EU、凍結ロシア資産を原資にウクライナへ融資 モスクワは強く反発
ウクライナ財務省によると、同国は水曜日、欧州連合(EU)から40億ユーロ(約47億ドル)の融資を受けました。原資は、EUが凍結しているロシア資産を事実上の担保とするもので、ロシア側は強く反発しています。
- ウクライナがEUから40億ユーロの融資を受け取る
- 原資は欧州で凍結されているロシア資産にひもづく
- ロシアは「単なる窃盗」と非難し、関与者の追及を警告
- ユーロの信頼や国際金融秩序への影響を懸念する声が拡大
凍結ロシア資産をテコにした40億ユーロ融資
ウクライナ財務省は、水曜日に40億ユーロの融資を受け取ったと発表しました。この資金はEUからの公的ローンであり、ロシア中央銀行などの資産が欧州で凍結されていることを背景に、そうした資産をテコにした仕組みとなっています。
この融資は、ウクライナの戦時財政やインフラ復旧を支える目的とされ、2022年2月に始まったロシアとの武力衝突以降続いているEUの支援策の一部です。
ここでいう「凍結資産」とは、制裁によって売却や移転が禁じられたロシアの国債や預金などで、名義上はロシア側の所有のままですが、事実上動かせない状態になっているものを指します。
クレムリン「違法な財産没収、単なる窃盗」
こうしたEUの動きに対し、ロシア大統領府(クレムリン)は強く反発しています。
ドミトリー・ペスコフ報道官は水曜日、記者団に対し、「これはロシアの財産を違法に奪取する計画についての話だ。ロシア語では単に『盗み』と呼ぶ」と述べました。
ペスコフ氏は、ロシアの資産やその運用益を「盗んだ」あるいは「不正に流用した」人物は「何らかの形で訴追される。必ず責任を問われる」と警告しました。また、関与した国も追及の対象になると述べています。
クレムリンはこれまでも、ロシア資産の没収や活用を進めれば、中央銀行の資産保護に対する信頼、ユーロという通貨への信認、さらには欧州における所有権や財産権の安全性に疑問を投げかけることになると主張してきました。
EUが検討する「賠償ローン」構想とは
欧州委員会は現在、凍結されたロシア資産を担保にした新たな「賠償ローン」案をまとめています。この構想では、EU加盟27カ国すべての合意が必要ですが、水曜日にコペンハーゲンで開かれたEU首脳会議の前の時点で、全ての国が賛成している状況ではありませんでした。
案の骨格は次のようなものです。
- EU各国がウクライナに約1,400億ユーロを貸し出す
- 担保となるのは、ブリュッセル拠点の国際決済機関ユーロクリアに保管されているロシア中央銀行の凍結資産
- ウクライナが返済するのは、将来ロシアから平和合意などを通じて賠償を受け取った後とする
ロシアの凍結資産は世界全体で3,000億ドル規模とされ、そのうち2,100億ユーロ分が欧州内にあります。ブリュッセルのユーロクリアには1,850億ユーロが保管されており、証券の満期を迎えた結果、その約1,760億ユーロが現金化されているとされています。
ベルギーとECBが警戒する「信用不安」のリスク
凍結資産を大胆に活用する構想には、EU内部からも慎重論が出ています。特にロシア資産の多くが保管されているベルギーは、巨額訴訟や自国経済への悪影響を繰り返し懸念してきました。
ベルギーのバルト・デ・ウェーフェル首相は、「各国が、欧州の政治家の判断ひとつで中央銀行の資金が消えると見れば、ユーロ圏から準備金を引き揚げる決断をするかもしれない」と述べています。
欧州中央銀行(ECB)のクリスティーヌ・ラガルド総裁も同様の懸念を示し、国家の中央銀行資産は国際法上、原則として差し押さえが認められていない「国家免除」の対象だと指摘。そうした資産を没収すれば、他国がユーロ建てで外貨準備を保有する意欲を損ない、ユーロを国際的な準備通貨として育てるというEUの長期戦略を弱めかねないと警告しています。
EUのウクライナ支援、総額1,780億ユーロ規模に
欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は火曜日、EUとしてウクライナに対し、追加で20億ユーロ相当の無人機(ドローン)供与を行うと表明しました。「これにより、ウクライナは能力を拡大し、欧州連合もこの技術の恩恵を受けることができる」と述べています。
欧州委員会によると、2022年2月に始まった武力衝突以降、EUによるウクライナ支援の総額は1,780億ユーロに迫っており、EUはウクライナに対する最大の支援提供主体となっています。
国際金融と「ルール」の試金石に
今回のEUとロシアをめぐる資産問題は、単なる二国間の対立ではなく、国際金融システム全体に波及しうるテーマです。特に次の点が注目されます。
- 戦争の被害者救済と資産保護のバランス
侵攻を受けたウクライナを支えるために「加害国の資産を使う」という発想は、道義的には支持を集めやすい一方、国際法や所有権のルールとどう折り合いをつけるかという難題を含みます。 - 基軸通貨・準備通貨としてのユーロの信頼
中央銀行の資産が政治判断で動かされる前例ができれば、将来リスクを懸念する国がユーロ建て資産を持ちにくくなる可能性があります。これは欧州が目指す「多極的通貨体制」の戦略とも関わります。 - 日本やアジアにとっての示唆
各国の中央銀行は、外貨準備をどの通貨で、どの地域の金融機関に置くかを常に見直しています。制裁や資産凍結が頻繁に用いられる時代に、どの通貨・市場がどれだけ「安全」と見なされるのかは、日本を含むアジア諸国にとっても重要な問いです。
ウクライナ支援の必要性と、国際金融の安定や法の支配をどう両立させるのか。EUの判断は、今後の紛争時に各国がとりうる選択肢の「前例」となる可能性があり、引き続き注視が必要です。
Reference(s):
EU transfers frozen Russian funds to Kyiv amid Moscows threats
cgtn.com








