ベネズエラが大規模軍事演習 中南米で強まる米軍展開への警戒
2025年12月初め、ベネズエラが東部地域で大規模な軍事演習を開始し、ラテンアメリカで進む米軍の展開に対する緊張が一段と高まっています。麻薬対策を名目とした米軍の作戦拡大と、主権侵害だと反発するベネズエラの構図が鮮明になりつつあります。
ベネズエラ、「独立200」演習を東部3州で開始
ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は、今週末の土曜日にソーシャルメディアを通じて、全国防衛を統括する総合防衛司令部・ODDIを稼働させ、東部のアンソアテギ州、モナガス州、ボリバル州で「独立200(Independence 200)」と名付けた軍事演習を開始したと発表しました。
マドゥロ氏は、この軍事演習について「国家主権を十全に行使し、市民の生命を守ること」を目的としていると強調し、「人民は平和に勝利している」と述べ、対外的な圧力に対抗する姿勢を示しました。
国連安保理で米国を批判するベネズエラ
演習開始の前日金曜日、ベネズエラのサムエル・モンカダ国連大使は、ベネズエラ側の要請で開かれた国連安全保障理事会の緊急会合で演説し、米国がベネズエラおよび地域全体の平和を脅かしていると非難しました。
モンカダ大使は、米軍の行動について「これは単発の出来事ではなく、わが国と地域全体の平和と安全に対する拡大する脅威を示している」と述べ、ベネズエラ沿岸からわずか数マイルの海域での米軍の兵力増強により、差し迫った武力攻撃への懸念が高まっていると警告しました。
さらに大使は、米国がベネズエラ国内外の人々を「証拠もなく脅威と決めつけている」と批判。最近、米軍がカリブ海で4隻のボートを攻撃し、21人の民間人が死亡したと主張しました。これらの船舶や乗員について、米側は身元や犯罪との関係を示す証拠を提示していないとしています。
モンカダ氏は「紛争は存在しない。米国が、麻薬取引対策という虚偽の口実のもとで紛争を作り出している」と述べ、真の目的は国際法に反して天然資源を支配することだと訴えました。その一方で、対話の必要性も強調しつつ、国際法に基づく自衛権の行使を辞さない姿勢を示しました。
米国、ラテンアメリカでの軍事作戦を強化
一方、米国防総省は金曜日、新たな麻薬対策の統合任務部隊を設置し、ラテンアメリカでの作戦を統括すると発表しました。これはすでに強まっている軍事的取り組みをさらに強化する動きであり、その法的正当性には早くも疑問の声が上がっています。
ピート・ヘグセット米国防長官は、この任務部隊の使命について「カルテルを壊滅させ、毒物の流入を止め、米国を守ることだ」と説明し、「米国の海岸に向けて麻薬を流そうとするなら、われわれはそれを完全に止める」という強いメッセージを打ち出しました。
ラテンアメリカでの作戦を担当する米南方軍によると、新たな任務部隊はノースカロライナ州キャンプ・ルジューンを拠点とする海兵隊第2海兵遠征軍(II MEF)が指揮を執り、西半球全域での麻薬対策作戦を調整・強化する役割を担います。
ただし、この任務部隊によって米軍にどこまで新たな権限が与えられるのかは明らかになっていません。ドナルド・トランプ米大統領は、ベネズエラ国内の麻薬取引拠点とされる場所への攻撃を検討しているとされ、その動きとの関係が注目されています。
任務部隊を率いるカルバート・ワース海兵隊中将は、作戦の主眼は海上にあると説明し、「海上パトロール、航空監視、精密な拿捕や阻止措置、情報共有を組み合わせることで、違法な流通に対抗し、法の支配を維持し、最終的には米国内の脆弱なコミュニティを守る」と述べました。
米軍のボート攻撃をめぐる法的疑問
カリブ海でのボートに対する米軍の攻撃は、野党・民主党の議員や法学者たちの間で懸念を呼び起こしています。大統領がどこまで単独で武力行使を命じることができるのか、その限界が問われているためです。
米政権は、標的となった船舶や乗員に関する具体的な証拠、使用された兵器の種類、押収されたとされる麻薬の量などを詳しく明らかにしていません。この点が透明性の欠如として批判されています。
一部の元軍法務官は、拘束ではなく致死的な武力行使に踏み切ったトランプ政権の法的根拠は、戦時国際法の要件を満たしていないと指摘します。本来であれば警告射撃などの非致死的手段を優先すべきだという見解です。
また、本来は米国沿岸警備隊が中心となるはずの海上法執行任務を、なぜ軍が担っているのかという点も疑問視されています。
国防総省は先週、トランプ大統領が「非国際的な武力紛争」の状態に米国があると判断したと議会に通知しました。この通知は、カリブ海での軍事力行使に対する政権側の法的説明を示すものとされています。
何が争点なのか:主権、治安、国際法
今回の動きは、単なる麻薬対策や軍事演習のニュースにとどまらず、いくつかの重要な論点を浮かび上がらせています。
- 国家主権と安全保障:ベネズエラ側は、米軍の海上展開を「差し迫った攻撃」と受け止め、自衛権行使を示唆しています。一方で、米国は自国の安全と麻薬対策を理由に軍事行動を正当化しています。
- 麻薬対策の名目と実際の目的:ベネズエラは、米国が麻薬対策を「口実」にしており、真の目的は天然資源支配だと主張しています。米国側はこれに反論し、カルテル壊滅を強調しています。
- 国際法と武力行使の限界:非国際的な武力紛争という位置づけが、どこまで海外での武力行使を正当化しうるのか。議会や国際社会によるチェックが機能するのかが問われています。
今後の注目ポイント
ラテンアメリカと米国の関係は、日本から見ると地理的には遠いものの、国際秩序やエネルギー市場、国連の動きなどを通じて間接的な影響を持ちうるテーマです。今後は次のような点が焦点になりそうです。
- 国連安全保障理事会が、ベネズエラの訴えにどう対応するのか
- 米政権がボート攻撃の証拠や法的根拠を、どこまで公開・説明するのか
- カリブ海やベネズエラ沖で、米軍とベネズエラ軍の緊張がさらに高まるのか、それとも対話の糸口が見いだされるのか
- 周辺の中南米諸国が、どのような立場をとり、地域秩序にどう影響するのか
スマートフォン一つで世界各地の動きを追える今、遠い地域の緊張も、エネルギー価格や国際政治の変化を通じて私たちの日常とつながっています。ベネズエラと米国の動きは、今後もしばらく注視が必要な国際ニュースと言えそうです。
Reference(s):
Venezuela launches drill amid U.S. military buildup in Latin America
cgtn.com








