ガザ停戦とシャルム・エル・シェイク会議 米国主導の和平はなぜ脆いのか
エジプトのリゾート地シャルム・エル・シェイクで開かれた和平サミットは、ガザ停戦をめぐる米国主導の外交成果をアピールする場でありつつ、その停戦の脆さも浮き彫りにしました。2年以上続いたイスラエルとハマスの武力衝突がようやく一時停止した今、この停戦はどこまで持続可能なのでしょうか。
シャルム・エル・シェイク会議で何が起きたか
今回の和平サミットの主な目的は、ガザでの停戦実現に向けた米国や関係国の役割を示すとともに、イスラエル・パレスチナ和平に向けた国際的な信頼を立て直すことでした。会議には米国や欧州、中東諸国が参加し、ガザ停戦の維持と今後の政治・経済の枠組みについて意見調整が図られました。
2年以上続いた戦闘を止めた「第1段階の停戦」
2023年10月に始まったイスラエルとハマスの激しい武力衝突は、今年まで2年以上続きました。その中で合意されたのが、今回の第1段階の停戦です。その内容は次のようなものです。
- ハマスは拘束していたイスラエル人を解放し、死亡した捕虜の遺体を返還する。
- イスラエルは数百人規模のパレスチナ人収監者を釈放する。
- イスラエル軍はガザの一部地域から撤退し、軍事作戦を停止する。
- ガザとの境界にある検問所5カ所を再開し、大量の人道支援物資の流入を認める。
この第1段階の停戦は、双方の核心的な要求の一部を満たし、2年以上続いた暴力的な対立にひとまず終止符を打つものとなりました。
米国が得た「外交成果」とその狙い
今回の停戦とシャルム・エル・シェイク会議は、米国、とりわけトランプ政権にとって重要な外交的節目となりました。国際ニュースとしても、米国の中東関与が改めて前面に出た形です。
トランプ政権にとって初の本格停戦仲介
トランプ米大統領は就任前から、イスラエルとハマスの停戦やロシアとウクライナの和平を迅速に実現できると繰り返し主張してきました。しかし、今年の就任以降、これらの紛争に対する仲介は目に見える成果が乏しい状況が続いていました。
その中で今回のイスラエル・ハマス停戦は、トランプ政権にとって初めて本格的に成功した国際的停戦合意となりました。サミットそのものも、この外交的成功を「見える化」する舞台として演出された側面があります。
揺らいだ中東との関係の立て直し
2023年10月のイスラエル・ハマス衝突の勃発後、米国の長年にわたるイスラエル寄りの姿勢は、特にアラブ諸国との間で深い溝を生んできました。今年9月のイスラエルによるカタール攻撃は、米国と湾岸諸国の関係にこれまでにない緊張をもたらしました。
シャルム・エル・シェイク会議は、米国がアラブ諸国、とりわけ湾岸諸国との関係を修復し、エネルギー、テクノロジー、金融、地域安全保障といった分野での協力を維持するうえで重要な機会となりました。
それでもガザ停戦が「脆い」ままである理由
一方で、今回の停戦は多くの課題を抱えたままです。表面的には戦闘が止まっても、その土台となる政治・社会の条件が整っていなければ、停戦は容易に崩れかねません。
当事者不在の和平サミット
サミットにはパレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長が招かれたものの、イスラエルのネタニヤフ首相は最終的に参加を見送り、ハマスも招かれませんでした。その結果、紛争の直接の当事者であるイスラエルとハマスの政治・軍事判断に、サミットが直接影響を与える構造にはなっていません。
イスラエルとハマスの根深い敵対関係は解消されておらず、停戦はあくまで一時的な「力の小休止」にとどまっているとも言えます。
ガザ統治の「次の段階」が見えない
ガザの今後の政治体制をどう設計するかは、停戦の持続可能性を左右する核心的な論点です。米国主導の構想は、ハマスの武装解除と組織解体を明確に求めていますが、ハマス側はこれを強く拒否しています。
一方で、パレスチナ自治政府や国際社会も、短期的にガザを安定して統治できる信頼ある行政メカニズムを構築できる状況にはありません。このため、第2段階の停戦や新たな政治枠組みづくりに向けた交渉は、スピード感を持って進むとは考えにくいのが現状です。
人道支援と経済再建の長い道のり
停戦発効後、ガザには周辺地域でこの2年間に蓄積されてきた大量の人道支援物資が搬入されています。しかし、ガザの経済は深刻な打撃を受け、社会秩序の悪化も進んでいます。200万人を超える住民に対して、国際社会は長期的な支援を提供し続ける必要があります。
問題は、その規模と期間です。時間の経過とともに支援国の政治的関心や財政的余力が低下すれば、大規模支援を持続することも、ガザの本格的な経済復興を賄うことも難しくなります。そうなれば、ガザは経済的・社会的な不安定が常態化するリスクを抱え続けることになります。
「和平」への道はどこまで見えているのか
シャルム・エル・シェイク会議は、米国が中東、とくにイスラエル・パレスチナ問題への関与を強めていることを象徴する場となりました。しかし、現在のイスラエルとハマスの対話を、そのまま「真の和平」と同一視することはできません。戦闘再発のリスクは依然として高く、ガザの安全保障、政治秩序、経済、社会再建のすべてが大きな試練に直面しています。
国際社会、とりわけ停戦仲介に関わった各国は、外交的成果を誇示するだけでなく、現地の現実に即した現実的で持続可能な戦略を練り続ける必要があります。そのうえで、パレスチナ問題の最終的な解決をめざす二国家解決案の枠組みの中で、公正で永続的かつ包括的な和平をどう実現していくのかが問われています。
ガザの停戦は、終わりではなく長いプロセスの入り口にすぎません。今後の合意形成やガザ再建の行方を継続的に追うことは、日本を含む国際社会の対外認識をアップデートし、自らの立ち位置を考え直すうえでも重要になっていきそうです。
Reference(s):
cgtn.com








