ロシアが警告 ウクライナ・ザポロジエ原発で外部電源喪失続く
ウクライナ南部にある欧州最大のザポロジエ原子力発電所が、外部電源を失った状態で非常用ディーゼル発電に依存する事態が続き、ロシアとウクライナの主張が対立するなか、国際原子力機関(IAEA)が重大な懸念を示しています。
ザポロジエ原発で何が起きているのか
ロシア側によると、旧ソ連時代に建設されたザポロジエ原発は、戦闘の影響で外部電力線が切断され、現在は非常用ディーゼル発電機によって原子炉の冷却が続けられています。
同原発の広報担当者エフゲニヤ・ヤシナ氏は「発電所の状況は制御下にあり、職員はこうした事態への対応訓練を受けている。放射線レベルも正常だ」と説明しています。
ロシアの国営通信社RIAが伝えたところによると、ロシア側が任命した発電所の運営陣は、予備の電力供給は当面の運転に十分だとしつつも、通常の外部電源を供給していたドニエプロフスカヤ送電線の復旧は、ウクライナ側による砲撃のため「不可能な状況だ」と述べています。
IAEAが示す深刻な懸念
戦闘が続くウクライナでは、複数の旧ソ連時代の原発周辺で激しい戦闘や無人機攻撃、砲撃が繰り返されてきました。IAEAは以前から、大規模な原子力事故につながりかねないとして警告を強めてきました。
IAEAによると、原子炉や使用済み燃料プールを冷却するためには、ポンプで水を循環させる外部電源が不可欠です。ザポロジエ原発は1週間以上にわたり外部電源を失った状態が続いており、ラファエル・グロッシ事務局長は「欧州最大の原子力発電所がこれほど長期間外部電源なしで運転されたのは、3年半あまりに及ぶ戦争の中で最長だ」と危機感を示しています。
同原発には、旧ソ連設計の水冷却・水減速型のVVER-1000 V-320原子炉が6基あり、いずれも現在は停止中とされています。しかし、IAEAは、外部電源も非常用電源も失われれば、核燃料が加熱しメルトダウン(炉心溶融)の危険があると指摘しています。
グロッシ事務局長は「原子炉と使用済み燃料の現在の状態は、非常用ディーゼル発電機が安全上重要な機能と冷却に必要な電力を十分に供給し続けられる限りは安定している」としつつ、「外部からの送電を一刻も早く回復させることが極めて重要だ」と強調しました。
ロシアとウクライナ、真っ向から対立する主張
外部電源が途絶した原因や、その復旧が進まない理由をめぐっては、ロシアとウクライナの主張が大きく食い違っています。
ロシア側の説明では、ドニエプロフスカヤ送電線がウクライナ側の砲撃によって損傷したため復旧できないとしています。一方、ウクライナ側は、ロシアが復旧作業を妨げていると反論しており、責任の所在をめぐる応酬が続いています。
ロシア大統領府(クレムリン)は、発電所をロシア側が実効支配している状況を挙げ、「ロシアが自ら管理下にある施設を砲撃するはずがない」として、ウクライナ側からの非難は「筋が通らない」と主張しています。
なぜ外部電源がそこまで重要なのか
原子炉が停止していても、核燃料はしばらく熱を出し続けます。この熱を取り除くには、ポンプで水を循環させる冷却が必要で、そのための電力が欠かせません。
現在、ザポロジエ原発では非常用ディーゼル発電機がこの役割を担っていますが、非常用設備はあくまで短期利用を前提としており、燃料の補給や機器の信頼性などに常に不確実性がつきまといます。
IAEAが「外部電源の復旧が極めて重要」と繰り返し強調するのは、こうしたリスクをできるだけ早く解消するためでもあります。
今後の焦点と国際社会の懸念
現在のところ、プラント側は状況を「制御下にある」と説明し、放射線レベルも正常だとしています。しかし、戦闘が続く中で外部電源の途絶が長期化している事実は、国際社会に大きな不安を与えています。
今後の焦点となるのは、次のような点です。
- 外部電源がいつ、どのような形で復旧されるのか
- 非常用ディーゼル発電機が安定して運転を続けられるのか
- ロシアとウクライナが、原子力施設の安全確保をめぐって何らかの合意に達する余地があるのか
欧州最大の原発で外部電源喪失が過去最長レベルで続いているという事実は、ウクライナ戦争がもたらすリスクが、戦場だけでなく周辺地域や環境、安全保障全体にも及んでいることを改めて浮き彫りにしています。
ザポロジエ原発をめぐる動きは、今後も国際ニュースとして注視する必要がありそうです。
Reference(s):
Russia says external power needed for Ukraine nuclear power plant
cgtn.com








