トランプ米大統領のH-1Bビザ10万ドル追加料を巡り、労組などが提訴
米国のトランプ大統領が高度技能職向けのH-1Bビザに新たに10万ドルの追加料を課す方針を打ち出したことに対し、労働組合や大学教員団体、宗教団体などが金曜日、サンフランシスコの連邦裁判所に差し止めを求める訴えを起こしました。米国の移民政策と高度人材受け入れをめぐる攻防が、司法の場に持ち込まれています。
10万ドル追加料の中身は? H-1Bビザを揺るがす新宣言
訴訟の対象となっているのは、トランプ大統領が約2週間前に発した大統領宣言です。この宣言は、新たにH-1Bビザを取得する外国人労働者について、雇用主がビザ申請にかかる既存の各種手数料に加え、10万ドルの追加支払いを行わない限り、当該労働者の米国入国を認めないとする内容です。
政権側は、この措置はすでにH-1Bビザを保有している人や、9月21日以前に申請を済ませた人には適用されないと説明しています。
現在、H-1Bビザをスポンサーする米国企業は、企業規模などに応じて通常2,000〜5,000ドル程度の手数料を支払っています。10万ドルの追加料が課されれば、負担は一挙に数十倍に膨らむことになります。
誰が訴えたのか:労組・大学・宗教団体の連合
今回の訴えを起こしたのは、自動車産業の労働組合である全米自動車労組(United Auto Workers)、全米大学教授協会(American Association of University Professors)、看護師の採用を手がける人材会社、複数の宗教団体など、多様な利害関係者の連合です。
原告側は、米国大統領には特定の外国人の入国を制限する権限はあるものの、議会が定めたH-1Bビザ制度という包括的な法体系を一方的に書き換える権限はないと主張しています。また、米国憲法の下で、手数料や税などの形で政府収入を生み出す仕組みを一方的に課す権限は議会にのみ与えられており、大統領が単独で新たな実質的な「税」に相当する負担を設けることはできないと指摘しています。
訴状は、新たな宣言によってH-1Bビザが、雇用主が高額の参加料を払うか、あるいは国土安全保障長官の裁量で与えられる「国益」名目の例外を求めるかという制度に変質させられたと批判しています。こうした枠組みは、恣意的な運用や選別的な適用、さらには汚職の温床になりかねないと懸念を示しました。
トランプ大統領の論拠:米国人雇用と国家安全保障
一方、トランプ大統領は、大量の比較的低賃金の労働者がH-1Bビザで米国に入っている現状が、制度の本来の趣旨を損ない、国家安全保障をも脅かしていると主張しています。
大統領は、H-1Bプログラムによって米国人労働者の大規模な置き換えが進み、賃金の抑制や雇用機会の喪失につながっているとし、これが米国の経済的・国家安全保障上の利益を損なうと訴えています。また、理工系分野での外国人労働者の流入が、米国人の科学技術分野への進学やキャリア選択を妨げているとも述べています。
H-1Bビザとは? 高度人材争奪戦の主戦場
H-1Bビザは、米国の企業が専門性の高い職種で外国人労働者を一時的に雇用する際に利用する就労ビザです。特にITをはじめとするテクノロジー企業は、高度なスキルを持つ人材の多くをH-1Bビザで受け入れており、制度への依存度が高いとされています。
経済界や主要企業は長年、H-1Bビザが「必要なスキルを持つ米国人労働者が不足している」という現状に対応するために欠かせない仕組みだと主張してきました。
H-1Bプログラムでは、特別な専門職に就く一時的な外国人労働者に対し、年間6万5,000件のビザが発給されるほか、修士号以上の高学位を持つ労働者向けに追加で2万件の枠が設けられています。ビザの有効期間は通常3〜6年とされ、期間内で米国内での就労が認められます。
司法判断が左右するもの:企業負担と高度人材の行き先
今回の訴訟は、H-1Bビザをめぐる制度論だけでなく、大統領がどこまで単独で移民政策や経済政策を動かせるのかという、権力分立の根幹にも関わる争いです。
- 追加料が認められれば、企業が海外の高度人材を採用するコストは大幅に増加し、特にスタートアップや中小企業には大きな負担となる可能性があります。
- 一方、裁判所が原告の主張を認めれば、大統領が手数料や税の形で新たな負担を課すことに対し、明確な歯止めがかかることになります。
高度人材の獲得競争が世界的に激しくなるなかで、今回の判断は、米国だけでなく国際的な人材流動やイノベーションにも影響を与えるとみられます。米国の大学や企業を目指す人材が多い日本やアジアの読者にとっても、今後の裁判の行方は無関係ではありません。
これから何を注視すべきか
トランプ政権によるより厳格な移民政策と、企業・大学側が求める高度人材の確保との衝突は、今後もしばらく続きそうです。H-1Bビザをめぐる法廷闘争は、米国が「どのような形で世界の才能を受け入れていくのか」を映し出す試金石となる可能性があります。
日本から米国での就労や留学を考える人にとっても、H-1Bビザの動向は中長期的なキャリア設計に直結します。今回の訴訟が示すのは、制度の数字だけではなく、その背後にある政治・司法の動きまで見ておく重要性だと言えるでしょう。
Reference(s):
Trump's $100,000 fee for H-1B worker visas challenged in lawsuit
cgtn.com







