出生地主義めぐる米国論争、2つ目の控訴裁がトランプ令を違憲判断
米国で出生地主義をめぐる憲法論争が一段と激しくなっています。トランプ大統領の出生地主義制限令について、2つ目の連邦控訴裁判所が違憲と判断し、最終判断は連邦最高裁に委ねられる可能性が一段と高まりました。
2つ目の控訴裁が違憲判断 大統領令の全米差し止めを維持
米ボストンに本拠を置く第1巡回区連邦控訴裁判所は、民主党系の州政府と移民支援団体が勝ち取った差し止め命令を支持し、トランプ大統領の出生地主義を制限する大統領令は合衆国憲法修正14条に反すると判断しました。これにより、大統領令は引き続き全米で施行を禁じられたままとなります。
審理した3人の判事は全員一致で、下級審であるマサチューセッツ州連邦地裁(レオ・ソロキン判事)とニューハンプシャー州連邦地裁(ジョセフ・ラプラント判事)が出していた全国的な差し止めを維持しました。
今回の判断は、今年7月にサンフランシスコの第9巡回区連邦控訴裁が出した同様の判断に続くものです。2つの控訴裁が同じ結論に達したことで、最高裁が最終判断を示す流れが一段と現実味を帯びています。
トランプ大統領の出生地主義制限令とは
問題となっているのは、トランプ大統領が今年1月20日、再び就任した初日に出した大統領令です。この大統領令は、少なくとも片方の親が米国市民か永住権保持者(いわゆるグリーンカード保有者)でないかぎり、米国内で生まれた子どもを米国市民として認めないよう、行政機関に指示する内容でした。
もし施行されれば、親が不法滞在中の人や短期ビザで滞在している人など、さまざまな在留資格の家族に影響が及び、出生時に自動的に市民権を得られない子どもが多数生まれる可能性があると懸念されてきました。トランプ大統領の強硬な移民政策の柱の一つと位置づけられてきた施策です。
憲法修正14条と出生地主義:裁判所が見たポイント
米国憲法修正14条は、南北戦争後に制定され、「合衆国で出生し、かつその管轄下にあるすべての人は、合衆国およびその居住する州の市民である」と定めています。これが、米国のいわゆる出生地主義の憲法上の根拠とされています。
今回の判決文で第1巡回区のデビッド・バロン判事は、大統領令はこの条文の明確な文言と長年の判例に反すると指摘しました。約100ページに及ぶ詳細な判決ではありますが、同判事は問題の核心は難しくないと述べ、合衆国政府のいずれの部門も、ここまで組織的に出生による市民権を否定しようとしてこなかったと強調しました。
ホワイトハウスは反発「最高裁での逆転に期待」
ホワイトハウスのアビゲイル・ジャクソン報道官は声明で、第1巡回区は修正14条を誤って解釈していると反論しました。そのうえで「最高裁によってわれわれの立場が支持されることを期待している」と述べ、最高裁での逆転に意欲を示しました。
出生地主義の見直しは、トランプ政権が掲げる移民政策の中でも最も象徴的な争点の一つとなっており、司法との対立は今後も続く見通しです。
最高裁がカギに:全国差し止めとクラスアクション
トランプ政権はすでに、第9巡回区の判断などを不服として連邦最高裁に上告しており、今回の第1巡回区の判断も含めて審理を求めています。最高裁が受理すれば、この争点が高裁レベルを超えて全国的な注目を集めることは確実です。
今年6月、最高裁はこの大統領令を含む複数の政策をめぐる裁判で、下級裁判所が全米を対象とした広範な差し止め命令(いわゆるユニバーサル・インジャンクション)を出す権限を一定程度制限する判断を示していました。ただし、その際には出生地主義制限令そのものの合憲性については判断を避けています。
最高裁は同時に、全国規模の集団訴訟(クラスアクション)という手続きであれば、広い範囲を対象にした差し止めも認め得るとの示唆も与えました。これを受けて、ソロキン判事は自らの全国差し止め命令を改めて支持し、ラプラント判事も新たに全国的なクラスアクションの枠組みで大統領令を差し止めています。
日本の読者にとっての意味:国籍と憲法をどう考えるか
日本の国籍法は、原則として親が日本人かどうかを基準とする血統主義を採用しており、米国のような出生地主義とは仕組みが異なります。しかし「誰を国民とみなすのか」という問いは、どの国でも社会のあり方を左右する根本的なテーマです。
今回の米国の動きからは、次のような論点が見えてきます。
- 行政が憲法の解釈を大きく変えようとする時、司法はどこまでそれをチェックできるのか
- グローバル化する社会で、生まれた場所と親のルーツのどちらを重視すべきか
- 移民やその子どもたちの権利をどう保障するのか
米国の最高裁がどのような結論を出すにせよ、その判断は今後の移民政策だけでなく、憲法解釈や司法の役割をめぐる議論にも長く影響を与えるとみられます。日本からこのニュースを追うことは、自国の制度や価値観を見直すきっかけにもなりそうです。
Reference(s):
Second U.S. appeals court blocks Trump order on birthright citizenship
cgtn.com








