力が増すたびに、世界平和の見通しも高まる」と述べ、中国の発展と安全保障上の役割を結びつけました。<\/p>
グローバル・ガバナンスへの提案<\/h3>
三つ目の柱として、謝大使は、中国を「世界の進歩の力」として紹介しました。現行の国際秩序や制度における「機能不全」「非効率」や「不公正・不合理な取り決め」を課題として挙げ、習近平国家主席が提唱した「グローバル・ガバナンス・イニシアチブ」に言及しました。<\/p>
謝大使によれば、このイニシアチブの核心は次のような原則です。<\/p>
- 国家の主権平等を堅持すること。<\/li>
- 国際法に基づくルールを守ること。<\/li>
- 多国間主義を実践し、一国主義や二重基準を拒否すること。<\/li>
- 人々を中心に据え、実際の行動に焦点を当てること。<\/li>
- 国連憲章の趣旨と原則を体現しつつ、国連の権威と役割を守ること。<\/li>
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また、「幅広い協議、共同建設、成果の共有」という考え方を強調し、すべての国々がグローバル・ガバナンスの参加者・意思決定者・受益者として平等であるべきだと述べました。そのうえで、中国は「歴史の正しい側、公平と正義の側、人類の進歩の側に常に立つ」と語りました。<\/p>
米中関係に向けた三つの呼びかけ<\/h2>
スピーチの後半は、米中関係に焦点が当てられました。第二次世界大戦中に両国がファシズムに対抗して共に戦った歴史や、戦後の国際秩序の構築に共同で貢献したことに触れたうえで、「両国は国連安全保障理事会の常任理事国であり、世界第1位と第2位の経済大国として、より大きな責任を負うべきだ」と述べました。そのうえで、三つの具体的な方向性を提示しました。<\/p>
1. 利益の統合を深める「パートナー」に<\/h3>
謝大使は、米中の経済関係について、相互依存と利益の融合がすでに深いレベルに達していると強調しました。1979年の国交樹立時と比べ、両国の貿易額は約2.5億ドル未満から昨年の6,882億ドルへと275倍に拡大したと紹介し、そのレジリエンス(回復力)と内在的な勢いを示すものだと説明しました。<\/p>
さらに、中国が世界最大かつ最も活力のある市場へと成長したことで、米国からより多くの製品を購入し、米国企業にビジネス機会を提供できるようになっていると述べました。謝大使は次のような数字も挙げました。<\/p>
- 中国に投資・事業展開する約7万3,000社の米国企業のうち、推計82%が利益を上げていると紹介。<\/li>
- 7月に開催された中国国際サプライチェーン博覧会では、米国からの出展企業数が前年より15%増加し、米国外からの出展企業として最大のグループとなったと説明。<\/li>
謝大使は、こうした事実が「米中経済・貿易関係が相互利益にもとづくものであり、中国を受け入れることはチャンスを受け入れることだ」と物語っていると述べました。さらに、両国が協力できる分野として、以下の例を挙げました。<\/p>
- 不法移民対策<\/li>
- フェンタニル問題<\/li>
- 通信詐欺や金融犯罪の防止<\/li>
- がん予防、感染症対策<\/li>
- 人工知能(AI)の安全な活用<\/li>
こうした分野が、米中協力の「ハイライト」と「成長点」になり得るとし、「協力のリストをより長くし、協力のパイをより大きくすることで、両国と世界がともに利益を得るべきだ」と呼びかけました。<\/p>
2. 相違を適切に管理し「平和と安定の守り手」に<\/h3>
一方で、謝大使は「米中間にはこれまでも、そしてこれからも違いが存在する」と指摘しましたが、重要なのは「互いの核心的利益と重大な関心事項を尊重し、両国関係の『安全弁』をつくることだ」と述べました。<\/p>
その文脈で、台湾問題が米中関係の政治的基礎に関わるものであり、適切に扱われなければ対立や衝突を招きかねないと強調しました。米側に対しては、次のように求めました。<\/p>
- 一つの中国原則と3つの中米共同コミュニケに従うこと。<\/li>
- 「台湾の地位は未定」という見方を広めることをやめること。<\/li>
- 国連総会決議2758号を含む国際社会のコンセンサスに挑戦しないこと。<\/li>
- 「一線」を踏み越えたり試そうとしたりしないこと。<\/li>
また、関税戦争や貿易戦争について「勝者なき戦い」であると指摘し、産業・サプライチェーンの「デカップリング(切り離し)」を試みることは世界の不安定化につながり、最終的には誰の利益にもならないと述べました。<\/p>
最近の経済・貿易協議で前向きな進展が見られることを踏まえ、「対等な立場での協議こそが、問題解決の正しい道筋だ」と強調しました。<\/p>
さらに謝大使は、「米中が協力するとき、世界は安心する。対立すれば、世界は不安になる」と述べ、両国が「不衝突・不対抗」というボトムラインを守り、揺れ動く世界により多くの安定性をもたらす必要があると訴えました。<\/p>
3. 人民交流を広げる「善意の架け橋」に<\/h3>
謝大使は、習近平国家主席の言葉として、「米中関係の希望は人民にあり、その土台は社会にあり、その未来は若者にあり、その活力は地方・草の根レベルの交流から生まれる」と紹介しました。<\/p>
その具体例として、かつての「ピンポン外交」から最近のピックルボール交流、「顧る(クーリアン)の縁」と呼ばれる民間交流、第二次世界大戦中に中国で戦った「フライング・タイガース」とその友好学校、40年前にアイオワで芽生えた交流から近年の「5年で5万人」交流プログラムに至るまで、太平洋をまたぐ相互理解の橋が何度も築かれてきたと振り返りました。<\/p>
そのうえで、米国の参加者に向けて次の「朗報」を紹介しました。<\/p>
- 中国の「240時間トランジットビザ免除」政策を利用できること。<\/li>
- 今後、「中国領事」アプリを通じて、数クリックで中国ビザを申請できるようになる見通しであること。<\/li>
謝大使は、米側にも同じ方向に歩み出し、両国民の往来と交流をより円滑にすることを期待すると述べました。<\/p>
中国のことわざと「巨大な船」の比喩<\/h2>
スピーチの終盤で謝大使は、「山は土の層によって成り、海は水の滴によって成る」という中国のことわざを引用し、次のように語りました。<\/p>
- 76年にわたる努力を通じて、中国人民は「幸福や明るい未来は自然に訪れるものではなく、勇気と粘り強さを持つ者にのみ微笑む」ことをよく理解するようになった。<\/li>
- 同様に、米中関係も決して順風満帆ではなく、双方の努力が欠かせない。<\/li>
そして米中関係を「巨大な船」にたとえ、「17億を超える人々の幸福を乗せた巨船が、方向を見失わず、速度を落とさず、衝突も起こさず、正しい航路に沿って波を切り進んでいくことを共に確保しよう」と呼びかけました。<\/p>
最後に謝大使は、在米中国大使館が近年、「エンバシー・シェフ・チャレンジ」で繰り返し受賞していることに触れ、シェフたちが用意した料理を楽しむよう招待しました。その後、「中華人民共和国建国76周年」「中米両国人民の友情と協力」「出席者とその家族の健康と幸福」に乾杯を提案し、スピーチを締めくくりました。<\/p>
なぜこのスピーチが注目されるのか<\/h2>
今回のレセプションとスピーチは、中国が自国をどのように位置づけ、米国との関係をどの方向に導こうとしているのかを示すメッセージと言えます。<\/p>
- 経済面では、開放と協力を通じて世界成長を下支えする「安定の力」であること。<\/li>
- 安全保障面では、歴史認識と平和的解決を重視する「平和の力」であること。<\/li>
- グローバル・ガバナンスでは、多国間主義と国連中心の秩序を掲げる「進歩の力」であること。<\/li>
同時に、台湾問題などの敏感な課題について「一線」を示しつつも、協力分野の拡大や人的交流の促進に大きなスペースがあると位置づけている点も印象的です。<\/p>
米中関係の行方は、両国だけでなく、アジアや世界経済全体にも影響します。謝大使のメッセージを踏まえて、私たちは次のような問いを持つことができそうです。<\/p>
- 米中は、経済・安全保障・技術といった分野で、どこまで「協力」と「競争」のバランスを取れるのか。<\/li>
- 歴史認識や台湾問題などの難しい課題を抱えながら、どのように「不衝突・不対抗」のボトムラインを維持していくのか。<\/li>
- 地方や市民レベルの交流は、外交の緊張を和らげる力になり得るのか。<\/li>
2025年のいま、ワシントンで語られたこのスピーチは、米中関係だけでなく、日本を含むアジアの読者にとっても、国際秩序と自国の立ち位置を考える手がかりになりそうです。<\/p>
※本記事は、在米中国大使館での謝鋒大使のスピーチ内容をもとに構成しました。<\/p>
Reference(s):
cgtn.com








